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(異ファ) いずれ勇者と魔王になる二人
第4章:神殺し
しおりを挟む「あはははは! 素晴らしい! 実に見事だ、勇者ダミアン!」
静寂を破ったのは、醜悪な笑い声だった。
広間の入り口に、数多の教会騎士を連れた枢機卿が現れた。
その顔には、これまで隠してきた傲慢さと狂喜が張り付いている。
「枢機卿……? どうしてここに」
「どうしてもこうしてもない。私は『鍵』が完成する瞬間を待っていたのだよ。……聖剣が魔王の核を喰らった。これで理は完成し、我らが神はあと千年の安泰を得る!」
枢機卿が杖を振ると、ダミアンの身体が金色の光に包まれた。
「う、あ、あああぁぁぁ!!」
ダミアンが絶叫する。
聖剣を通じて、彼の魂が強引に引き抜かれようとしていた。
魂を吸い上げられ、空っぽの抜け殻――神の依代にされる。
それが、勇者の結末。
「……やめ、ろ……!」
剣を刺されたままのアインが、震える声で言った。
彼は血反吐を吐きながら、無理やり立ち上がった。
「なんだ、まだ生きていたのか魔王。だが手遅れだ。聖剣はお前の魔力を吸い尽くし、完全に神と同期した」
「……計算通りだ、と言っただろう、……馬鹿め」
「何?」
アインの眼帯が弾け飛んだ。
その奥に隠されていた左目が、どす黒い輝きを放つ。
「【全知の魔眼】――深淵に接続。究極魔法『神殺し』展開」
アインの身体から、黒いノイズのようなものが溢れ出した。
それは聖剣を通じて、吸い上げられていたダミアンの魂ではなく、吸い上げていた「神の回路」そのものへと逆流していく。
「なっ、何をしている!? 魔力を逆流させるだと!? そんなことをすれば、お前の魂は粉々に砕け散るぞ!」
「……いいんだよ。僕はもともと、死ぬ計算だった。……ダミアンを守るためなら、安いもんさ」
アインの身体が、ひび割れたガラスのように崩れ始める。
だが、彼の魔眼は、神のシステムの脆弱性を捉えて離さない。
「ダミアン……聞こえるか。……立て、馬鹿」
「アイン、お前……お前……っ!」
「泣くな。……お前の力は、誰かに捧げるためのものじゃない。……理不尽をぶっ叩くためのものだろ。……その、お前の『無茶苦茶な強さ』を信じて、僕はここまで来たんだ」
アインが、最後の手を伸ばした。
血まみれの手が、ダミアンの頬に触れる。
「……優等生の僕が、なんでここまでして、君みたいな落ちこぼれを守るか、わかるかい?」
「知るかよ……! お前はいつだって、説明が足りねぇんだよ!!」
「……馬鹿だからだよ。君は馬鹿だから、僕が守らないと、すぐ死ぬ。……でも、君は馬鹿だから。……神様だって、殴り倒せる。……僕の理論を、超えてみせろよ」
アインの魔力が、聖剣に流れた「神の呪い」を一時的に封じ込めた。
ダミアンの身体から自由が戻る。
「……おあああああああぁぁぁ!!!」
ダミアンが吼えた。
聖剣を握りしめ、自分を縛っていた金色の鎖を、自らの「意志」だけで引きちぎる。
神の支配。運命。世界の理。
そんなものを、彼の『ブレイブ・ハート』が、理屈抜きで踏み潰した。
「枢機卿……いや、その背後にいる『神』とかいう野郎! 俺のダチをボロボロにしてくれたな……! 一億回死んでも許さねぇぞ!!」
ダミアンの瞳に、真の勇者の光が宿る。
それは教会に与えられた偽りの光ではない。
友を守り、理不尽に抗う、人間としての輝きだった。
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