魔王様、勇者を育てる。

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第一章

9.魔王様、宿を借りる。

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それから暫くして宴が一段落したところでお開きとなった。


「ーーあなた達、こんなところにいたのかい!」


宴から人々が帰っていく中、昼間に立ち寄った屋台のおばさんがキース達の前を偶然通りかかった。


様子から察するに、勇者の演説を聞きにいっていたようだ。


「ご主人様・・・誰?・・・」


このおばさんと話したのはシャルを召喚する前であり、シャルには面識がなかった。


「あら!また可愛らしい子が増えているわね。
ーー私はローナ、宿屋兼串焼きの屋台を経営しているおばさんよ」


「串焼き!・・・」


その言葉がシャルの瞳をキラキラと輝かせる。


屋台のおばさんことーー【ローナ・リエ】がシャルの好物であるグリーン・ボアの串焼きを作った人だとわかったようだ。


「あら、串焼きを知っているのかい?
・・・あ、そうか!あれだけたくさん串焼きを買ったのは、この子のためだったのね。
獣人はたくさん食べるっていうし」


ローナは昼間にキースが大量に買った意味を理解したようにそう言った。


実際はあの時、シャルのような使い魔つかいまが召喚されるとは思っていなかった。


しかし結果的にその通りになったなったので、その解釈で正しいともいえるだろう。


「おいしかった・・・串焼き・・・まだある?・・・」


早速串焼きが食べたくなったようで、シャルがローナに注文しようとしている。


「・・・ごめんね、宴もあったってことで全部売り切れちゃって、もうやってないのよ。
また明日になったらお肉が入荷すると思うわ」


「むぅ・・・残念・・・」


もう屋台をやってなくて、串焼きを食べれないとわかると、シャルが落ち込んでしまった。


「・・・あ、そうだ!あなた達、今日泊まる宿は決まっているのかい?
まだ決まってないなら、うちの宿屋を利用してくれたら、串焼きはないけど美味しい食事を用意するわよ」


シャルの様子を見かねてかローナがそんな提案をしてきたのだ。


「まだ決まっていないな」


キース達は宿の手配などはしていなかった。


そもそも魔界には朝や昼、夜などといった時間の概念がいねんはなく、どんな時でも常に活動している。


人間のように体を休めるといった行動が必要ないのだ。


「串焼きよりも・・・おいしい?・・・」


「ん~、串焼きも絶品だけど、宿屋で出す料理も負けてないぐらいの美味しさだよ」


「なら、行く!・・・ご主人様・・・いい?・・・」


シャルはローナの言う宿屋の食事が気になるようで乗り気だった。


確かに休む必要がないとはいえ、ここは人間界であり、人が活動していない中で動き回っても意味がないだろう。


「じゃあ、利用させてもらうよ」


「やった!・・・」


「そうと決まれば着いといで!
案内するよ」


キースが宿屋を利用すると決めるとローナの案内の元、皆で移動することとなった。


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