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18 お弁当
しおりを挟むこの作業場では、休憩が一定していない。
一日一時間。
それさえ守っていれば、いつ休んでも良い。
分割もできる。
例えば二十分を分割で3回とか。
私は、十分を二回と四十分を一回取るようにしている。
やっぱり時間は一定していない。
仕事がちょうど良い具合で終われた時に休む。
例えば、段ボール箱ひとつ分を詰められた時が丁度十時くらいだとしたら午前の休み十分で煙草の休憩、と言うふうにしている。
その日は、私の昼休みの四十分が、たまたま昼食時間が、葉子さんと重なった。
「あら、いつも此の時間なの?」
と葉子さんが言う。
「いえ、仕事の出来次第で決めているから、お昼は一定していないんです」
「そうなんだ。私もおんなじかな」
「喫煙室では時々会いますよね」
「そうそう、短いけど楽しい時間だね」
「え、あ、そうですね」
「そうだよー。いくら雰囲気が悪くないって言っても仕事仲間でしかないしね」
「そうです、ね」
葉子さんは、そう言いながらお弁当箱を開く。
私は何気なく覗いてしまう。
げ! たこさんウインナーに卵焼き、可愛いイラストが描かれた蒲鉾。
葉子さんは私の視線に気付いたらしく、
「あ、これね、可愛いでしょ。息子君のお弁当の残りなの」
「息子さんですか」
「そうよ、幼稚園の年長組」
「そうなんですね」
と言いながら、私はラップで包んだおにぎりを広げる。
「おにぎり、自分で作ってくるの?」
「はい、一人暮らしですから」
「中に、何が入っているの?」
「鮭か、鰹節か、海苔、です」
「ええ? 可笑しい。海のものばかりなんだ。息子の名前ね、海(かい)って言うんだ」
「うみ、ですか」
「そう。海って書いて、かい、って呼ぶんだ。私ね、いつか海の向こうへ行きたいんだ。外国じゃなくてもいいんだ。ずっと此の町で暮らして来たから、何処かへ行きたいなって。そしたら、陸続きじゃなくて、道がなくなったところから海を渡って、知らない町で住んでみたい、そう思ったんだ」
「それで、海、って名付けたんですか」
「うん、そう。これだけは誰が何んと言っても絶対に押し通したの。それだけ気合い入れることでもないのにね。今から考えたら何故に意地を張っていたのじゃー、って言う感じね」
「いいと思います、絶対に」
「あら、どうしたの? 遼ちゃんが、そんなに強く言うって」
「え、いえ、理由なんてないですけど、その時の葉子さんには、意地を押し通したい何かがあったんだろうと思います」
「あら? そうね、何かがあったかもしれないわね。特別な強い意地は思い出せないけど。遼太郎君、ありがとう」
私は俯いたまま頷いた。
上目遣いに見ると葉子さんは、不思議そうな顔をして私を見ているように思えた。
私は、葉子さんって呼ぶのに、葉子さんは私を、遼ちゃんって呼んだり、遼太郎君って呼んだり、何かの理由があって使い分けているのだろうか?
それなら、その理由って何んなんだろう?
そんなことを考えていると、不意に葉子さんが声をかけてきた。
「遼ちゃんのお弁当も作って来てあげようか?」
「いや、それは、え、何んですと?」
「いいよ、二人分も三人分も変わらないから。私達と同じメニューになるけどね」
興奮で鼻血が出そうになるくらい嬉しかった・・・。
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