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ー勇者視点ー2
しおりを挟む俺は幸い、山田ほどダメージは受けなかった。
グロ耐性がある、なんてよく自慢気に言っていた山田だったがそれはグロテスクなゲームや映画は平気というだけであって、実際に起こることへの耐性では無かったようだ。
仕方ない。俺だって吐かないというだけで気分は最悪だ。
星山は一体、どんな修行をしたら平気な顔をして人を殺せるようになったのだろうか。
ーーーーー
「伯爵様がおみえです。」
「勇者様。本日もご機嫌麗しく。」
俺達に対して恭しく振る舞うのは、この国の貴族だというバルド伯爵とかいう小太りのいかにも性格の悪そうな顔をした男だ。
俺達を呼んだ第一王子ーー理想の王子像とはかけ離れた疲れた顔の濃いおっさんの部下だと言う。
王子って年を取っても王子なのだということをそこで初めて知った。
てっきり大人になったらすぐに王様になるのかと思っていたが、前の王が生きているとそういうわけにもいかないようだ。
第一王子は俺達を呼んだ時に大量の魔力を使ったとかで臥せっていることが増えたらしい。戦場に来てからも変わらずで、俺たちの所に小まめにくる偉そうな人間と言えば、このバルド伯爵だった。
あとはたまにグロイスター公爵?というおじさんなのかおばさんなのか見た目に分かりにくい人も来る。王子を差し置いて総司令官なのだから、あのおっさんはすごい人なのだろう。
ただ、魔王軍に襲撃された時、混乱する俺達を心配して助けに来てくれたのは第一王子だけだった。
バルド伯爵は口だけは達者だが、あまり信用の出来ない人物のように俺には見えた。
「勇者様がいるというだけで、今日も軍隊の士気は高くーーーー」
小太りのおっさんが何かをつらつらと話している。
隣にいる山田も全く聞いてない様子だ。
「その功績によって、こしょうを陛下より貸し与えられました。」
そう言われたが、何のことか分からず、
「はあ。」
と生返事をしてしまう。
こしょうが何とかって全然意味が分からない。夕食の味付けでも変わるのだろうか。
「本日の夜、こちらに参りますので、お楽しみください。」
バルド伯爵のテカテカとした顔と薄気味悪い笑顔がが気になった。
「なぁ、結城。こしょうってそんなに良いものなのか?王様がご褒美にくれるくらい?てか俺ら何もしてないけど何の褒美?」
「…昔のヨーロッパでは金と同じくらいの価値があったなんて聞いたことはあるけど、この世界でも同じなのかもな。」
まあ良いけどそれなら金が良いなーなんて言い合って笑った。
その日の夜、予想外の来訪者に2人で驚くことになるのだが……。
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