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織風 羊

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無人駅

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 日曜日のある朝の無人の駅。
小さな女の子が一人、電車が来るまでの時間を暇そうにしてベンチに座っている。
その横には母親であろう、少し大きなカバンをベンチに置いて座っている。
身なりはきちんとしているのだが、顔には少々疲れが現れている。
そしてその横には、老婆が一人、視界が定まらぬ様子で空を見つめている。

 ふと、一陣の風に吹かれて何かが飛んできたのであろうか、小さな女の子は、それを追いかけようとする。
然し、長い時間座っていたのがいけなかったのか、少しよろめいたかと思うと、うっかりと転けてしまう。
母親は、仕方ない子ね、と言いたげに顔を顰めるが、空を彷徨っていた老婆の視線は、しっかりと転んだ少女を見つめる。

 老婆は立ち上がり、

「あらあら、怪我はないかしら?」

 と少女に近寄るが、母親はピクリとも動かない。

「バンソコウは持っていなかったかしら」

 と老婆はポケットを探るが、更に驚いたような表情を見せる。

「まぁ。私ったら、出掛けるというのにカバンを忘れたみたいだわ」

 そう言いながら、泣きそうな顔になり、少女へ手を差し出す。
そこへ、少女の母親が声を掛ける、

「大丈夫、自分の足で立ってもらうから」

 その言葉を聞いて老婆は当惑したような顔をするが、少女はしっかりと自分の足で立つ。
少女の姿を見て老婆は、

「偉いわね」

 と声を掛けると、今度は母親に視線を移す。

「あなたの教育方針に反対はないわ、そこに愛情があるなら、むしろ賛成よ」

 老婆は続ける、

「一人っ子かしら?」

「ええ、一人娘よ」

「じゃ、三人暮らし?」

「ええ、そんなところね」

「旦那さんはお仕事に行ってらっしゃるのね?」

「いいえ、別れて、今は居ないわ」

「ええ? それって・・・」

 老婆が言い終わらないうちに数時間に一本来れば良いくらいの列車が入って来た。

「大丈夫よ、気を落とさないで、きっと誰かが助けてくれるわ。私もそうやって、母一人娘一人で育てて来たんだもの」

 老婆がそう言うと、少女が一本の杖を持って来て、老婆に渡した。

「あら、良く気が効く子ね。やっぱりあなたの教育方針は間違っていなかったみたいだわ」

 老婆が言い終わると列車の扉が軋んだような音を立てて開いた。
母親は立ち上がり、荷物を持って、もう片方の手で老婆の手を取り、

「そうね、あなたも間違っていなかった。お母さん、さぁ列車に乗って」

 三人の親子を乗せた列車が誰も居なくなった駅を後にして走り出した。
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