ペンギン仕掛けの目覚まし時計 5

織風 羊

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18 さよなら マルセリーノ

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 珈琲の香りがしている。
リンは、2匹のぺペンギンに暖かな湯気が漂うカップを差し出した。

「マルセリーノ統括教授、嘆願書をありがとうございました」

「そうかぁ、嘆願書が通ったかぁ。まぁ、今回のあの装置の件は全部ワイの独断で決めたことやさかいになぁ。しかしなぁ、また三人でやっていこうや、って言うたんはワイやのに、本人が母星に強制送還やしな。まぁ、お前にまた会えただけでも幸せや、言うことにしとこかい」

「そうですか」

「えっ、お前、そうですか、って、ちょっと冷たない? ワイと一緒に居れて幸せやった、みたいなこと言うてへんかった?」

「記憶にございません」

「おい、何んちゅうコンピュータやねん! 記憶消去できるんかよ」

「何んのことでしょうか」

「もう、ええわ」

 マルセリーノは、ゆっくりと珈琲を飲み干すと、

「さぁ、行くかね」

 と言った。

 保育園の空から無色透明に近い階段が降りて来ている。

「ほな、帰るわ」

 と言うとマルセリーノは階段に短い手を掛けた。

「ほな、さいならやで。また、いつか、星で会おうや」

 マルセリーノが、そう言い終わると共に階段はスルスルと空へ登って行った。
その時、

「統括教授、忘れていたことがあります。星から手紙が届いております」

 とタッタリアが遠ざかって行くマルセリーノに大きな声で言うと、

「ええよー、開いて読んでみてー」

「はい、分かりました。えっとですね、星への強制送還は免除されたそうですよー」

「ええー、何やてー、なんか方向が違うようなこと言わへんかったー」

「はーい、戻って来てくださーい」

「何やてー、やっぱ、よう聞こえへんわー」

 無色透明に近い階段が星間連絡船にしまわれ、扉が閉まると、マルセリーノを乗せた宇宙船は、勢いよく大気圏へと突入していった。
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