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17 三つの願い
しおりを挟むマルセリーノが母星への強制送還のために保育園へ帰ってくると、タッタリアが保育園の門に立って迎えた。
二人は職員室に入ると、タッタリアから声をかけてきた。
「統括教授、今回はお疲れ様でした」
「ええよ、そんなこと言わんでも。お前にも心配掛けてもうたしな。ごめんやで」
「いえ、もう過ぎたことですから」
「でもやぁ、願い事、ひとつも叶えられへんかったなぁ」
「いえ、二つです」
「せやったかなぁ」
「はい、涼太さんのそばにいてやってください、と言う美咲さんの願いも叶えられました」
「まぁ、それって、たいした願いやないけどな」
「いえ、涼太さんも心強かったと思いますよ。それにも増して美咲さんの気持ちもずいぶん癒されたのでなないでしょうか」
「ワイ、そばに居てただけやん」
「それだけで良いのではなかったのでしょうか。統括教授は三つの願いのうち一つは叶えられました。もう充分ではないですか」
「慰めてくれるんは嬉しいけど、やっぱりなぁ。涼太のこと、ジュリアのこと、全部中途半端やし」
「統括教授、星に帰ったらゆっくりしてください」
「せやなぁ、自宅謹慎や! 言われてるけど、外泊以外の外出は許されてるし散歩でもしながら新しい宇宙物理学の理論でも作ってみるわ」
「ペットの背中に乗って外出ですか?」
「せやな、あいつらとも暫く会うてへんしな」
「ウサギさん達ですよね?」
「そやで、ムーにも会いたいしな」
「あ、そうそう、ムーさんは星を出たらしいですよ」
「何やて! あいつ、また家出しよったんかい!」
「まぁ放浪癖は、自由な飼い主に似たのかもしれませんね」
「あいつなぁ! どこほっつき歩いとんねん」
「それが、どうもこの星に来ているみたいなのですよ」
「はぁー、何んやてぇー、地球ってか?」
「はい、この星のとある支援施設に行ったところまでは足取りがつかめているのですが、そこから先は行方不明です」
「あのボケ、ええ加減に晒せよ!」
「そういうところが好きなのでしょ?」
「いや、単なる乗り物がひとつ、どっか行きよっただけや」
「でも兎のムーさんは、統括教授の有能な秘書の1匹でしたよね」
「うっ」
「きっと何処かで、教授のお手伝いになることをしているかもしれませんよ?」
「あいつはアホやさかいに願いを叶える力はない」
「でも、心を支える能力はありますよ」
「うっ」
「たとえ叶わぬ願いでも、寄り添う気持ちが一番大切なんや! といつか統括教授が言っていたと存じますが」
「うーん、二つの願いを叶えられへんかった今のワイには、ちょっと厳しい言葉やなぁ」
「そんな事ございませんわ、マルセリーノ統括教授」
「ええー!、リン。って言うことはワイの願いが叶ったの?」
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