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29話
しおりを挟む夕焼けに赤く染まる部屋の中で一人と一匹がいる。
「行ってもうたな」
「はい、行ってしまいました」
「サエちゃん見送るのに、もう一泊せなあかんようになってもうたな」
「はい、まさか夕方の出発だとは思ってもみなかったので」
「そうか、ワイも、そろそろ行かなあかんな」
「マルセリーノさんも行くのですか」
「うん、ワイの星な、願いを叶える星って呼ばれてんねん。他にも行かなあかん所ができてな。それは、任務がほぼ完了したって言うことやねんけどな」
「ここで、夢を叶えられた人が居る、と言うことですか」
「ああ、今回は、ようさんの人の願い叶えたで。メグちゃんのお母さんの願い、メグちゃんの父親代わりになってるトキコさんのお兄ちゃんの願い、サエちゃんの願い、全部叶えたったで。でもなぁ、一つだけ叶えてへん願いがあるねん。それが今回の最後の願いや」
「・・・・・・・・。」
暫くの沈黙の後、コミネが囁くように言う。
「それは、私の願いですか?」
「せやねんなぁ。最後の願いだけは叶えられへんねんなー。ワイに出来ひんから無理や、って言うてるんちゃうねんで。ワイらの科学力やったら簡単なことや、とまでは言わへんけど、出来ひん相談でもないねん。例えばやで、勿論、条件付きやけど、死んだ人を復活させることもできる。おんなじように人を夢でも見てるように死なせることもできる。また別にな、死に至らんでも不必要な記憶を無くすことも出来る。ただ、これらはな、どれもこれもそうやねんけど慎重にやらんとあかんねん。例えばやねんで、例えばやけど、ほんまに不必要な記憶なんか?っていうところや。人が生きていくための経験で不必要なものやと自分が勝手に思うてたことが実は必要やったりな、それは後になってからしか分からへんことやねん。そう思わん? 今のお前には辛いことかもしらんけど、未来にいるお前の糧になるかもしらへんやろ? 必要か必要でないかは人が決めるもんやないねん。もしも、人が決めれるとしてみ? それは多分、必要不必要やなくて楽しいか苦しいかで分けてまうやろな。今までそんな人間をいっぱい見てきたさかいに言うねんけど、人は、そんなに強うない・・・。理では解決できひんような幸せも、理不尽な不幸も突然やって来る。なぁ、そう思わへん? でやな、残念やけど、お前の願いやけどな、死にたいんやろ? その願いは叶えてやられへんて言うたけど、そうでもないのは今の話で分かった? この数日間の出来事で分かった? その上で言いたいねんけどな、その願い、叶えるか叶えへんか、考えさせて欲しいねん。それはな、めちゃめちゃ苦しい時にやで、死んで楽になれるんやったら死を選ぶんか、それとは別に苦しくても必死で生きようとするんか、そんな状況でやったらワイはどちらが正解なんかって、よう言わんわ。でもな、お前さぁ、旅の途中で何度も自分に問い掛けてきたやろ? それ、その答え、知りたくないか? 何んで生まれてきたんやろ? 自分が生きてる意味は何やろ? お前、自分に問いかけてきたやん? それ知りたくないか? 答えは未だ見つかってへんねやろ? その答えをワイが教えたったら死んでもええか? ええか、よう聞けよ。 生まれてきた意味と存在し続けてる理由、それはな、生きて、生き抜いて、とことん生きて、その先にあるもんやねん。そこにはな、必死で生き抜いてきたもんにしか分からん、何かがあるねん。それを知るためにはな、意味を考えんと、理由を考えんと、必死で生き抜くしかないねん。そん先にある真実、やっと辿り着ける真実、それが死やねん。お前らの言う死、ワイらの星とはちょっと考え方が違うねん。まぁ、そう言うことでや、さて、お前にとっての死をもう一回だけ見つめ直してみぃひんか? 今この時に死を選ぶか? その理由を見つめ直してみぃひんか? どうする? 明日、星間連絡船、この果てしない宇宙の巡回船がこの星の上空を飛ぶ。ワイは、それに乗って帰らなあかん。ゆっくり考えてる時間はない。それでも一晩の時間はある。もう一回だけ考えてみいひんか? お前の旅の終わりは死なんか?生なんか? もう一回だけ考えてみよや。ほな、ワイ、メグちゃんの部屋に戻るわ」
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