生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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一筋の希望

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sideリラ


ーリラ、落ち着いて。相手の髪を引っ張って、顔面に膝蹴りを入れて。ー



これは間違いなく私の妄想じゃない。



ライアスの声がはっきりと聞こえる。



まるで隣にいるみたい。



さっき、ルディに話しかけられたときはどこか違う部屋から話しかけられているような感じだったのに。


不思議な感覚だ。




ーリラ、絶対に切り抜けられるから。やってみて?ー



今はライアスの言う事を聞こう。


私だけじゃどうにもならない。



「っ!!!」
「この!!」


空いた手で言われた通り髪を引っ張ると、魔女は怯んだ。


私はその隙を見逃さず、ライアスに言われた通り強烈な膝蹴りを顔面にお見舞いする。



「っ!!!」


魔女は吹っ飛び、私は晴れて自由の身に。


「ゲホッ、ゲホッ!」



血の味がした。


それくらい強く首を絞められていたんだ。



「ライアス!!」


私は必死に叫んだ。


今はライアスに縋るしかない。



「助けて!!!」



***********************

sideライアス


リラに言葉は届き、そして助けを求められた。


助けに行くに決まってるよ。


どこにいてもね。


例えそれが…



「ライアス……」


リラの精神の中だとしても。



********************

sideルシアス

「おお、おい!ライアス大丈夫か!!?」


ルディはいきなりぶっ倒れたライアスに駆け寄った。


「小僧、騒ぐな。小娘の精神に入り込んだだけのこと。気が済めば出てくる。」


木は冷静に言った。


「知ってたのか、こんなことできるって。」


ルーカスは俺に聞く。


「知らん。もちろん、アイツ自身知らなかったと思うぞ。」



本当に何でもやるんだな、リラのためなら。


リラのために死のうとしていただけある。



「だが…自分の体を手放し違う相手の精神に入り込むことは容易ではない。まさか、魔女や魔法使い以外でやってのける者がいるとは……。
代償は高くつくぞ。」



「代償?」



俺は聞き返した。


嫌な言葉だ。



「もちろん、何にでも代償は伴う。他人の精神に入り込んで死んだ者は見たことないが、それはただ私が見たことがないだけかもしれん。
ましてや、魔女でもなければ魔法使いでもない。
命の保証はできん。」



木は随分と楽しそうだ。


「本当にいい性格してやがる。」


ライアスが死んだらリラは立ち直れない。


それが自分を助けるためと知れば尚のこと。



「お前はライアスに死んで欲しいんだったな。でも、俺が殺させない。
もちろん、お前のためでも俺のためでもライアスのためでもない、リラのためだ。」



リラが助かったとしても、ライアスの死を嘆いて心から笑えなくなってしまったら意味がない。



「おいおい、待てよ。」


ルディが話に割って入った。



「て事はさ、あのイカれ魔女を本体に戻したら、アイツも弱りきってるってことか?」



ルディはたまに、本当にたまにいい事を言う。



「そしたら、倒せるんじゃないか?めちゃくちゃ簡単にさ。」



ルディは希望に満ちた表情をしていた。
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