生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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浮遊魔法

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sideルシアス   


「希望に満ちている所悪いが、あのイカれた魔女が自分の体にあっさり戻るとは限らない。
現に今はリラに取り憑いているんだからな。」


ここまできてあっさり逃げられました、そんな事には絶対したくない。


「でもさ、でもさ、あの本体に戻しさえすればもう俺らの勝ちじゃん!戻そうぜ!」


「戻そうぜって…あのな、戻ってくれって言って大人しく戻る女じゃないだろ?」


そんな素直な奴なら最初からここまで手こずっていない。



「それもそうかぁ、性格超絶最悪だもんなぁ……。」



ルディが落ち込む中、ルーカスが何か閃いたらしく目を見開いた。



「本体……本体に危害を加えたらどうなる?」



あの魔女の本体にってことか?



「危害って?殴ったり蹴ったりって事?」



ルディが聞き返すとルーカスは頷いた。


「うん。さっき、リラは精神から攻撃されてそれが体に出たけど逆はどうなる?
体を傷つけた場合、タランテラはリラの精神の中で同じような状況になるんじゃ…」


筋は通るな。


「そこの木、どうなんだ?」


突っ立ってる木に聞けば…



「さぁ、私はそんな事をやった事がない。筋は通っているからやってみる価値はあるが……」


「あるが何だ?」



勿体ぶらずに言えよ。



「あの女のことだ。本体に何の仕掛けもないとは言い切れない。
あの女の肌に触れるのならば十分に気をつける事だ。」



安易にあの女の体に触るなってことか。



「もっと早く言えよ!クロウさん達があの女の対処してんのに!」



ルディが焦ったように言った。



「喧しい、騒ぐな小僧。あの魔法使いも馬鹿ではない。迂闊には触らんだろう。」



心配ではあるが……



「ルディ、その木の言う通りだ。ダリアとラルフだけならまだしも、あの場にはキジャとルルドもいる。
迂闊に触るような奴はいないし、そこにクロウがいるならほぼ大丈夫だ。
俺らはとりあえず、あの女を本体に戻すことだけ考えるぞ。」


俺の説得にルディが不安そうに頷いた。



*******************

sideクロウ


「これはこれは……」


見れば見るほどゾッとするな。


300年前の女の抜け殻が大きな水球の中に保存されている。



「クロウさん…どうしますか?これ。」



ダリアが不安そうに聞いてきた。


「そうだな……。とりあえず、コレに触ってないだろうな?全員。」




ダリア、ラルフ、キジャ、ルルド、全員首を横に振った。



「触らないでしょ、こんな不気味なもの。」


キジャがバッサリ切り捨てた。



「お前達がとんでもない馬鹿じゃなくて安心だ。
何にしてもコレに迂闊に触らないこと。
この魔女は只者じゃない。」



おかしな毒や呪いでもかけてあったら厄介だ。



「でもここに置きっぱなしにするのか?」


ルルドは俺に聞いた。


「それもどうかと思う。だから、一度広い所に出そう。俺が浮遊魔法を使って出すからお前達はコレに接触しないように、先に上に出ていてくれ。」



こんな薄暗くて狭い所じゃわかるものもわからない、とりあえず明るいところへ出すか。



「了解。皆さん行きますよ~。」



キジャはすぐに了承して全員を図書室の方へ誘導した。




「さて………」



浮遊魔法をかけて何も起こらなければいいが…。




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