金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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出会い ルイ視点2

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名前をリルと名乗ったその人は、一緒に王都を出てある村に来てほしいと言った。

王都育ちの俺にとって、国境付近の村なんて退屈すぎて仕方ないと思ったけど、そこでは衣食住に困らないと聞いて思わず頷いた。

開拓を手伝えと言われて酷い扱いを受けるかもしれないが、別にそれならそれで逃げれば良い。

逃げ足の早さだけは自信のあった俺は、こうして共に村に行くことにした。


「転移」


初めての転移魔法にかなり驚いた。
転移魔法というものがあるらしい、それはとても便利らしいと聞いていたが、覚えるのにかなりの時間と魔力が必要で、貴族様でも滅多に使えるものではない、使用レベルにある魔法使いは、少ないと噂で聞いていたのに。

かなりの距離を転移したというのに、何事もないかのようにしている彼女に驚いた。



「リル先生~」


村に入ると頬にそばかすを浮かべた赤毛の少年が、更に小さい子と遊んでいたのに駆け寄ってきた。


「見て見て!僕、火属性魔法が使えるようになったんだ!......炎の精霊よ!」


ボワッと目の前で点火して見せる少年に驚いた。見たところ貴族では無さそうだし、年も俺と変わらなそうなのに、魔法が使えるなんて。


「すごいじゃない。その調子で励みなさい。後で火属性の攻撃魔法、教えてあげるから。」

「わーい!!.......それで先生、その子は?」


俺を見て訊いた。


「あー、この子ね。新しく村に住むことになったから、仲良くしなさい。えーと、名前なんだっけ?」


「......ルイ。」


食べてる間に名乗ったような気もするが、もう一度名乗る。


「ルイ!僕はランダ。二ヶ月前に先生に拾われてこの村に来たんだ。よろしくね!」


おっとりとしたランダに毒気を抜かれつつ、差し出された手を握り握手をする。

気を許しそうになるが、こいつもぐるになって俺を騙そうとしているのかも知れない。
世の中そんな上手い話があるわけ無いのは子供でも分かる。

俺は警戒をしながら村で過ごした。




リル、という女の人は毎日いる訳じゃないようだ。たまに来てはすぐにいなくなる。

俺は、村長だという婆さんの娘さんがやってる孤児院に預けられた。

孤児院はあの人が寄付をして作ったらしく、このときはまだランダと俺しかいなかった。

他の村の子供と同じように学校に通わせて貰い、字の読み書き、算術、武術を叩き込まれる。

魔力覚醒をしたのを機に、あの人がいる時には、魔法の授業も受けるようになったが、才能は余り無くランダほど魔法を使えるようにはならなかった。

服の中に蛙を仕込んでみたり、行先に落とし穴を作ってみたり、飲み物の中に唐辛子を入れてみたり、あの人が来るとランダを誘っては悪戯をした。
その時に、いつもポーカーフェイスのあの人が少し困ったような顔をするのを見たかったのかもしれない。
ランダは人が良いから付き合ってくれただけで、いつも「やめようよ~」と言っていたが、結局一緒に怒られていた。

授業で怒られたのに腹が立って、寝込みなら勝てるだろうと襲ったこともある。

魔法の蔓みたいなので吊るされた挙げ句、そとに放り出されたが。それでも諦めないでいると、魔法でボコボコにされた。治してはくれるが、かなり痛かった。

最初のうちは疑っていたし、腹も立った。

勝手に連れてきたのに面倒を見てくれるわけではないその人に、子供らしい独占欲が働いていた。

拾って来た子どもも増えて、そのうち子供だけじゃなく大人も拾って来るようになると、俺ばかりに構ってはいられないのか、会いに来てくれる数が減った。



夜中にこっそり帰ってきた彼女の寝床に潜り込もうとしたのは、寂しかったからかもしれない。

かなり酔っているようで、足元がふらついていた。大丈夫だろうか、と、心配になりつつ見ているとちゃんとベッドの上に倒れていた。

部屋に入るとかなりお酒臭い。

それと同時に男物の香水の匂いがした。不思議に思うも、余りに無防備な姿に毛布を掛けてやる。



「お父様、お母様.........」



意識はないのだろう。うわ言のようだ。
白磁の肌に、涙がツーと落ちたのを拭う。


忙しいのは知っている。

どんな仕事をしているのかは知らないが、これだけの人数が飢えないでいられるのはこの人のお陰だ。

けれど、両親を呼ぶその声は、彼女の年齢よりも幼く感じた。






涙を拭った手が熱く感じて、心臓が跳ねる。

年上の女なんて、しかもこんな面倒事を背負っていそうな女なんて冗談じゃないと思った。

なのに鼓動は止まってくれない。

恩人にこんな想いを抱くなんて馬鹿みたいだ。俺は、自分の気持ちを自覚して、部屋にいられなくなり逃げ出した。







それから何度も何度も忘れようとした。

「お前」とか「あいつ」というのを辞めて、敬語にしたのもこの頃で、そうすることでこの気持ちを忘れようとしていた。

俺に好意を寄せていそうな女の子は、正直学校に何人もいた。

だけど、どうしても彼女達の気持ちを受け入れる気にはなれなかった。

俺が欲しいのはリル様だけなのだから。









長年、リル様への想いを拗らせていた俺だが、雪祭りの後に取り敢えず気持ちを伝えることが出来た。

いつもの三人は、俺がリル様を好きなことは知っている。

初めは反対していた三人だが、想いを伝えたことを言うと良く頑張ったと誉めてくれた。

サヨに限っては、

「リル様を泣かしたら殺す。」

とドスの利いた声で、脅してきたが。
サヨは完全なるリル様信者なので仕方ない。



リル様、次の春に来ると言っていたな。



愛しい彼女に会えるのが、今から楽しみだ。


それまでに、彼女が少しでも頼ってくれるよう、強くなろうと今日も鍛練を続ける。




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