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ほんっと、貴族って馬鹿
「ねえ、リリス。私もう帰って良いかしら。」
ルーナが顔をしかめて言った。
数日だが戦場を離れている間に、戦況が変わったのだろうか。怪我人が多いように見えた。ルーナにはそれが耐えきれない様子で、おもむろに顔を背けている。
「調子良いんじゃ無かったの?」
「今のところまともに戦えてるのは第二王子軍くらいでしょうね。他の派閥の方はここ何年…下手すると何十年も戦なんてしたことないですから。」
「ほんっと、貴族って馬鹿。」
うんざりしたように吐き出した言葉にそのまま同意するわけにもいかず、困ってしまう。こんな貴族の多い場所で貴族を批判して許されるのは彼女のキャラクター所以だろう。
私が言うわけにもいかないことはルーナも分かっているのか、同意がなくても気にした様子はなかった。
ルーナを連れてきたことや、グロイスター公の指示でリリスとして動くことは第二王子には伝えてあり、了承済だ。
ひとまずグロイスター公の元へと向かう。
仮面を付けていないと注目が集まり非常に居心地が悪い。私が美人なのは知ってるからそんなに見ないで欲しいなと思いつつ、歩を進めた。
ざわざわと噂話のようなものが聞こえる。
売女がと吐き捨てるような人もいて、ルーナが睨みつけていたがここで相手にしても良いことはない。
何てこと無いように振る舞うのが一番だ。
「公爵様。リリスが戻りました。」
グロイスター公爵の天幕へと向かい、声を掛ける。
ルーナを見て顔を赤くした衛兵が仕事をしなかったためだ。勝手に声を掛けても止められることは無かった。
「入ってこい。」
そう言われて中に入ると、いつもの煙に包まれた公爵様がほんの少し…いやかなりだらしのない格好をしながら、机の上の地図を見ていた。
ルーナが煙を吸い込んだのか少し咳き込んだ。
「ルーナか。ノルンの方が来ると思っていたが。」
「私だって来たくはなかったわ。」
相手が高貴な方だと分かってはいるだろうが、彼女はこの態度を変えることは無いようだ。
彼女の言い分通りなら、彼は彼女の兄なのだからということなのだろうか。
ルーナらしいといえばらしいが、グロイスター公爵が気分を害していなければ良いのだけど、とちらりと見ると彼は面白いものを見るようにしていた。
「成程。これなら勇者様も気兼ねなく振る舞えるだろう。リリス、良くやった。」
「お褒めいただき光栄です。」
「早速だが今夜、勇者様の所へ行って貰えるだろうか。少し前にラダも来たがあれは今日は都合が悪いらしくてな。」
「分かったわ。」
「承知致しました。」
ルーナはふいっと顔を背けながら、私は深々と頭を下げながら言ったのだった。
ーーーーーー
天幕を出ると、ふう、とルーナが息を吐いた。
「…リリス。あなた…あの男のことが気に入ってるの?」
気に入ってるという言葉選びが彼女らしいなと思った。
「いいえ。嫌いではありませんが…。」
「気を付けなさい。あれは…あなたには荷が重いかも知れないわ。」
荷が重い、と聞いて首を傾げる。
「どうかしました?」
「そんな予感がするだけよ。それにあの香は…。」
彼女が続けた言葉に私は息を呑んだ。
「それは本当ですか?」
「ええ。だからあなたも気を付けなさい。」
その言葉に私は頷いたのだった。
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