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しおりを挟むコミネは、自分の部屋の前で暫し立ち止まる。
中からは楽しそうな笑い声が扉の外に溢(こぼ)れている。
「ただいま戻りました、入ってもよろしいでしょうか?」
最早、誰の部屋か分からなくなっている。
「おう、遅かったな、もう始めてるで」
見ると結構な料理が小さな卓袱台三つに所狭しと並べられている。
そして更に背後の階下で声がする。
「メグー、これも持って行って」
宿のご主人の声である。
「はーい」
と声がすると、コミネの脇を通り過ぎて少女が階下の厨房へ駆けていく。
「どう言うことですか」
と状況を把握できていないコミネが問う。
「お前、知らんかったん。昨日もそれなりに豪華な食事やったと思わへん? ここのご主人東京で修行して、アメリカのクィーンズへ修行に行って、ほんでもって日本に帰って来て、ここの古民家改造して懐石料理の民宿にしはってんで」
「・・・・・・・・。」
「お待たせー」
と言ってメグが豪華な皿盛り料理を持って部屋に戻ってくる。
「おおー、これまた豪華やないかい。まぁ、お前もそんなとこつっ立ってんと、こっち来て座りーな、ほれ、サエちゃんの隣や。ちゃんとお前の分は手ぇつけんと置いたあるさかい」
「どうぞ」
とサエが手招きをしている。
「あ、すみません。失礼します」
「どう、お前も一杯やるか?」
「あ、じゃ、ビール、もらえますか」
「何やお前、禁酒してたんちゃうの」
「今夜は飲みます」
「では、どうぞ」
と言ってサエが瓶ビールを少し傾ける。
「あ、どうも、いただきます」
卓袱台に置かれた豪華な料理を前にして二人と一匹が再度乾杯する。
ぺペンギンは卓袱台の前に座っているメグの膝の上に座っている。
「あ、それそれ、あまご、もらえる」
「はーい、どうぞー」
と言って小学生のメグは柔らかな川魚の身を器用にほぐし、お箸でぺペンギンの嘴まで持っていってあげる。
「はい、アーン」
「アーン」
それを見ていたコミネが口の中で聞こえないように呟(つぶや)く。
「なんとだらしない姿だ」
そして今度は横目で隣のサエを見る。
少し酔っているのだろうか、足をだらしなく崩した体勢が浴衣の裾を乱したのであろう、合わせた裾が少し開いて膝頭が見えている。
それに気付いてサエが、
「あ、失礼しました」
と言って裾を直すが、時、既に遅し。
コミネの片方の鼻の穴から血が流れている。
「お前、ビール飲んでそんな事できるん? 得意技、速攻で出してきたな」
「そんな特技持っていません!」
「え? 特技じゃなかったのですか」
サエが真面目に問いかける。
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