魔王様、勇者を育てる。

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第一章

8.魔王様、勇者と出会う。

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街の騒ぎが拡大する中、【冒険者ギルド】と呼ばれる冒険者に仕事依頼などを行なう施設から勇者の捜索依頼が出された。


勇者と共にいるのがキラー・タイガーということで、腕の立つ冒険者をつのっている。


「勇者捜索にご協力ください」


しかし、ギルド職員がわざわざお願いしてまわっているように、キラー・タイガーに対抗できる冒険者は少なく、編成に難航している。


本来なら、時期的にこの辺一帯は平和であり、強い魔物はいないはずなのだ。


その為、ほとんどの強い冒険者達は他の街や国に出向いている。


ーー冒険者が集まらず、捜索隊を派遣できないまま刻々と時間だけが過ぎていく。


そんな時、また新しい知らせが届いた。


なんと勇者が無事王都に帰還したという。


それもキラー・タイガーから逃げ延びたのではなく、討ち取った証である素材を携えて。


その知らせは瞬く間に人々に伝わり、混乱する騒ぎから一転して、賑わうような騒ぎへと発展した。


ーー気付くとその夜、街総出で宴が開催されることになった。


もちろん、主役は勇者である。


勇者のために開催された宴だけに、勇者が姿を見せないわけにもいかず、壇上で演説を行なっている。


ボロボロだった鎧や剣は新調されていて、宴に合うようなきらびやかな姿だった。


容姿はまだ少し幼いものの、白に近い銀色の長い髪に青い瞳で、純白の鎧と剣が似合う美少女だ。


「ーーあれが今の勇者ですか」


そんな賑わいを見せている中、街の片隅で魔王まおうであるキースとその仲間達が勇者の姿を見守る。


初めて勇者を見た配下のベルがそう言葉をこぼした。


「そうだ。さすが勇者に選ばれただけあって能力は高い。
まだまだ未熟ではあるが、成長の余地はありそうだ」


キースもまた自分の目で見るのは初めてであり、改めて観察している。


キースのその瞳には魔法陣が展開されており、魔法を使用している。


魔眼まがん』と呼ばれるその魔法は、見たものの魔力量、身体能力、潜在能力など全てを確認することができる。


故にキースの発言は、勇者の能力を実際に見てのものだった。


「でも・・・一人でキラー・タイガーを倒すのは・・・まだ無理・・・」


使い魔つかいまであるシャルもまた、五感で勇者の能力を感知しているようにそう発言した。


ーーこの宴が開催されたのには二つ理由がある。


一つは勇者が無事であったことであり、もう一つーーキラー・タイガーを討伐したことにある。


キラー・タイガーを討伐したのはキース達ーー正確にはシャル一人が行なったもの。


だがしかし、噂では勇者が一人でキラー・タイガーを討伐したことになっている。


勇者自身はそのことを否定していて、「何者かの手によって救われた」と主張している。


しかし、という噂よりも、という噂の方が話題性が強く、噂はすり替わって人々に伝わっているのだ。


誰も成しえなかったことを行なったというのがこの宴の理由でもある。

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