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妻が可愛すぎまして
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「脱がせても、かまわないだろうか」
「っ、はい……」
エミリオがセレナの寝間着の裾に手をかけると、彼女は身を起こし、脱がせやすいように協力してくれる。
取り去った布地を丁寧に畳んで寝台のはしに置いたエミリオは、胸元を腕で隠して所在なげに座っている妻を振り返った。途端、セレナは羞恥からか、ギュッと目を閉じる。
「触れてもいいか?」
「はい……」
頬に手を当てると、わずかに汗ばんだ肌がしっとりと吸い付いてくる。その感触を確かめつつ顔を持ち上げると、長いまつ毛が震え、おずおずとした様子で目蓋が上がる。だが、目を合わせることはできないようで、視線はシーツの上をさ迷っていた。
妻のあまりにも初心な様に、今にも暴走しそうな欲望をこらえているエミリオは内心で苦笑する。一人で一度抜いておいてよかった、なんてことを大真面目に考える。でなければ、すでに理性の箍が外れていただろう。
「顔を向き合わせるのは、恥ずかしい?」
「……は、い」
「だったら、後ろから触れたほうが私の目を意識しなくていいかもしれないな」
「そう、ですね……」
セレナが同意したので、エミリオはその背後に回り、自身の膝に彼女を乗せた。怖がらせないように、性急さを感じさせないように、そうっと誘導したのだが、ドロワーズに包まれた柔らかな尻が腿にあたった瞬間、セレナの全身がぎょっとしたように強ばったので、エミリオは焦った。
「やはりいやだったか?」
「いえ……膝に乗せられるとは思わなかったので……」
「ああ、驚かせてすまない……」
謝罪しつつ、大したことでなくて安堵したエミリオはそこで息を詰める。セレナの肩越しに、男にはない胸の膨らみが見えたのだ。しかも上からのこの角度は、そのふくよかさや形を実にじっくりと堪能できてしまう。
つい手を伸ばしたくなって、こらえた。初夜では胸を愛撫しているときに泣かせてしまったから、ここは慎重に慎重を期すべきだ。エミリオはここまでと同様にまずお伺いを立てた。
「……胸に触れてもいいだろうか」
「はい……」
セレナの許可を得たエミリオは、それでも細心の注意を払い、ガラス細工を扱うような手つきで乳房に触れる。両手で包み込んだそれは、張りがありつつも柔らかく、つい揉みしだきたくなるような感触だった。
「はぅ……」
乳房を覆った手にわずかながら力を入れると、表情を隠すように俯いたセレナは口に拳を当てて悩ましげなため息をついた。もじ、と膝の上で脚と脚を擦り合わせるような動きをかすかに感じ取り、エミリオもまた熱い息を吐く。
「……どうだ? いやではないか?」
「はい。いやではない、です……」
「なら、次は……先端に触れる。いいか?」
「……は、い……」
答えるセレナの声はやや上擦っていた。直接的な表現は避けたものの、性感の集中する場所だということを意識してしまったのだろう。
そこで彼女がなにか言いたげにエミリオの腕のあたりの衣服をわずかに引く。
「ん? どうした?」
エミリオが動きを止めると、セレナがもじもじとしながらこちらを仰ぎ見た。羞恥に潤んだ瞳がとても躊躇いがちに、けれど確かにエミリオを捉える。
「あの……一つ一つ聞いていただかなくても、大丈夫、ですから。全部、いやじゃないです。恥ずかしいだけなんです……前のときもそうで……泣いてしまって……でも、エミリオ様になら、なにをされても、いいです……」
エミリオは己の頭にぶわっと血が上るのを感じた。この状況でなにをされてもいい、なんて男にとってはとんでもない殺し文句だ。だが、それを額面どおりに受け止めて身勝手な夫だと思われることは絶対にしたくなかった。
「……っ、してほしいことや、されたくないことがあったら言ってくれ……なるべく、優しくしたい」
狼狽えながらも心からの思いを告げると、その切実さは伝わったのだろう、セレナはこくこくと首を縦に振る。それから遠慮がちに申し出た。
「だったら、その……一つだけ……慣れてないので、ひどい醜態をさらしてしまうかもしれませんが、その……あ、呆れないで……」
かあぁ、とすでに真っ赤な顔をさらに上気させつつそんなことを言うものだから、エミリオは可愛すぎる妻を抱き締めてしまう。
「――呆れるものか」
「……っ、エミリオ様……?」
「あなたは、ただそこにいるだけで、完璧だ」
「っ、はい……」
エミリオがセレナの寝間着の裾に手をかけると、彼女は身を起こし、脱がせやすいように協力してくれる。
取り去った布地を丁寧に畳んで寝台のはしに置いたエミリオは、胸元を腕で隠して所在なげに座っている妻を振り返った。途端、セレナは羞恥からか、ギュッと目を閉じる。
「触れてもいいか?」
「はい……」
頬に手を当てると、わずかに汗ばんだ肌がしっとりと吸い付いてくる。その感触を確かめつつ顔を持ち上げると、長いまつ毛が震え、おずおずとした様子で目蓋が上がる。だが、目を合わせることはできないようで、視線はシーツの上をさ迷っていた。
妻のあまりにも初心な様に、今にも暴走しそうな欲望をこらえているエミリオは内心で苦笑する。一人で一度抜いておいてよかった、なんてことを大真面目に考える。でなければ、すでに理性の箍が外れていただろう。
「顔を向き合わせるのは、恥ずかしい?」
「……は、い」
「だったら、後ろから触れたほうが私の目を意識しなくていいかもしれないな」
「そう、ですね……」
セレナが同意したので、エミリオはその背後に回り、自身の膝に彼女を乗せた。怖がらせないように、性急さを感じさせないように、そうっと誘導したのだが、ドロワーズに包まれた柔らかな尻が腿にあたった瞬間、セレナの全身がぎょっとしたように強ばったので、エミリオは焦った。
「やはりいやだったか?」
「いえ……膝に乗せられるとは思わなかったので……」
「ああ、驚かせてすまない……」
謝罪しつつ、大したことでなくて安堵したエミリオはそこで息を詰める。セレナの肩越しに、男にはない胸の膨らみが見えたのだ。しかも上からのこの角度は、そのふくよかさや形を実にじっくりと堪能できてしまう。
つい手を伸ばしたくなって、こらえた。初夜では胸を愛撫しているときに泣かせてしまったから、ここは慎重に慎重を期すべきだ。エミリオはここまでと同様にまずお伺いを立てた。
「……胸に触れてもいいだろうか」
「はい……」
セレナの許可を得たエミリオは、それでも細心の注意を払い、ガラス細工を扱うような手つきで乳房に触れる。両手で包み込んだそれは、張りがありつつも柔らかく、つい揉みしだきたくなるような感触だった。
「はぅ……」
乳房を覆った手にわずかながら力を入れると、表情を隠すように俯いたセレナは口に拳を当てて悩ましげなため息をついた。もじ、と膝の上で脚と脚を擦り合わせるような動きをかすかに感じ取り、エミリオもまた熱い息を吐く。
「……どうだ? いやではないか?」
「はい。いやではない、です……」
「なら、次は……先端に触れる。いいか?」
「……は、い……」
答えるセレナの声はやや上擦っていた。直接的な表現は避けたものの、性感の集中する場所だということを意識してしまったのだろう。
そこで彼女がなにか言いたげにエミリオの腕のあたりの衣服をわずかに引く。
「ん? どうした?」
エミリオが動きを止めると、セレナがもじもじとしながらこちらを仰ぎ見た。羞恥に潤んだ瞳がとても躊躇いがちに、けれど確かにエミリオを捉える。
「あの……一つ一つ聞いていただかなくても、大丈夫、ですから。全部、いやじゃないです。恥ずかしいだけなんです……前のときもそうで……泣いてしまって……でも、エミリオ様になら、なにをされても、いいです……」
エミリオは己の頭にぶわっと血が上るのを感じた。この状況でなにをされてもいい、なんて男にとってはとんでもない殺し文句だ。だが、それを額面どおりに受け止めて身勝手な夫だと思われることは絶対にしたくなかった。
「……っ、してほしいことや、されたくないことがあったら言ってくれ……なるべく、優しくしたい」
狼狽えながらも心からの思いを告げると、その切実さは伝わったのだろう、セレナはこくこくと首を縦に振る。それから遠慮がちに申し出た。
「だったら、その……一つだけ……慣れてないので、ひどい醜態をさらしてしまうかもしれませんが、その……あ、呆れないで……」
かあぁ、とすでに真っ赤な顔をさらに上気させつつそんなことを言うものだから、エミリオは可愛すぎる妻を抱き締めてしまう。
「――呆れるものか」
「……っ、エミリオ様……?」
「あなたは、ただそこにいるだけで、完璧だ」
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二人の関係が素敵…
エミリオの優しさに包まれていくセレナが素晴らしいです!
あと国王くんはもう少し空気読もうな()
読了&ご感想をありがとうございます!
二人のじれじれな関係に力を入れて書いているので、そこをお褒めいただき嬉しいです😆
なかなか更新できずにおりますが、たいへん励みになりました୧( ⸝⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝)୨
むつき紫乃先生へ
こんばんは(*´ω`*)
更新ありがとうございます♡♡♡
すごく嬉しいです(*´∀`*)
更新嬉しいですが、おかしな天気が続いていますので、くれぐれも先生どうか無理されないようにしてくださいm(_ _)m
こんばんは
二度目の感想をありがとうございます
長らく更新をお待たせして申し訳ありません
そしてこんなに更新の間が空いてしまったのに待っていてくださったことが本当に嬉しいです( ;ᵕ; )
ありがとうございます
また優しいお気遣いもありがとうございます
ちょっとまだ創作リハビリ中なこともあり、また更新がストップすることもあると思いますが、気長に本作にお付き合いいただけたら幸いです😌💕
むつき紫乃先生ヘ
エミリオとセレナのイチャイチャ面白いです(*^^*)
更新楽しみです♡♡♡
季節の変わり目は体調崩しやすいので気を付けてくださいねm(_ _)m
これからも応援しています☆
感想ありがとうございます!
作品楽しんでいただけててとっても嬉しいです*ˊᵕˋ*
次の更新まで少しあいてしまいそうなのですが、必ず書きますので、しばらくお時間いただけると幸いです
感想いただけてとっても励みになりました୧( ⸝⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝)୨
お気遣いもありがとうございます♡