5 / 12
第四章
しおりを挟む
翌日はぺペンギン仕掛けと言えばいいのだろうか、目覚まし時計のお陰?で兎に角、無事に出勤できた。
目覚まし時計の住人?適切なアドバイス?これもまた、そのお陰で今日の仕事はなんとかなった。
心配していたほどのことにも会わず、というか今日、今居る、仕事を目の前にしている自分、その自分を信用して頑張ったらなんとかなった。
勿論、上から叩いてくる奴、下から足を引っ張ろうとする奴、以前から結構な人数でいたが、今回は徹底的に無視して自分のやるべきことだけを考えて仕事をした。
それが正解なのかどうかは分からないし、次も上手くいくとは限らない。
ゆっくりと慌てずに、心配せずに、自分らしくやっていこうと思った。
私は仕事が終わると、忘れずにスーパーマーケットに寄ってシラスの入った発泡スチロールで出来たトレイ一皿と、自分の為のワンコイン弁当を買って帰った。
部屋に戻って明かりをつけ、目覚まし時計を見やると静かに時を告げていた。
早速、シラスと氷を置いた。
目覚まし時計の上にある上を向いた鐘ではなく金色のお椀の中へ。
お弁当と一緒に買おうと思っていたペットボトルのお茶を忘れたので、お湯を沸かしに台所へと行った。
小さなお皿に数日前のティーパックがある。
紅茶のパックは3回使える。一回目は3秒だけお湯につける。
其れでも紅茶の良い香りと味がする。
2回目は10秒間つける。
香りは無くなっているが紅茶の味が確かにする。
3回目は1分以上お湯につける。
殆ど苦いだけになるが、私は此の味をコクと呼んでいる。
4回目、此れは何処かの国の変な飲み物のように変わっている。
紅茶の色は出ているが香りも苦味もない。
でも白湯ではない。
今回は最後になる3回目なので1分以上お湯に浸からせなければならない。
1分。
待っていると長い時間だ。
すると、何だか煙草の匂いがしてきた。
振り返ると目覚まし時計の横でペンギンらしき生き物のぺペンギンが、翼の先っちょに火のついた楊枝らしきものを器用に掴んで嘴から煙を吐いている。
「あのー、昨日、言いそびれたんですけど此の部屋、禁煙なんです」
「あっそ、こんなちっちゃいタバコの煙でも気になるん?お前ちっちゃい奴やなぁ」
「申し訳ないんですけど、煙草を吸わない人間にとっては、ほんの少しの煙でも気になるものですよ」
「あっそ、食後の一服くらいさせてーや。今度から窓の外で吹かすし」
ペンギンが窓の外で煙草を吸っている姿など誰にも見られたくはない。
「だからと言って其れも困ります」
私の気持ちを察してか、
「安心し、誰にも見つからへんようにするさかい」
決して安心などできるはずもないが、私はぺペンギンに語りかけた。
「今日は無事に仕事を終えられました」
「あっそ」
「今日の自分を信じて良かったと思います」
「あっそ」
「兎に角、周りを気にせずに目の前にあることを成し遂げることに専念しました」
「あっそ」
「兎に角、自分らしく生きていこうと思いました」
「あっそ」
「・・・・・・・・。」
「何?」
「・・・・・・・・。」
「何んか言いたいことでもあるん?」
「じゃ、言ってもいいですか?」
「ええよ」
「どうして、あっそ、しか言ってくれないんですか?」
「あのな、ほんなら言うで、先ずはなぁ、お礼言わなあかんのちゃうん?頭ごなしに自分らしくとか言われても、アドバイス与えたった方は聞く気せえへんやろ。お前マジ頭悪いなぁ」
「あっ、済みません。昨日はアドバイスを有り難うございました」
「せやな、話はそっからやんな」
「はい」
「ほんで、お前、自分らしくとか言うとったな」
「はい」
「それでええと思ってるん?」
「はい!」
「お前、やっぱりアホやな」
「はい?」
「お前一人で仕事してるつもりなん?其の若さで部下が居てるとは思わへんけどやぁ、上司は居てるやろ? お前は其の組織の人間やねんで。自分らしく生きるのは構わへんねんで、せやけど其れって出世するのはやめました、言うてんのと同じやねんで。上手いこと仕事やっていこう思たら相手は何を望んでるんか、認められたいとか出世したいとか思うんやったら上司がやって欲しいと思ってる事は何なんか、そんなこと考えながら仕事せなあかんのちう?」
「はい」
「何をいっちょ前に、自分らしく、とか言うてんねん。それ全然笑われへんギャグやん」
「はい」
「ほんまに自分らしくって思うんやったら、独立できるくらいの実力つけてから言うたらんかい、この脳足りんが!」
「はい」
「なんかお前、泣きそうになってへん?」
「・・・・・・・・。」
「きついこと言うたみたいやけど、ええか、自分らしくって言うのはな、表現なんや。自分はこんな人なんです!っていう表現なんや。其れはな、個性っていう芸術なんや。見せびらかすようなもんやないねん、大切にしたらなあかんもんやねん」
「はい」
「分かったんやったら、もうええよ」
「はい」
「お弁当食べや」
「はい」
「お茶、冷えるで」
「はい」
「・・・・・・・・。」
「いただきます・・・。」
目覚まし時計の住人?適切なアドバイス?これもまた、そのお陰で今日の仕事はなんとかなった。
心配していたほどのことにも会わず、というか今日、今居る、仕事を目の前にしている自分、その自分を信用して頑張ったらなんとかなった。
勿論、上から叩いてくる奴、下から足を引っ張ろうとする奴、以前から結構な人数でいたが、今回は徹底的に無視して自分のやるべきことだけを考えて仕事をした。
それが正解なのかどうかは分からないし、次も上手くいくとは限らない。
ゆっくりと慌てずに、心配せずに、自分らしくやっていこうと思った。
私は仕事が終わると、忘れずにスーパーマーケットに寄ってシラスの入った発泡スチロールで出来たトレイ一皿と、自分の為のワンコイン弁当を買って帰った。
部屋に戻って明かりをつけ、目覚まし時計を見やると静かに時を告げていた。
早速、シラスと氷を置いた。
目覚まし時計の上にある上を向いた鐘ではなく金色のお椀の中へ。
お弁当と一緒に買おうと思っていたペットボトルのお茶を忘れたので、お湯を沸かしに台所へと行った。
小さなお皿に数日前のティーパックがある。
紅茶のパックは3回使える。一回目は3秒だけお湯につける。
其れでも紅茶の良い香りと味がする。
2回目は10秒間つける。
香りは無くなっているが紅茶の味が確かにする。
3回目は1分以上お湯につける。
殆ど苦いだけになるが、私は此の味をコクと呼んでいる。
4回目、此れは何処かの国の変な飲み物のように変わっている。
紅茶の色は出ているが香りも苦味もない。
でも白湯ではない。
今回は最後になる3回目なので1分以上お湯に浸からせなければならない。
1分。
待っていると長い時間だ。
すると、何だか煙草の匂いがしてきた。
振り返ると目覚まし時計の横でペンギンらしき生き物のぺペンギンが、翼の先っちょに火のついた楊枝らしきものを器用に掴んで嘴から煙を吐いている。
「あのー、昨日、言いそびれたんですけど此の部屋、禁煙なんです」
「あっそ、こんなちっちゃいタバコの煙でも気になるん?お前ちっちゃい奴やなぁ」
「申し訳ないんですけど、煙草を吸わない人間にとっては、ほんの少しの煙でも気になるものですよ」
「あっそ、食後の一服くらいさせてーや。今度から窓の外で吹かすし」
ペンギンが窓の外で煙草を吸っている姿など誰にも見られたくはない。
「だからと言って其れも困ります」
私の気持ちを察してか、
「安心し、誰にも見つからへんようにするさかい」
決して安心などできるはずもないが、私はぺペンギンに語りかけた。
「今日は無事に仕事を終えられました」
「あっそ」
「今日の自分を信じて良かったと思います」
「あっそ」
「兎に角、周りを気にせずに目の前にあることを成し遂げることに専念しました」
「あっそ」
「兎に角、自分らしく生きていこうと思いました」
「あっそ」
「・・・・・・・・。」
「何?」
「・・・・・・・・。」
「何んか言いたいことでもあるん?」
「じゃ、言ってもいいですか?」
「ええよ」
「どうして、あっそ、しか言ってくれないんですか?」
「あのな、ほんなら言うで、先ずはなぁ、お礼言わなあかんのちゃうん?頭ごなしに自分らしくとか言われても、アドバイス与えたった方は聞く気せえへんやろ。お前マジ頭悪いなぁ」
「あっ、済みません。昨日はアドバイスを有り難うございました」
「せやな、話はそっからやんな」
「はい」
「ほんで、お前、自分らしくとか言うとったな」
「はい」
「それでええと思ってるん?」
「はい!」
「お前、やっぱりアホやな」
「はい?」
「お前一人で仕事してるつもりなん?其の若さで部下が居てるとは思わへんけどやぁ、上司は居てるやろ? お前は其の組織の人間やねんで。自分らしく生きるのは構わへんねんで、せやけど其れって出世するのはやめました、言うてんのと同じやねんで。上手いこと仕事やっていこう思たら相手は何を望んでるんか、認められたいとか出世したいとか思うんやったら上司がやって欲しいと思ってる事は何なんか、そんなこと考えながら仕事せなあかんのちう?」
「はい」
「何をいっちょ前に、自分らしく、とか言うてんねん。それ全然笑われへんギャグやん」
「はい」
「ほんまに自分らしくって思うんやったら、独立できるくらいの実力つけてから言うたらんかい、この脳足りんが!」
「はい」
「なんかお前、泣きそうになってへん?」
「・・・・・・・・。」
「きついこと言うたみたいやけど、ええか、自分らしくって言うのはな、表現なんや。自分はこんな人なんです!っていう表現なんや。其れはな、個性っていう芸術なんや。見せびらかすようなもんやないねん、大切にしたらなあかんもんやねん」
「はい」
「分かったんやったら、もうええよ」
「はい」
「お弁当食べや」
「はい」
「お茶、冷えるで」
「はい」
「・・・・・・・・。」
「いただきます・・・。」
10
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
夫に愛想が尽きたので離婚します
しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。
マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。
このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。
夫を捨ててスッキリしたお話です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる