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9 牛の時計
しおりを挟む翌日の朝、森田家に小包が届いた。
宛名は森田彩香と書かれている。
受け取った母親は、少し不審な顔をしたが、送り主を見て、成る程、と思う。送り主は、駅で二つ向こうに新しくできたという保育園の園長になっている。早速、小包を開いて中身を見てみる。保育園の案内など、様々なパンフレットが入っている。そしてパンフレットに紛れて、包装紙で幾重にも包まれた中身を見ると、かなり大きな目覚まし時計が入っていた。
こんなに大きな目覚まし時計と思ったが、添えられている手紙を見て納得する。
<お誕生日おめでとうございます。お子様用時計で時間を見る練習にお使いください>
と書いてあった。
それにしても、それなりの品だろうと思うよりも早く、彩香が目覚まし時計を奪う。
「わーい、うしさんだ」
目覚まし時計の文字盤には、真っ白な生き物が描かれており、顔は目と耳と鼻だけが黒く、背中にも黒い斑がある。よく見ると、足元には、ひよこだろうか?
一生懸命に飛ぼうとしているようで羽をばたつかせているように見える。
「あやか、うしさん、持って行く」
と言って自室へ走っていった。
「ちょっと!」
あれだけの大きな目覚まし時計だ。たとえ中にゼンマイや電池が入っていない、ただのおもちゃのような教材用の目覚まし時計でも、それなりの値段はするであろう。
入園を強制される事はないにしても、しつこく勧誘されるのは嫌だ。
機会を見て返却したいと母親は思っていた。
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