生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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死の約束

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sideタランテラ


今日も順調、誰も私の正体に気づかない。



後はこの体で小娘が人間に戻れる方法を探すだけ。



そして禁断の果実の血を使い、私の体を完全に復活させる。



本物の体を早く取り戻したい。



あの体さえ復活すれば私の思うがまま。


ヴァンパイアの根絶やしを完全に達成できる。


そのためには、この王族たちの特権を存分に使うこと。


ライアスとルシアスを利用して情報を集めればいい。


きっと、目を潤ませ人間に戻りたいと言えばあの男たちは最も簡単に言うことを聞くはず。



その間にこの兄弟の仲を引き裂けばいいわ。



あの2人がこの小娘を取り合っていてよかった。



私がわざわざ手を下さなくても、殺し合うように仕向ければいいのだから。



愛ほど絆を掻き乱すものはない。



どんな強靭な男でも、屈強な男でも、愛なんて幻想に支配されてしまえば赤子も同じ。



嫉妬を煽り、愛を壊す。


簡単な話よ。



私は十分すぎるほどその痛みを味わった。


父がしたことを息子に返してあげるだけ。


「ふふ…」


まずはどちらから狂わせようかしら。



********************

sideライアス

「ライアス!」

僕を呼び止める愛しい声。


その声に振り返ると、リラが目の前に現れた。


「リラ、どうしたの?」


今日はどっち?


僕の愛したリラ?


それとも、僕が殺したい魔女?


「別に?ライアスがいたから声をかけたの。」



分からない。


けど、僕の愛した人であってほしい。



「リラにそう言われると嬉しい。」



僕が頬を撫でるとリラは僕の掌に首を傾け、僕の手を包む。


「ライアスはいつも優しいね、ルシアスもそうならいいのに。」



この言葉が決定打だった。


これはリラじゃない。



リラは決して僕にルシアスの悪口を言わない。


それがどんな些細なことでも。



「ルシアスは優しくないの?」


僕の問いにリラは困ったように笑う。


「ライアスと比べたらね。」



そう、そこだよ。



リラは僕とルシアスを比べたりしない。



優しいとか、優しくないとか、そんなことは特にね。


この魔女は僕に何をしに来たんだろう。


少し探りを入れようか。


「リラ、愛してるよ。」



リラが嫌いなこの言葉。


僕に言われると泣き出してしまうほど嫌ってるこの言葉を聞いてどうする?



「ライアス…」


リラは周りを確認した。


「ルシアスと別れて?僕と一緒に生きよう?」


ほら、僕はここまで言ったよ。


本物なら泣いてみろ。



「そ…そんな、ダメだよ!ライアス…。」



戸惑ったフリが上手だ。



うますぎて怖い。



「どうして?あの日、僕と寝たくせに。」


これは僕だけが知る秘密。


リラは知らない。


これは僕が今までに犯した罪の中で一番重い。


そしてその事実は…



「そ…それは…違うの、あの時は…その…。」



僕しか知らないことだ。


そんな事実をリラが受け入れられないのは分かってた。



だから記憶を完全に消し去った。



それなのに、よくもぬけぬけと。



「あの時は…僕がいけなかったんだよね?僕がリラに強引に迫ったから。でも、今夜は違うよ。リラの意思できて欲しい。」



まぁいいよ、どうせ今日の夜までの命だ。



僕も、目の前にいる魔女も。



今夜ケリをつける。


この魔女はきっと僕とルシアスに潰し合いをさせるだろう。


リラを使ってわざわざ僕に媚を売りに来たのがその証だ。



「ルシアスには内緒で、今夜9時お城の裏においで。」



今夜死ぬと言うのに全くと言っていいほど怖くない。



どうしてか、そんな事は考えなくてもわかる。



愛しいリラのために死ねるからだ。



こんな僕がリラのために死ねる日が来るなんて。


怖いどころか嬉しくて仕方ない。


これはきっと、ルシアスにもできない事だ。



僕だけが至高の愛をリラに誓える。



今夜が楽しみだな。
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