生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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不意打ちのキス

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sideライアス


夜の9時、獣たちが動き出す時間。


リラは来てくれるだろうか。


僕は約束の場所でリラを待つ。



これが本物のリラだったらどれだけよかっただろう。



それだけが心残りかな。



この時間なら部屋にルシアスもいる。


どうやって切り抜けて来るだろう。



「ライアス…。」



辿々しい声が聞こえた。


本当に来るとは。


今日はついてる。



「リラ。」


僕がリラの頬を撫でると、リラははにかんだ。


恐ろしいことに、本物にどんどん近づいて来ているよ。


容量のいい女だね。



「行こう。」


僕が手を差し出すと、リラはその手をそっと取る。



これが最後のデートだ。



最後の最後くらいは本物に会いたい。


でもダメかな。



きっと、本物になってしまったらリラは僕を止めるだろうから。


そんなことされたら僕だって苦しくなる。



好きな子と手を繋いで夜道を歩く、それだけでいいんじゃないかな。



あれもこれも欲しいと言えばキリがない。


今はこの小さな幸せを噛み締めよう。



********************

sideタランテラ


どこへ連れて行く気?


まさか2人だけの隠れ家でもあったの?


この小娘も大したものね。


純粋そうな顔をして、ライアスと寝ているなんて。



ルシアスが知ったらどうなるかしら…



ルシアスはこの小娘をこよなく愛しているから、うっかりライアスを殺すかもしれない。



それ、最高じゃないの。


今夜きっとライアスは私を抱く。


今まではそれを必死に隠していたみたいだけど、わざとボロを出せばいい。


ルシアスにはダリアと会うと言ってあるから、明日何かの会話でライアスの話をしてルシアスを怒らせましょうか。



あぁ、楽しみで仕方ない。


女の取り合いほど醜く面白い茶番はないわ。



「リラ、どうして何も話さないの?緊張してる?」


「うん、少しだけ…」



当たり障りのない答えでいい。


少しでも正体を嗅ぎつけられたら面倒だわ。


「リラはやっぱり純粋で可愛いよね。」


2人の男と寝てる女が純粋?

どうかしているんじゃないの?



「やだ…もう…そんなこと言わないで。」



兄弟揃って救いようのない馬鹿ね。



まぁ、そのほうが都合がいいわ。


これは、言わば禁断の関係。 



この小娘もきっとそれに酔っていた。


弟の妻に手を出したろくでなし、遊びじゃなくて本気の恋。


そんな愚かな男を燃え上がらせるのは難しい事じゃない。



「ねぇ、ライアス。」


いつまで手を繋いで、夜道を歩くの?



こんな子供じみたことしたくないでしょ?




ライアスの首に手を伸ばし、グッと引き寄せる。


無防備な唇にキスをすれば…


「ンッ!!!」


ライアスが私を抱き上げ、近くの木に押し付けた。


無理矢理こじ開けられた足と、力強く私を抱く腕。


この男がどれほど溺れているのかよく分かる。


「リラ…嘘でいいから僕を好きだと言って?」 
 

与えるだけ与えればいい、そんな安い言葉。



「好き、好きよ、もちろん。愛してるわ、ライアス。」


ライアスの腰に足を巻きつけ、耳元で囁いた。



これで完璧。


きっとこの男はから抜け出せない。



*********************

sideライアス

「行こう、この奥だよ。」


いきなりキスしてきたから僕も対応に困ったよ。


馬鹿なふりしないとついてきてくれなさそうだからね。


それにしても心臓に悪い。


「うん…。」


でも、冥土の土産にはちょうどいいね。



僕は自分の死へ向かって歩き始めた。



覚悟していてよ、邪悪なタランテラ。



お前に引導を渡すのにもう時間はかからないよ。
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