魂選塔

中釡 あゆむ

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選択の時

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「感情を、失いたくなかったから。人を傷つけたときの痛み、傷つけられた痛み、悲しさ、苦しさを忘れたくなかったから。ねえ、ミルビー。あの世にあなたの思い出も、感情もあるんだよ。ここにはない。いいように言ってるけど、苦しさもあると思う。探そうよ、集めようよ。あなたのするべきことは思い出して、罪を償うことなんだよ」
 

私は彼の両腕を掴み、訴えかけた。うるさい、とユキナリが悪態をついてくる。


ミルビー。呼びかけると、困ったように眉を下げて目をつぶった。私は彼の答えを待つ。綺麗な顔立ちをしていた。人なんて殺せそうにないこの顔。どうして彼は忘れてしまったんだろう。それさえも分からないのだ。


ミルビーは、やがて、目を開けた。


「君の言う通りだ。……ボクには思い出も感情もないから、罪なんか感じない。それを全部思い出せたとき……ボクがどんな風になるのか、知りたい」


ミルビーの答えに、私は安堵して頷いた。彼の手を引いて、私たちはチルギと向かい合う。


「ボクたちを生き返らせてください」
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