ペンギン仕掛けの目覚まし時計 9 復活

織風 羊

文字の大きさ
9 / 38

8 社会人

しおりを挟む


 3年浪人して、医学部には学力が届かずであったが、看護大学には入ることができ、そして卒業。

 就職は総合病院。

 覚える事は山積み、そして忙しい。

 然し、そんなことはどうでも良かった。
私を悩ませたのは、人間関係だった。

 言うまでもなく、ナースステーションには私よりも年下の先輩がいる。
敬語を使ってくる先輩もいた。
体裁?

 ざっくばらんに普通に話しかけてくる先輩も居た。
フランク?

 どちらも大した差はない。
礼儀?世間知らず?
大差はないのだ。
礼儀が有ろうが無かろうが、その心が見える。

 要するにどんなに形を作っても奴らには分からない。
教育?教えて育てる。

 教えることは簡単にできても、育てることの難しさを知っちゃいない。
随分と年嵩のいった看護師長だって、そんなものはどこ吹く風だ。

 私は、どんな相手でも笑顔で接してきた。
体裁とか言ったものでではない。
心の真ん中で人を馬鹿にした。
私は医学部を落ちたから此処にいるのだ。
お前らほど程度は低くない。
お前らには分からないような経験をして、本だってお前らの100倍くらい読んできた。
そして身につけてきた知識と経験はお前らの薄っぺらい人生とは比較にならない。
立っている土俵が違うのだ。
そう思うと平気ではなかったが、笑顔を作ることができた。

 本当に看護師に向いている奴っていうのは、しっかりと勉強して国家試験に合格した奴らじゃない。
看護大学を卒業すらできなかった連中だ。
奴らの方が人間味があった。
少なくとも社会人になった今の私には、そう思えた。

「お前、言いたい放題やな。どんだけ看護師嫌いやねん」

「済みません。看護師が嫌いじゃなくて、そこで働いている人が嫌いなだけだと思います」

「他所行ったら、そうでもなくなると?」

「分かりません」

「案外どこ行っても変わらんかもしらんな。せやけど、案外変わるかもしらん」

「本当ですか?」

「そこで働いてる人らは、その施設の方針に基づいて働いてる。その施設に問題がある時もある」

「施設が変われば・・・」

「それともう一つ、分かってると思うけど、お前や」

「はい、でも、そう思わないと、やっていけない時もあります」

「分かるよ、人は人に対して、それなりの礼を尽くして付き合って行かなあかん。職場っていうところは、それを失わせる場でもあるしな」

「・・・・・・・・。」

「言うたやろ? 施設の方針、上司部下、先輩後輩、そこに自然体の本来の人間は存在するやろか?」

「・・・・・・・。」

「人が存在して、そこに先人がいて、後続する者がいる。後から来る者のことが気になるから育てようとする者がいてる。そうやって同じ思いの者が集まって、収拾がつかんようになる前に規則を作る。そう思わん?」

「逆ですか?」

「そうや、まず施設があって、そこに早くからいてる奴がお局になって、そこへ新しい奴がやって来る。それだけや」

「分かりません」

「分かろうとしてへんだけやんか。お前みたいな奴は、お前一人だけやと思うか? 結構ようさん居てるねんで? そいつらがどんな思いを抱いて生きているか? お前やったら分かるんちゃうかな?」

「そう、かも、しれません」

「それを理解って言うんやで。それやったら分かるやろ?」

「はい、そこだけでしたら」

「そこだけかい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎ 清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。 膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。 さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。 社交は上品に、恋心は必死に隠したい。 なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——! むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。 清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...