生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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留めどない愛

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sideライアス

リラの精神に入ることができた。


僕ってこんなこと出来たんだね…。


「ライアス!」


リラは僕の方へ走ってきた。


「リラ!」


大怪我している。


顔中血まみれで可哀想に。



僕がそばに行こうと駆け寄ると…



「っ!!」



ガラスのような壁でそれを阻まれた。



「ライアス!!」


リラも僕と同じ壁に阻まれる。


「リラ!」



何度その透明の壁を叩いても壁はびくともしない。



「ライアス!助けて!!」



リラは壁を叩きながら僕に助けを求めた。


必死に壁を殴っているリラの手から血が出ている。


「リラ!僕がどうにかするからまずは…」


僕は言葉を呑む。


リラの真後ろに、あの魔女がふらりと現れた。


「リラ!!!」
「きゃっ!!!」


リラは髪を引っ張られて、透明な壁に押しつけられる。


そして…


ドン!!ドン!!


「やめろ!!リラを離せ!!!」



あの魔女はリラの頭を何度も壁に叩きつけた。


ドン!ドン!
「っ!ぎゃっ!!」


壁には血が伝い、リラの痛々しい声が響いた。



「やめろ!!!」



ここでは僕の炎の能力も使えない。


「リラを離せ!!」


喚く僕を見てタランテラが笑う。


赤い髪をした恐ろしい女だった。



「あぁ…その顔、カルロスにそっくりだわ。私を裏切って他の女に走ったあの男の顔に。
カルロスのベッドで寝ていた女を殺した時は本当に愉快だった。
でもおかしいわね?
この小娘はお前のものじゃない、なのになぜそんな顔をするの?」


変に刺激できない。


リラに何をされるか分からないから。



「見捨てなさい、こんな小娘。お前が今、この小娘を助けたとしてどうなる?
目が覚めれば、この小娘は女の顔してお前の弟にキスをする。
決して、この赤い唇が…」

「っ!!」


魔女はリラの顎を後ろから掴み上げた。


「触るな!!」

「お前のものになる事はない。無償の愛など馬鹿馬鹿しい。どうせ自分のものにならないのなら死んだって変わりはない、そうでしょう?」



この魔女は全てが歪んでいる。



「それから、早く出て行ったほうがいい。にいればいる程、お前の体力は削がれ最悪死に至る。
自分を愛してくれない女のために死ぬなんて、そんな滑稽な事はない。」



魔女は僕を見て嘲笑した。


「それとも、こんな性悪のために死ねるのかい?」


性悪?リラが?



何言ってるんだろう。



「二人の男を誑かし、挙句弄ぶ。お前の命など、この小娘にとっては手駒でしかない。」



手駒?



「なぜこの小娘がお前を完全に拒絶しないかわかるか?」



タランテラは僕を見てまた嘲笑う。



「お前には男としての価値はないが、盾の価値はある。自分を守るための盾としか思っていないのよ、この小娘は。」



リラは僕の目を見て泣いている。



きっと僕が傷ついていると思ってるんだろうね。


リラは本当に優しいから。



「何を言われようと、僕の気持ちは変わらないよ。それにね、僕から言わせてみれば……!」



壁を怒りに任せて殴った。



すると少しだけヒビが入る。


このまま割れる。



そうすれば、ようやく僕は好きな子を抱きしめられるんだ。




「無駄死にでも犬死にでも構わない。リラさえ生きていればそれでいい。」
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