金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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出会い ルイ視点1

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ルイ視点の話です。

※アルファポリス限定話です。

ーーーーー


俺は王都で育った。

元々は王都の商業地区で、靴屋を営む家に生まれたのだが、父親は戦争に行ったきり帰ってこなくなり、母親は酒浸りになり気が付いたら帰ってこなくなっていた。

噂では借金が嵩み、娼婦になったのだという。

俺が売られなかったのは母親としての情が少しでも残っていたからなのだろうか。

最後に何か言っていたような気がするがもう思い出すことも出来ない。

もう顔も思い出せない母親がどうしているのか、知りたいとも思わない俺は薄情だろうか。


一人になった俺は、スラムで生活を余儀なくされ、臭い、ゴミのような物を口に運んでは吐き出す毎日。

上流階級の奴らは、俺みたいな子どもを見ると可哀想にと顔をしかめるが、助けてくれる人なんていなかった。

盗みに失敗して殴られて、打ち捨てられることもあった。

何とか逃げることは出来たが、奴隷商人に捕まり、売られそうになることもあった。

絶望なんてする時間はない。

生きるために必死だった。


地獄のような日々が当たり前になっていた頃、その人は現れた。


「このクソガキが!今日こそ殺してやる!」


パンを盗もうとして失敗し、捕まった俺は、包丁を持ち出す店主を見て、今度こそ殺されると覚悟した。

奥からその男の妻だろうか、女が怯えたようにこちらを見ていた。助けてくれる様子はない。

俺のようなスラムのゴミが殺された所で、衛兵は何もしないだろう。

死体がゴミのように転がされ、蝿の餌になるだけだ。



男が包丁を振りかぶる。

思わず目を瞑った。

痛いだろうか。
苦しくないだろうか。
やっとこのクソみたいな人生が終わる。

しかし、いくら待っても痛みは襲ってこない。


フワリ、と靡く金色。

ローブを被った女が一人、店主の前に飛び出して手で包丁を掴み止めていた。金色はローブから溢れだした髪の毛だった。


血がポタポタと床に垂れている。


「何だ、お前?どけ!」


店主が女をどかそうとしているが、どういう仕掛けなのか、びくともしていない。


「男に力負けしないなんて、魔力持ちか。」

「生意気な女だな。」


周囲の人たちがこそこそと話し始めた。
さっきまでは我関せずだったのに、どういうわけか今は人だかりが出来ていた。

魔力を持った人は少ない。
そういう人は、魔法使い、魔力持ちと呼ばれ、特別な力を使うことが出来るのだと、昔誰かに聞いた気がする。

貴族様は魔力を持つ人が多いが、平民には少ない。

俺も見たのは生まれて初めてだった。


「何も殺そうとすることは無いでしょう?」


女が口を開く。鈴が転がるような綺麗な声で、まだ若い少女のような声だった。


「うるせえ!お前には関係ないだろ。それとも何か?そいつがダメにした分のパンの料金を代わりに払ってくれんのか?」


女は頷くと、懐から金貨を投げて転がした。

店主が慌てて包丁から手を離し、金貨を拾いに行く。

その隙にと、女が俺の手を引いて野次馬を掻き分けて走った。

俺は苦しいのに、何故だか女は息切れなど一切していない様子で、走り続けている。

かなり離れた路地に入ると、女がこちらを振り向いた。

フワリとローブが落ちて女の顔が見えた。

見たこともないくらい、美しい女の人がそこにはいた。

無表情に見つめてくる瞳に、汚い格好の自分が映っているのが何だか妙に恥ずかしい。

声が若いと思っていたが、まだ少女と言っても過言ではないくらいの年齢に見えた。


「大丈夫?」


優しく触れられ、安心しそうになる。女の傷はいつの間にか消えていた。

明らかに怪しい女だ。こんな綺麗な、貴族様みたいな人が俺なんかを助けてくれる筈がない。しかも金貨をパンの代金に出すなんて、明らかにおかしい。

助けてくれたのは事実なので、お礼を言って早く帰ろう。


「ここ、怪我してる。」


女が小さくボソリ、と何事かを呟くと手を翳した辺りが輝いて、店主に殴られて出来た痣が消えた。

慣れない感覚に、背中がもぞもぞした。


「助かった。じゃあ、これで。」


スラムに戻ろう。今日は飯にありつけそうにない。早く寝てしまおう。

しかし、女は俺の首根っこを捕まえて離さない。



「行くところあるの?親はいないみたいだけど?」



まだ小さかった俺は、自分より大きいその女を見上げた。


「父さんは多分死んだ。母さんは知らない。」


伝えると、はぁ、と溜め息を吐かれる。


「ご飯、食べさせてあげる。付いてきなさい。」


そのまま無理矢理引っ張られる。

抵抗は出来なかった。



王都の中央部にある店に連れていかれ、食え食えと肉やパンを目の前にズラリと並べられた。

久々のまともな食事に思わず手が伸びる。

食ったから言うことを聞けみたいなやつだったら、どうしようか。

でもこんな美味しい食事が毎日食べられるのならスラムにいるより良いよな。

食欲に負けた俺は、取り敢えず飯を食べてからこの状況について考えることにした。




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