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リリスとしての仕事 グロイスター公の場合2
しおりを挟むシャーロット、という名前を聞いて一瞬だけ動きが止まってしまった。
しかし、貴族にはよくある名前だ。母とは関係ないかもしれない。
「…すまない。昔の知り合いに良く似ていて。」
私に似ている…というのでもしかしたらとも思うが、今聞いても答えてくれないだろうなと思う。
「…いいえ。大丈夫です。」
気を取り直してもう一度口付けをする。
いきなりスッと腰に手を回され、驚いて思わず体が跳ねた。
急に積極的になった彼を訝しんで見つめる。
「どうした?」
「何でもありません。」
仕事だと気持ちを切り替える。
あんなに大嫌いなバルド伯爵にでさえ仕事であれば我慢出来るのだ。
心の中のモヤを払うくらい訳ない。
そう自分に言い聞かせる。
早く終わらせてしまおうと彼のものを咥え、手と口を使って大きくしていく。
「っ…。」
声にならない息を吐き出した後、身体を離された。
「どうしました?」
「いや…娼婦であればこういうこともするのか?」
「そうですね。」
たら、と垂れてきた唾液を拭いながら頷く。
遊んだことのない男らしく私の行動に驚いたようだ。彼の奥方は貴族の令嬢だ。
確か、侯爵家のご令嬢だったと記憶している。貴族の令嬢というのは、男性との性交渉で自分から積極的に動いたりはしない。
寧ろ感じることは悪で恥じるべきことで。
ただ相手に任せてじっとしていれば良いと言われて育つ。
私も公爵令嬢だった頃、第二王子との婚約が本格的に進みそうだったときに公爵家に長く仕えるメイドや家庭教師に呼ばれ、そのように教えられた。
そのようなものだと思っていたので娼婦になった頃は驚いたものだ。
それが当たり前だと分かったのかグロイスター公はこちらに身を任せるようにじっとしていた。
たまに小さく声が漏れるのが、可愛らしい。
反応がまるで初心な少年のようだ。
「挿れて、良いでしょうか?」
聞けばコクン、と頷く彼に、深く、深く口付ける。今度は驚いたり嫌がることなく受け入れてくれた。
口付けながら彼に跨ってゆっくり挿入する。
するん、と入り思わず吐息が漏れた。
動き出せば、彼がはあはあと苦しそうな息を漏らす。
「避妊はしておりますので、出したい時に出して良いですよ。」
それはだめだ、と首を振っていた。
「シャーロット……シャル……」
彼は、繰り返しその女性の名前を呼んでいた。
「…すまない。シャル…」
結局私の中に出した後もうわ言のように謝っていた。
落ち着く為だろうか彼にまとわりつく、独特な匂いの香が妙に鼻についた。
その香りが少し気になったのだが、泣きそうなグロイスター公に聞くことはできなかった。
ーーーーー
少し寝たあと、彼が目を覚ました。
「…すまない。」
寝ている間に従者が持ってきたお茶を飲ませ、彼が好きだからと渡された彼からしていた妙に甘い香りの香を焚いた。
「シャーロットは…幼馴染だったんだ。もう随分前に死んでしまったのだが、お前と少し似ていたものだから。」
お茶を少し飲んで咽ながらグロイスター公爵が言った。
軽く背中を叩いてやる。
「ありがとう。」
そう言って微笑む彼は、昔見た美しい人の名残を確かに残していのだった。
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