生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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代償

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sideライアス


もう少しで、リラに触れられる。


僕にとってはこの上なく幸せな事。


だけど、幸せを目の前に現実が残酷にも迫ってくる。


渾身の力で壁を殴っていたけど…


「ライアス…手が……」


リラが怯えたように僕に伝える。


「これは…」


僕の左手が透けてきた。


それを見て、タランテラが嬉しそうに笑う。



「お前、体に戻れば地獄を見るわ、全身の鋭い痛みに耐えられるかしら…それとも、もう元の体ではまともに生きられないかもしれないわね?」


「戻って!ライアス!!今すぐここから出て行って!!」



リラが泣きながら僕に叫んだ。



「リラを助けるまで僕は」
「私から出て行って!!!」



リラの声が僕の鼓膜をつんざいた。


怯んで目を閉じて、次に開けた時は…



「っ!!!!」



僕は元の体に戻っていた。



「っ!!ゲホッ!ゲホッ……ひゅっ…ひゅっ…」



そして、地獄を見た。



*******************

sideルシアス



ライアスは戻ってきたが…


「おい、大丈夫か?」
「ひゅっ…ひゅっ……」



うまく息ができてない。


このままじゃ窒息する。


「ルーカス、ルディ、リラのことしっかり見てろ!」


「わかった。」
「了解!!!!」



俺はすぐにリラから手を離しライアスを横にした。


「おい、ライアス!しっかりしろ!ほら!しっかり呼吸しろ!」



こんな事、最初で最後だろうな。


ライアスの介抱なんて。



「ライアス!どこがどうなってる、ちゃんと」
「ゲホッ!!!」



ライアスの口から大量に血が出てきた。



「おいおい…」



顔真っ青じゃねぇかよ。



臓器を痛めてるな。



「ほら、息しろ。」


ライアスの背をさすりながら声をかける。



「っ……これは……なかなかキツいね…。」



ライアスが弱音を吐くなんて。



「そうみたいだな。」



体から一瞬でも精神が離れるとこうなるのか。



5分程度でこのザマなら、あの女は一体どうなる。


「とりあえず死ぬな。」


ライアスは青い顔をして笑った。


「随分と……優しいね。」


「リラのためだ。」



キッパリというと、やっぱりライアスは真っ青な顔で笑った。



********************

sideリラ


不安が拭いきれない。



「ライアス…」



私の幻覚だったのかと思えるほど、ライアスの姿はパッと消えてしまった。


だけど、幻覚じゃないとわかってる。



「あっはははは!!!!あのヴァンパイア、きっと命はない!!今頃のたうち回って死んでいるわ!!
小娘!お前が殺したもの同然よ!」



タランテラは嬉しそうに笑った。



「お前が!あの男を殺したんだ!!」



不安になってきた。



ライアスはどうなったんだろう。



本当に苦しんでいるのならそばに行きたい…



「ライアス…」



どうしてそうまでして来てくれたの…



どうしてそこまでできるのよ…。




泣く私を見てタランテラはもっと高笑いした。



ねぇ、ライアス。


どうか、どうか、無事でいて。




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