生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
444 / 471

冷たい手

しおりを挟む
sideリラ


怖い夢をずっと見ていた気分。


そして、これは何だろう。


この、私の関節にぐるぐるまきにされたロープは…


「リラ!大丈夫か?どっか痛くない??具合悪くない??」



ルディが嬉しそうに私に聞いてきた。


私はゆっくり起き上がってルディに笑顔を見せる。



「うん、私は大丈夫。ありがとう、ルディ。」


私がお礼を言うとルディは嬉しそうに笑って私に巻かれたロープを解いてくれた。


「いいって!それより今、ダリアが怪力であの魔女ぶっ飛ばしたとこ!」


ルディが指さす水晶には、縛り上げられ白目を剥いた魔女がいる。


私から完全に出て行ったんだ…。


嬉しくて飛び上がりそう。



「っ…ゲホッ…!!」
「っ!!」



ライアスの血の匂いがした。



「ライアス!!!」


どうして今まで気づかなかったんだろう。


ライアスが青い顔で横たわり血を吐いている。


「ライアス!大丈夫!?」


焦って立ち上がったから…


「きゃっ!」


私はずっこけた。


「リラ…」


そんな私を心配そうに見つめるライアス。


「ライアス!」


すぐに起き上がってライアスの近くへ行った。



「リラ…血が出てるよ…。」
「それはライアスでしょ!」



私はすぐにライアスの背を撫でる。



「ライアス……ごめん、私のせいだね。」


あの魔女は、ライアスの命はないかもしれないと言っていた。


本当にこれじゃあ命を落としそう。



「もう二度とあんな事しないで、ライアスが苦しむところは見たくないよ。」



こんなにボロボロになるまで…。


私があの時ライアスを追い出さなかったらどうなっていただろう。



本当に…ライアスは死んでいたかもしれない。



そう思うと手の先から血の気が引く。



「僕は…ゲホッ……リラのためなら…何でもするよ。」



ライアスはまだ血を吐いてる。


「ライアス…」


ライアスは私の方へ寝返りを打つ。


そして、横になったまま私の頬へ手を伸ばしてきた。


ライアスの手は私の血の気の引いた手よりも冷たい。


私は頬に触れたライアスの手に自分の手を重ねた。



「よかった……リラが無事で…本当によかった。僕は大丈夫だからそんな顔しないで。」



私がライアスに心配をかけちゃいけない。


今、ライアスはボロボロなんだから。



「うん、ごめんね。…ライアス、本当にありがとう。ライアスがきてくれた時、本当に心強かったよ。」




私が微笑むと、ライアスは本当に嬉しそうに笑った。



*********************

sideルシアス


クロウに空間魔法を使ってもらい、リラの元へ戻った。


「ルディ、クロウたちを手伝ってきてくれ。」

「了解。」 


戻ったと同時にルディと俺が入れ替わる。



ようやくリラと話せると思っていた。



だが、入る隙がない。


リラとライアスは恋人みたいな雰囲気だ。


互いに、好きで好きで仕方がないようにすら見えてくる。



声をかけようか迷っていると、ライアスが眠りに落ちた。


ついさっきまで、眠れない程苦しんでいた。


それでもリラの前では簡単に眠れるんだな。


それは、ライアスが本気でリラを愛している証拠でもある。



「おい、そこの弟。突っ立っているなら運んでやったらどうだ。」



忘れていた。


ここにはまだ木のおっさんがいたな。



「あぁ。」


俺の返事を聞いてリラが振り返った。


「ルシアス…」


リラはホッとしたように俺に微笑む。



その笑みを見て安心した。



ようやく帰ってきた。



「もう大丈夫だ、よく頑張ったな。」


頭を撫でるとリラは太陽みたいに明るい笑顔を見せる。


俺が見たかったのはこの顔だ。


「さすがは俺の妻だ。…愛してる。」


しおりを挟む

処理中です...