婚約破棄出来ない!?から始まる悪役令嬢の憂鬱

桜花ª

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0 prologue 私は誰で、ここはどこ?

思い出せないのに、恋してる?

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 彼の言い分が本当なら、私たちは以前から両思いで結婚する間柄 という事になる。

 私は・・思い出せないけれど、身体は正直なのか、ドキドキするし、呼吸も乱れるし、奥の方がギュッと締め付けられるような苦しさも感じるけれど、不思議な事に、まったく嫌な感じはしないのだ。

「でも、その、具合もよくありませんし、ドキドキし過ぎて苦しいのです」
「ふふふ。具合はよくなくても、気持ち悪くはないんだね?
 良かった。触れられたくない、気持ち悪いと言われたら、しばらく立ち直れないところだよ」
 今は、落ち込んでくれてた方が、私の心臓や呼吸のためにはいいような気も……

「熱もあるようだし、真っ赤なままだね。……わかったよ、今は、おとなしくしてようか。でも、居場所はこのままだ。それは譲れないよ?」

 あからさまに残念そうな表情をして、髪や耳元、首筋などにすり寄るのはやめて、ただ抱き寄せるだけになる。
 それでも、慣れてない私には・・・・・・・・息苦しいのだけれど、子供のように残念がる彼が可哀想な気もして、おとなしく腕の内に収まって小さくなった。

 私の家につくまでの時間にして小一時間、約一名を除いて、居たたまれない空気が漂っていた。


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