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第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから
第127話 ノヴァの力についてーーユティの考察
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人が寝静まった深夜。私は仕事の報告に南側のフォルス家屋敷の敷地を訪れていました。報告は報告書でするのが主ですが、今回は依頼されていた仕事が終了したことも相まって対面での報告となっています。
本来ならばアークゲートの屋敷で行うのが良いのでしょうが、あそこにはオーラもいますし、依頼のようなざっくりとした話はともかく、終了後の報告のような細かい話は向きませんから。
暗闇の林立する木々の横で待っていると、気配と足音が聞こえます。月明かりの照らされる空間へとゆっくりと入ってきたのは、今回の仕事の一件をお命じになられた当主様でした。
彼女の姿を確認して頭を下げ、素早く口を開きます。
「お疲れ様です当主様。このような夜分遅くに旦那様との時間をお邪魔してしまい、申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。今回の話は念には念を入れて、私達以外誰の耳にも入らないようにしたかったですからね。それで、首尾の方は?」
「はい、つい先ほど裏組織『影』に関連するすべての組織、および人員の抹殺が完了しました。今後その名を継ぐ組織も、構成員も現れないかと」
端的に結果を伝えると、当主様は満足そうに頷きました。
「そうでしたか、お疲れさまでした。あぁ、そういえばノヴァさんに関してはどうですか?」
裏組織の壊滅に関しての当主様の反応は一言だけ。そこからも、もう彼女の中でこの一件はどうでもよいことになっているのがよく分かります。
その証拠に、ノヴァさんの事を聞くときには声が弾んでいましたからね。
「……結果から申し上げると、正確には分かりませんでした。ですが予想でよければ……」
「そうですね、ユティの意見を聞かせてもらえますか? なぜノヴァさんだけが私達の魔力を従えられるのか」
ここ一年ほど、私が主に調べていた内容は2つあります。その中でもほとんどの場面で優先度の第一位はノヴァさんの力に関することでした。
彼は当主様の魔力を従えることで、小さい頃の当主様を助けた。こんなことをできる人間は彼以外にはいません。
私は頭に末妹の姿を思い浮かべつつ、口を開きます。
「まず、ノヴァさんの能力に関してです。彼は『アークゲートの魔力を従える』力を持っていると思われます。ただ一方で、『対象の人物が幼ければ幼いほど』、従えやすいようです」
「やはりそうでしたか」
当主様も同じような結論に至っていたようで、その返事に私は頷きました。
「私達が成長するにつれて、ノヴァさんの力が与える影響は小さくなっていきます。オーラから話を聞きましたが、ノーザンプションにて彼女が叱られた時は全身に痺れるような衝撃を感じたとか。一方で私の場合はそういった感覚はなく、あくまでも彼に言われたことをしよう、という気になるくらいです」
「あのユティが自分から片づけをしようと思うだけでも相当な強制力だと思いますが」
「……あまりそのことは」
クスクスと悪戯っぽく笑う当主様から私は目を背けます。自分がだらしないのは承知していますが、そこを突かれると痛いと言いますか。
無理やり話題を変えるためにわざと咳払いをして、言葉を続けます。
「一方で、当主様の場合は10歳という年齢で魔力そのものに対して命令されています。人に対してか、あるいは魔力そのものに対してかの違いもあると思いますし、おそらくですが保有している魔力が多ければ多いほど効果が大きい気もしますが、一番影響が大きいのは年齢ではないかと予想されます」
「つまり、現アークゲート家に対してはノヴァさんの力はそこまで作用しない、ということですね」
「最年少はオーラですので、そうなります。ただご存じのように一度従えた魔力に関しては親和性が高い状態がずっと続きます。現段階でノヴァさんが干渉できるのは当主様の魔力とオーラの魔力かと。中でも当主様の魔力との親和性に関しては、群を抜いています」
「オーラも……ですか?」
ここまでは予想していなかったのか、顎を指でつまんで考えるそぶりを見せる当主様。彼女の言葉に、強く頷きます。
「おそらくは……時間があるときに、オーラに微弱な魔法をノヴァさんに打ってもらうと良いかもしれません。当主様程ではないと思いますが、おそらく彼の力に変換されるかと」
「なるほど……」
同時にあくまでも予想ですが、私の場合はノヴァさんの力にはなれない気がします。ここに関しては妹たちが羨ましいですね。
少しだけしみじみとしてしまいましたが、意識を切り替えます。
「そしてノヴァ様のその力の理由ですが、先ほども申しましたように正体不明です。フォルス家の家系図や彼の母方のクロス家の家系図をかなり上の方まで遡りましたが、一向に同じ力を持っていると記録が残っている人物は出てきませんでした」
「そこに関しては以前も報告を受けていましたね……確かそのあと、国の歴史まで遡ったんでしたっけ? とすると……」
当主様の質問に、私ははっきりと頷きました。
「はい、国の歴史書の中に一文ですが見つけました。要約すると、この国を建国する際に二人の男女がいて、特に男の方は女から力を得て戦う剣士であったと。これはかなり古い文献で、詳細は全く書いていません。歴史書というよりも伝説に近いです。ですがほぼすべての歴史書をひっくり返しましたので、一番有力な説です」
そこまで説明して、私は答えを言う。正確な答えかは分かりませんが、これが答えなのだろうと、私はそう考えています。
「つまり彼……ノヴァさんは先祖返りかと」
「やはりそうでしたか……」
小さく息を吐いて、当主様はそう呟きました。
「ノヴァさんのこれまでについては本人からも、本人以外からも詳しく聞いています。彼のこれまでの人生で力が目覚めるようなきっかけや場面はありませんでした。なので遺伝を仮説として立てていたのですが、まさか遥か昔まで遡るとは……」
「ですが当主様、そうなると一つ問題が出てきます」
私の指摘に対して、当主様は頷きます。
「私達の子供にはノヴァさんの力が遺伝される可能性は低い、という事ですね」
「あくまでも予想ですが、フォルスの血には覇気とアークゲートを従える力の両方があって、基本的には覇気の方が強い。しかしノヴァさんだけが先祖返りでアークゲートを従える力の方が強くなってしまった。
もしそうなら、当主様の子に関して遺伝されるのはフォルスの覇気とアークゲートの魔力かと」
そもそもフォルス家は男性家系で、アークゲート家は女性家系です。当主様の子が男の子のみ、あるいは女の子のみという事もあり得ますが、これは実際にお二人の間にお子が出来るまで分かりません。
話を聞いていた当主様はしばらく考え込んでいましたが、やがて考えをまとめたのか、考え込む姿勢を解きます。
「分かりました、ありがとうございます。ノヴァさんの力に関して調べることはもう十分です。この件に関しても終了にしてください」
「はい」
口ではそう言いつつも、私の中では終わってしまった、という気持ちが大きいです。ノヴァさんの事について調べるのは楽しかったのですが……。
「ついでですが、フォルスとアークゲートの反発についてはどうですか?」
続いて当主様は私が優先度を一番高くして調べているもう一つの件について尋ねられました。
本来ならばアークゲートの屋敷で行うのが良いのでしょうが、あそこにはオーラもいますし、依頼のようなざっくりとした話はともかく、終了後の報告のような細かい話は向きませんから。
暗闇の林立する木々の横で待っていると、気配と足音が聞こえます。月明かりの照らされる空間へとゆっくりと入ってきたのは、今回の仕事の一件をお命じになられた当主様でした。
彼女の姿を確認して頭を下げ、素早く口を開きます。
「お疲れ様です当主様。このような夜分遅くに旦那様との時間をお邪魔してしまい、申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。今回の話は念には念を入れて、私達以外誰の耳にも入らないようにしたかったですからね。それで、首尾の方は?」
「はい、つい先ほど裏組織『影』に関連するすべての組織、および人員の抹殺が完了しました。今後その名を継ぐ組織も、構成員も現れないかと」
端的に結果を伝えると、当主様は満足そうに頷きました。
「そうでしたか、お疲れさまでした。あぁ、そういえばノヴァさんに関してはどうですか?」
裏組織の壊滅に関しての当主様の反応は一言だけ。そこからも、もう彼女の中でこの一件はどうでもよいことになっているのがよく分かります。
その証拠に、ノヴァさんの事を聞くときには声が弾んでいましたからね。
「……結果から申し上げると、正確には分かりませんでした。ですが予想でよければ……」
「そうですね、ユティの意見を聞かせてもらえますか? なぜノヴァさんだけが私達の魔力を従えられるのか」
ここ一年ほど、私が主に調べていた内容は2つあります。その中でもほとんどの場面で優先度の第一位はノヴァさんの力に関することでした。
彼は当主様の魔力を従えることで、小さい頃の当主様を助けた。こんなことをできる人間は彼以外にはいません。
私は頭に末妹の姿を思い浮かべつつ、口を開きます。
「まず、ノヴァさんの能力に関してです。彼は『アークゲートの魔力を従える』力を持っていると思われます。ただ一方で、『対象の人物が幼ければ幼いほど』、従えやすいようです」
「やはりそうでしたか」
当主様も同じような結論に至っていたようで、その返事に私は頷きました。
「私達が成長するにつれて、ノヴァさんの力が与える影響は小さくなっていきます。オーラから話を聞きましたが、ノーザンプションにて彼女が叱られた時は全身に痺れるような衝撃を感じたとか。一方で私の場合はそういった感覚はなく、あくまでも彼に言われたことをしよう、という気になるくらいです」
「あのユティが自分から片づけをしようと思うだけでも相当な強制力だと思いますが」
「……あまりそのことは」
クスクスと悪戯っぽく笑う当主様から私は目を背けます。自分がだらしないのは承知していますが、そこを突かれると痛いと言いますか。
無理やり話題を変えるためにわざと咳払いをして、言葉を続けます。
「一方で、当主様の場合は10歳という年齢で魔力そのものに対して命令されています。人に対してか、あるいは魔力そのものに対してかの違いもあると思いますし、おそらくですが保有している魔力が多ければ多いほど効果が大きい気もしますが、一番影響が大きいのは年齢ではないかと予想されます」
「つまり、現アークゲート家に対してはノヴァさんの力はそこまで作用しない、ということですね」
「最年少はオーラですので、そうなります。ただご存じのように一度従えた魔力に関しては親和性が高い状態がずっと続きます。現段階でノヴァさんが干渉できるのは当主様の魔力とオーラの魔力かと。中でも当主様の魔力との親和性に関しては、群を抜いています」
「オーラも……ですか?」
ここまでは予想していなかったのか、顎を指でつまんで考えるそぶりを見せる当主様。彼女の言葉に、強く頷きます。
「おそらくは……時間があるときに、オーラに微弱な魔法をノヴァさんに打ってもらうと良いかもしれません。当主様程ではないと思いますが、おそらく彼の力に変換されるかと」
「なるほど……」
同時にあくまでも予想ですが、私の場合はノヴァさんの力にはなれない気がします。ここに関しては妹たちが羨ましいですね。
少しだけしみじみとしてしまいましたが、意識を切り替えます。
「そしてノヴァ様のその力の理由ですが、先ほども申しましたように正体不明です。フォルス家の家系図や彼の母方のクロス家の家系図をかなり上の方まで遡りましたが、一向に同じ力を持っていると記録が残っている人物は出てきませんでした」
「そこに関しては以前も報告を受けていましたね……確かそのあと、国の歴史まで遡ったんでしたっけ? とすると……」
当主様の質問に、私ははっきりと頷きました。
「はい、国の歴史書の中に一文ですが見つけました。要約すると、この国を建国する際に二人の男女がいて、特に男の方は女から力を得て戦う剣士であったと。これはかなり古い文献で、詳細は全く書いていません。歴史書というよりも伝説に近いです。ですがほぼすべての歴史書をひっくり返しましたので、一番有力な説です」
そこまで説明して、私は答えを言う。正確な答えかは分かりませんが、これが答えなのだろうと、私はそう考えています。
「つまり彼……ノヴァさんは先祖返りかと」
「やはりそうでしたか……」
小さく息を吐いて、当主様はそう呟きました。
「ノヴァさんのこれまでについては本人からも、本人以外からも詳しく聞いています。彼のこれまでの人生で力が目覚めるようなきっかけや場面はありませんでした。なので遺伝を仮説として立てていたのですが、まさか遥か昔まで遡るとは……」
「ですが当主様、そうなると一つ問題が出てきます」
私の指摘に対して、当主様は頷きます。
「私達の子供にはノヴァさんの力が遺伝される可能性は低い、という事ですね」
「あくまでも予想ですが、フォルスの血には覇気とアークゲートを従える力の両方があって、基本的には覇気の方が強い。しかしノヴァさんだけが先祖返りでアークゲートを従える力の方が強くなってしまった。
もしそうなら、当主様の子に関して遺伝されるのはフォルスの覇気とアークゲートの魔力かと」
そもそもフォルス家は男性家系で、アークゲート家は女性家系です。当主様の子が男の子のみ、あるいは女の子のみという事もあり得ますが、これは実際にお二人の間にお子が出来るまで分かりません。
話を聞いていた当主様はしばらく考え込んでいましたが、やがて考えをまとめたのか、考え込む姿勢を解きます。
「分かりました、ありがとうございます。ノヴァさんの力に関して調べることはもう十分です。この件に関しても終了にしてください」
「はい」
口ではそう言いつつも、私の中では終わってしまった、という気持ちが大きいです。ノヴァさんの事について調べるのは楽しかったのですが……。
「ついでですが、フォルスとアークゲートの反発についてはどうですか?」
続いて当主様は私が優先度を一番高くして調べているもう一つの件について尋ねられました。
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