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16話
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「で、依頼された件はどうでしたか?」
お茶を啜りながら、サエがリンに問いかける。
お客も帰った夕刻のひと時である。
「うん、そうね、なんとかならないかもしれないわね」
この小さな抜海村で、願いを叶える星からやって来た地球型エージェントスーツ・ミラノコレクション・スーパーモデルタイプ・コードネーム・リンが何のために存在しているかを知っているのはサエとほんの一部の人間達である。
「それって、統括教授では無理だって言う事ですか?」
「多分なんだけど、統括教授も分かっていて付き合っていると思うの」
「それは、願いが叶わないって言う事でしょうか?」
「それとこれとは別なの」
「?」
「願いは丸山さんの奥様からなの。丸山さんが経営を立て直したい、って願いをかけたわけじゃないの」
「そうですか」
サエはそう答える。
丸山社長の思い、丸山さんの奥様の願い、二人が違う思いを持っている。
それだけは分かる。
「ところで統括教授はお元気でしたか?」
サエは再びほほ笑んで、問い掛ける。
「統括教授なら大丈夫です。私たちの星でもあのぺペンギンほど元気なぺペンギンは居ません」
「そうですか、それなら良かったです」
サエが今度は寂しく笑う。
「サエちゃんとメグちゃんのこと、話しましたよ」
「え!」
サエの目が輝き出す。
「そしたらね、統括教授は目が虚になって、暫く黙っていたわ」
「そうですか」
また、サエの顔が寂しそうになる。
「そう、あのぺペンギンは、そういうものなの。心でどんなに思っていても悪態しかつかないんだから・・・。どうしてだか分かりますか?」
「いいえ・・・。」
「寂しがりやさんなのよ。統括教授は、今までにたくさんの出会いをしてきて、その分、たくさんの別れを経験してきた。人ってね、自分の夢が叶えられた時、その夢を叶えてくれたものに、とても感謝をする。そして更に次の夢を追いかけて生きていく。それでいいの。ただ、夢を追いかけ始めた時に真っ直ぐに夢に向かっていく。そこには統括教授はもう居ない。人は時々立ち止まって願いを叶えてくれたぺペンギンを思い出す時もあるかもしれないけれど、もう夢を叶えてもらおうと願ってはいけない、自分の力で夢を掴もうと思う。それでいいのに」
「マルちゃん・・・。」
「あのぺペンギンはそれが分かっていないから馬鹿なの・・・。」
「そ、そう、ですか・・・。」
「そう、そういう事。さあ、コミネさんも酒屋さん閉めて帰ってくる頃でしょ? サエちゃんも家に帰らないとね」
「はい、そうします」
「それがいい、お開きね」
「あの、今夜、もし良かったら、一緒にお食事しませんか?」
「いいの、折角のお誘いだけど、今夜はタッタリア医学教授に会ってお話ししておきたいことがあるの。御免なさいね」
「いえ、大丈夫です。タッタリアさんとのお話となると大切なお話なのでしょうね」
「ありがとう、また今度、タッタリア医学教授も含めて5人でお食事、誘ってくださいね」
「で、依頼された件はどうでしたか?」
お茶を啜りながら、サエがリンに問いかける。
お客も帰った夕刻のひと時である。
「うん、そうね、なんとかならないかもしれないわね」
この小さな抜海村で、願いを叶える星からやって来た地球型エージェントスーツ・ミラノコレクション・スーパーモデルタイプ・コードネーム・リンが何のために存在しているかを知っているのはサエとほんの一部の人間達である。
「それって、統括教授では無理だって言う事ですか?」
「多分なんだけど、統括教授も分かっていて付き合っていると思うの」
「それは、願いが叶わないって言う事でしょうか?」
「それとこれとは別なの」
「?」
「願いは丸山さんの奥様からなの。丸山さんが経営を立て直したい、って願いをかけたわけじゃないの」
「そうですか」
サエはそう答える。
丸山社長の思い、丸山さんの奥様の願い、二人が違う思いを持っている。
それだけは分かる。
「ところで統括教授はお元気でしたか?」
サエは再びほほ笑んで、問い掛ける。
「統括教授なら大丈夫です。私たちの星でもあのぺペンギンほど元気なぺペンギンは居ません」
「そうですか、それなら良かったです」
サエが今度は寂しく笑う。
「サエちゃんとメグちゃんのこと、話しましたよ」
「え!」
サエの目が輝き出す。
「そしたらね、統括教授は目が虚になって、暫く黙っていたわ」
「そうですか」
また、サエの顔が寂しそうになる。
「そう、あのぺペンギンは、そういうものなの。心でどんなに思っていても悪態しかつかないんだから・・・。どうしてだか分かりますか?」
「いいえ・・・。」
「寂しがりやさんなのよ。統括教授は、今までにたくさんの出会いをしてきて、その分、たくさんの別れを経験してきた。人ってね、自分の夢が叶えられた時、その夢を叶えてくれたものに、とても感謝をする。そして更に次の夢を追いかけて生きていく。それでいいの。ただ、夢を追いかけ始めた時に真っ直ぐに夢に向かっていく。そこには統括教授はもう居ない。人は時々立ち止まって願いを叶えてくれたぺペンギンを思い出す時もあるかもしれないけれど、もう夢を叶えてもらおうと願ってはいけない、自分の力で夢を掴もうと思う。それでいいのに」
「マルちゃん・・・。」
「あのぺペンギンはそれが分かっていないから馬鹿なの・・・。」
「そ、そう、ですか・・・。」
「そう、そういう事。さあ、コミネさんも酒屋さん閉めて帰ってくる頃でしょ? サエちゃんも家に帰らないとね」
「はい、そうします」
「それがいい、お開きね」
「あの、今夜、もし良かったら、一緒にお食事しませんか?」
「いいの、折角のお誘いだけど、今夜はタッタリア医学教授に会ってお話ししておきたいことがあるの。御免なさいね」
「いえ、大丈夫です。タッタリアさんとのお話となると大切なお話なのでしょうね」
「ありがとう、また今度、タッタリア医学教授も含めて5人でお食事、誘ってくださいね」
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