生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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最後のキス

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sideライアス


しばらく歩き、途中でキスして、また歩いて…



そんなことをしていたらすぐに目的地についた。



「ライアス…ここって…」



そう、ここは最も不吉な森。



お前の墓場だよ。



「どうしたの?いつも来ているから怖くないでしょ?」



そんなのは真っ赤な嘘だけど。



「うん…」



僕は嘘を並べて不気味な森にリラの体を誘う。



ようやく自由になれるよ。



僕がちゃんと解放するからね。



「ライアス…今日は、やめない?」



途端に焦り出す魔女。



そうか、ここが嫌いなんだ。



「今更逃げるなんてなしだよ。」



逃すものか。



「ほら、おいでよ。楽しませてあげる。」



少し抵抗し始めたから、僕はリラを担いで一気にあの木の老人の元へ向かった。



その場へリラを下ろすと、面白いくらいリラは真っ青になった。




「っ………ロレンジア…。」



へぇ、彼ってそんな名前だったんだ。



「約束通り連れてきたよ。リラの呪いを解いて、この魔女も葬ってくれない?」



僕がそう言うとロレンジアはリラに木の枝を伸ばし拘束した。



「おのれ!!!!醜い怪物が!!私に触れるな!!」



リラの顔が鬼の形相となる。


「死に損ないの分際で!!」


大暴れしているようだけど、ロレンジアには通用していない。



それもそうだろうね。


僕ですらその力には抵抗できなかった。


リラの体じゃ到底無理だ。



「くそっ…!!!ライアス!!!この男に火をつけろ!!このまま何もしないのであればこの小娘を殺してやる!!」 



そんなこと出来ないのは知ってるよ。


嘘なんかついちゃって。


可哀想に。



「ロレンジア、頼んだよ。」



僕が聞き耳を持たないと…



「離せ!!!穢らわしい!!!!!!」



癇癪を出してしまった。


リラのあんな顔、初めて見るな。


これはこれで新鮮。


「っ!!!!」


急に、リラの体から力が抜けた。


ガクッと頭は下がり、気を失ってしまう。



再び頭を上げたリラは…



「な……何?」



僕の愛したリラだった。



「呪いは解けたんだね。」

「違う、あの魔女は小娘の魂の奥へと逃げた。面倒なことを…」



僕のぬか喜びか。




「ライアス、これ何!なんなの!」


リラは恐怖に泣き出しそうだった。



「リラ…」


抱きしめたい。



「リラを離して。お別れくらいさせてくれる?僕にとってはこれが最後だから。」



ロレンジアに言うと、素直にリラの拘束を解いてくれた。



「何?最後?お別れ?なんのことなの?それにこの状況は何?」



取り乱すリラを強く抱きしめた。



「リラ、よく聞いて。リラは今、あの魔女に憑依されている。あの魔女とリラを引き剥がすためにここに連れてきた。僕は今日ここで死んでしまうから、お別れを言わせて。」



*******************

sideリラ


理解ができなかった。


この状況の全てが。



「何で…ライアスが死ぬの?私が憑依されてる?」



そんな記憶はない。


そもそも、ここ最近の記憶が曖昧だ。



「リラ、落ち着いて聞いてくれる?」



この状況が何も飲み込めないのに、ライアスの別れの言葉は続く。



「いや…嫌だよ…そんなの。」



ライアスが死ぬとか、憑依されてるとか…



全部全部嫌だ。



「死んじゃダメ…ライアスは死んじゃダメだよ…、考え直して?私も一緒に考えるから…。」


「リラは優しいね。でも、僕はもう決めたから。」


涙が出た。



ライアスが本気で言っていると分かったからだ。



「これでいいんだよ。」

「よくないよ!!死ぬんだよ?死んじゃうんだよ!?」



私はライアスを引き剥がして肩を掴んだ。



「しっかりしてよ!ライアス!!どうしてそんなこと言うの!?ねぇ!!」



混乱する私の頬を撫でるライアス。


ライアスは困ったように笑っていた。


「困ったなぁ。僕ってどんな状況でもリラを愛してやまないみたい。…そうやって怒っているリラも大好き。」


「ライ」



強制的に塞がれる唇が熱を持つ。


「愛してるよ、リラ。」

「ライアス…」



泣く私を気にも留めず、木の枝がライアスに絡みつく。



「ライアス…」

「リラ、離れて。危ないよ。」



枝はライアスの体を簡単に拘束した。



「やだ!!!やめて!!!ライアスを離して!!!」


何度も枝を引き剥がしても次から次へとライアスに絡みつく。


「リラ…」
「ライアスは絶対に渡さない!!!死ぬなんて私が絶対に許さないから!!!」



必死に悪足掻きをする私を嘲笑うかのように枝はどんどん増えて行く。



太刀打ちできない不思議な力に泣いていると…



「そこまでだ。」



いきなりルシアスが現れた。


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