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「ちょっ、やだっ、絶対嫌!」
「そんなに暴れないでよ。怖くないから」
「そういう問題じゃないわ!」
ソファで私のことを押し倒しているのは婚約者のフェリックスだ。光がふんだんに入る温室で眩しく輝く金髪を後ろに撫でつけ、上品な衣服を身に着けた、クリューゲル侯爵家の長男。3つ年上で、半年前に婚約した相手である。
クリューゲル侯爵家と私のディーツ侯爵家は、前当主の頃はいがみ合うこともあったと聞くが、現当主に代わってからは関係が大変良好だ。そのため、子どもの頃からよくお互いの家を行き来していて、フェリックスとはもう10年以上の付き合いになる。家格も釣り合っているし、年回りも近く、親たちは最初から結婚させるつもりだったのだろう。
フェリックスとは気心が知れているし、彼の性格も、努力して得た能力も、好ましいと思っている。ちょっと黒いところも持っているけれど、それを私の前でだけ出すのは信頼関係があるからだと思うし、基本的には紳士的で優しい。さらに、その端正な外見は大変好みだったから、婚約の話が持ち上がった時、素直に受け入れた。
ただ、あまりに幼い頃から友達として接してきたせいで、どれだけ美しくても幼馴染としてしか見ていなかった。なのですぐに男性として、ひいては性的な対象として見るのは難しいかもしれない。それでも、知らない男に嫁がされるよりずっといい。穏やかな友人同士のような関係を築けるのではないか。
その時は、フェリックスも同じような気持ちだと考えていたのだ。私もさまざまな努力を重ねてその名に恥じない淑女になっていると思うし、性格も合っているはずだけれど、外見はフェリックスに及ばない、上の下程度だし、と。
でも、それは思い違いだったようで、婚約した途端に、フェリックスは距離を詰めてきた。
「ずっと前から、早く結婚したいと思ってたんだ。好きだよ、ラウラ」
私の手に口づけて、綺麗な翠色の瞳を輝かせてそう言ったフェリックスはとても美しく情熱的で、私としても満更ではない気持ちになり、はじめてのキスを受け入れた。
会う度に深く、長くなるキス。「可愛い」「綺麗だ」と囁く甘い声。やがて胸元に手を入れられたり、スカートの中で太腿をまさぐられたりするようになった。嫌がることは一旦止めてくれたけれど、次か、次の次に会った時にはうまく気を逸らされ、気づかぬうちに受け入れさせらてしまっていた。
どんどん流されていることに危機感を覚えながらも、いつの間にかそれらが当たり前になり、拒絶することなど考えられなくなっていた。最近ではフェリックスに与えられるものは気持ちいいということを身体が覚えてしまって、すぐに力が抜けてしまい、下着の中まで彼の手の侵入を許すようになっている。
「ねぇ、濡れてるよ?」「ラウラはすぐ濡れちゃうね?」
このところそんなことをよく言われる。流されすぎてはいけないと思うのだけど、巧みに距離を詰められ、優しいキスや愛撫をされてしまえば、すぐに主導権は彼の手に渡ってしまうのだ。
この社会では、婚約者であれば婚前交渉もよくあることで、妊娠さえしなければ、あるいは、婚前交渉したのに婚約破棄されることがなければ、まあ問題はない。そのことは私もある程度は受け入れている。
でも、これは嫌だ。
「そんなに暴れないでよ。怖くないから」
「そういう問題じゃないわ!」
ソファで私のことを押し倒しているのは婚約者のフェリックスだ。光がふんだんに入る温室で眩しく輝く金髪を後ろに撫でつけ、上品な衣服を身に着けた、クリューゲル侯爵家の長男。3つ年上で、半年前に婚約した相手である。
クリューゲル侯爵家と私のディーツ侯爵家は、前当主の頃はいがみ合うこともあったと聞くが、現当主に代わってからは関係が大変良好だ。そのため、子どもの頃からよくお互いの家を行き来していて、フェリックスとはもう10年以上の付き合いになる。家格も釣り合っているし、年回りも近く、親たちは最初から結婚させるつもりだったのだろう。
フェリックスとは気心が知れているし、彼の性格も、努力して得た能力も、好ましいと思っている。ちょっと黒いところも持っているけれど、それを私の前でだけ出すのは信頼関係があるからだと思うし、基本的には紳士的で優しい。さらに、その端正な外見は大変好みだったから、婚約の話が持ち上がった時、素直に受け入れた。
ただ、あまりに幼い頃から友達として接してきたせいで、どれだけ美しくても幼馴染としてしか見ていなかった。なのですぐに男性として、ひいては性的な対象として見るのは難しいかもしれない。それでも、知らない男に嫁がされるよりずっといい。穏やかな友人同士のような関係を築けるのではないか。
その時は、フェリックスも同じような気持ちだと考えていたのだ。私もさまざまな努力を重ねてその名に恥じない淑女になっていると思うし、性格も合っているはずだけれど、外見はフェリックスに及ばない、上の下程度だし、と。
でも、それは思い違いだったようで、婚約した途端に、フェリックスは距離を詰めてきた。
「ずっと前から、早く結婚したいと思ってたんだ。好きだよ、ラウラ」
私の手に口づけて、綺麗な翠色の瞳を輝かせてそう言ったフェリックスはとても美しく情熱的で、私としても満更ではない気持ちになり、はじめてのキスを受け入れた。
会う度に深く、長くなるキス。「可愛い」「綺麗だ」と囁く甘い声。やがて胸元に手を入れられたり、スカートの中で太腿をまさぐられたりするようになった。嫌がることは一旦止めてくれたけれど、次か、次の次に会った時にはうまく気を逸らされ、気づかぬうちに受け入れさせらてしまっていた。
どんどん流されていることに危機感を覚えながらも、いつの間にかそれらが当たり前になり、拒絶することなど考えられなくなっていた。最近ではフェリックスに与えられるものは気持ちいいということを身体が覚えてしまって、すぐに力が抜けてしまい、下着の中まで彼の手の侵入を許すようになっている。
「ねぇ、濡れてるよ?」「ラウラはすぐ濡れちゃうね?」
このところそんなことをよく言われる。流されすぎてはいけないと思うのだけど、巧みに距離を詰められ、優しいキスや愛撫をされてしまえば、すぐに主導権は彼の手に渡ってしまうのだ。
この社会では、婚約者であれば婚前交渉もよくあることで、妊娠さえしなければ、あるいは、婚前交渉したのに婚約破棄されることがなければ、まあ問題はない。そのことは私もある程度は受け入れている。
でも、これは嫌だ。
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