金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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始まり1

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『戦が始まる。今すぐ来い。』





第二王子の鳥がそう言ったのを聞いたとき、血の気が引いた。


前々からそのような噂を聞いていたし、第二王子からも言われていた。

王都や大きな都市では買い占めなども起きており、その話の確かさも静かに囁かれていた。


村にはネストラ婆様に私から忠告はしてある。


あそこには戦争に動ける成人の男性が少ないから、徴兵は最低限で免れる可能性がある。

しかし、学校で育てていた子ども達や魔法使い達が見付かれば全員軍に強制加入させられる可能性もあり、うまく隠してもらう必要があった。


半年前にアルムブルクに到着したランダ達は蒼蘭で冒険者登録をしている。冒険者は町を魔物から守る役割があるので、そう簡単には徴兵されないと聞く。


きっと大丈夫だ。


アルムブルクと村には後で行こう。

先に第二王子から情報を貰った後で遅くない。



「転移」



急いで転移して、ヨウラドウに向かう。

町の中は戦争の前だからだろうか。慌ただしく重々しい空気に満ちていた。

此処は交易の中心地。

戦になれば真っ先に忙しくなる地のうちの一つだ。


『リリス』として来たわけではないので、城の中に入ることは出来ない。

金色の踊り子はSランクの冒険者だが一般人の範囲を出ておらず、貴族の城には入れないのだ。


書いておいた手紙を転送し、私はいつも使うあばら屋に入る。



「待たせたな。」



暫くすると、第二王子があばら屋に入ってきた。

一応護衛の男を一人連れてきている。視線が合い、軽く目礼される。


彼は王子の古馴染みの一人で、幼い頃から彼に仕えている。公爵令嬢時代の私のことも知っていた。


寡黙な男で忠誠心が高く、決して王子の不利になるようなことはしない。


私が王子の味方でいる限り、彼は私にとっても無害な存在である。第二王子と再会してから今まで彼とも何度か会ったが、一度も私のことを公爵令嬢として扱うこともなければ、正体をばらすようなこともされていない。



「殿下。」



簡単に礼を取る。



「早速本題に入ろうか。ベン、外を警戒しておけ。」



「はっ。」



王子と二人で奥の部屋に入る。

二人でいてもそういう雰囲気になることは無くなっていた。


王子は私のことを臣下の一人として扱うようになっている。私も私で、王子のことを主君として見ている。


主君に誘われれば断ることは無いだろうが、もう誘われることもないだろう。何となく、そんな風に思う。



「伝えた通り、本格的に戦が始まる。帝国から宣戦布告があった。」



はっと息を呑んだ。言葉が出てこない。



「前線を仕切るのは俺だ。国王直々のご指名でな。」



少し皮肉ったような言い方をしているが、その顔には色濃く疲労が出ていた。



「ダルボッド公やティーザー侯は反対しなかったのですか?」



彼の周りには今、私と彼自身で作った味方がいる。ダルボッド公爵、ティーザー侯爵はその筆頭だった。


一年と少し前まで味方のいなかった彼だが、最近では宮廷でも発言権が増している。

第一王子は打って変わって部屋に引きこもることが増えており、私もたまに会うが窶れていっていた。



「反対してくれたが、父上の言だ。覆すには至らなかった。」



「陛下の......。」



国王には昔、公娼として指名された際に会ったことがある。

私の父とは従兄弟ということもあり、雰囲気はかなり似ていたように思う。



「兄上は前線には出れないだろう。グロイスター公は具合が悪いそうだ。」



第一王子が前線に出られないのは分かる。戦闘能力が他の二人に比べて余りにも低すぎるし、あんなのでも現状王位継承権第一位だ。

前線に出して殺されてしまっては王家の存亡の危機だ。


グロイスター公は仮病だろう。



「糞ですね。」



「言葉が悪いぞ。気を付けろ。」



誰かに聞かれでもしたら、今のお前が言えば首が飛ぶ、と小言が続く。



「気を付けますよ。大丈夫です。」



安心してください。と微笑むが、心底疑わしそうな視線を向けられる。


この兄貴分は私のことを何だと思っているのだろう。



「とにかく、まずは様子見だ。最初からお前を前線に連れていくつもりはない。」


は?


「何を言ってるんですか殿下。私も行きますよ。」



手駒は一つでも多い方が良いでしょう?と言えば、「それもそうなのだが。」と渋られてしまう。



「殿下。私は殿下に死なれては困るのです。殿下が反対しても行きますよ。」



元より戦への参加は私の中での決定事項だ。

その為に辛い訓練も耐えてきた。


第二王子は私の復讐の為には絶対に必要な人だ。危険な前線で死なれては今後の方向性が変わってしまう。


一人で第一王子やダルボッド公をどうにか出来るとは思っていない。


第一王子はアホだけどそれは個人の問題であって、依然宮廷では一番大きな派閥だ。

血統というのはそれ程に大きな力を持つ。

第一王子よりもはるかに能力の高い第二王子が上にいけないのもその為だ。




「はあ。分かった。お前は強情だから俺が反対しても勝手に付いてくるのだろう。........それでもお前に何かあれば亡きアドラー公や公爵夫人に顔向けが出来なくなる。」




深い溜め息を吐かれる。何かあればということであれば、現状娼婦をやっていたり冒険者になったことに関して父も母も生きて知れば卒倒しそうなものだが、第二王子的には死なずにいれば良いという考えなのだろうか。



「お前は俺の手駒の中での最高戦力のうちの一人だ。それを忘れるな。」



要は死ぬなということらしい。



「分かりました。」



私も簡単に死ぬつもりはない。



その後、王子が戦場に向かった後などの連絡手段の確認を行い、王子とは解散した。


 


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