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第14話 迷宮攻略
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迷宮に入って数時間。
最高難易度と聞いていた迷宮の魔物は、出てくる物全てが雑魚過ぎて拍子抜けしてしまった。
目がある魔物は遭遇した瞬間に私の魔力として消えていき、目が無い奴はレインが細切れにして駆除していった。
……と言っても大体の魔物は目があるので、私の魔力も充分なほど貯まり、本来私が持っている魔力の百倍も貯めることが出来た。
魔眼を使うにはあり得ないほどの魔力を消費するので、魔力はあればあるほどありがたい。
そしてやって来ました二七層。
「いやぁああああ!? のぉおおおおお!! フ○ック、ファッ○、ファ○ク、○ァック!」
ここの魔物は最悪だった。
まず目が無いのが多い。目もある奴はいたけど、私が直視出来ない。
……何故って? キモいからだよ!
次に脚がいっぱい付いている。動くたびにカサカサという不気味な音が、洞窟型の二七層に響き渡る。
人間で言うところの肌は甲殻で覆われていて、そこだけは最高難易度の迷宮にいる魔物と言える硬さだった。そこら辺の剣では、剣のほうが折れてしまうだろう。
レインが爪で魔物を切るたび、緑色の液体が周囲に飛び散る。しかも、その液体が壁に付くとジュッという音がして溶けてしまう。
なんという近接殺しなのでしょう。
壁が溶けるとか余裕で鎧も溶けるわ!
……そろそろお気づきだろう。というかこんなにヒント言っているのにわからないとか意味わからん。
そう、二七層に出てくる魔物は──虫だった。
しかもデカい。人間の私よりも大きくてこんなのが迷宮の外に出たら人類簡単に滅ぶ。けど、迷宮の魔物が外に出ることはない。私たちには見えない結界が入り口に張ってあるようで、迷宮の魔物は迷宮内でしか行動できないらしい。それが唯一の救いだよ、ほんと。
……ってことで、冒頭で私が悲鳴をあげていた理由はこれです。マジで虫はアカンて。キシャアッとか威嚇された時には気持ち悪すぎて本気で吐くかと思った。
ごめんなさい。実際に吐きました。
「レインッ! 無理、死ぬ、ある意味私死んじゃうって!!」
私は必死にレインの腰にしがみついて泣き喚く。本当に情けない主人だけど許して。虫は昔から、それこそ前世にいた頃の虫でもダメだった。見た瞬間、全身に鳥肌が立つレベルで嫌いなのに、この大きさじゃ見ただけで殺されるって。
逆になんでレインは平気なの? 竜族……今は悪魔になったんだっけ。まあ、元竜族には全部関係なく雑魚として見えるの?
元竜族やっべぇな。(自己解決)
「落ち着いてください。こんなのただ見た目が気持ち悪いだけで、雑魚なのに変わりありません」
──あ、気持ち悪いとは思っているのね。
そういえば先程からレインの攻撃は爪の斬撃を飛ばしているだけだ。
爪の斬撃を飛ばすのも充分凄いけど、直接殴って殺そうとはしていない。
虫から飛び散る液体に触りたくないだけなのかもしれないけど、やっぱりレインも女の子だとわかって一安心。
「だからセリア様は安心して私に任せてください」
私を安心させるために笑顔で振り向いたレインの頭には、爪の攻撃で飛んできたのであろう千切れた虫の脚が…………
「ピャ──」
「セリア様? って、セリア様!? セリア様~~!!」
声にならない悲鳴をあげた私は、レインの慌てたような声を聞きながら意識は遠ざかっていった。
◆◇◆
私が目を覚ましたのは、三十層のボス部屋だった。
ボスはレインが叩き潰した跡が残っていた。それは台座のような場所にあったので、あり得ない速さの一撃で決着したと思える。「フハハッ、ここまでよく来──」くらいで殺されたのだろう。
その時は形無きボスが可愛そうに思えてしまった。
そして虫たちのせいで貯まりに貯まったストレスが爆発して一気に各層を突破し、迷宮主がいるであろう最終階層、七十層に到着した。
「ふふっ……くふふっ…………」
私は笑いが止まらなかった。
ここまで誰かに復讐するのが楽しみだと思ったことはない。
とりあえず二七層の虫地獄を作ったことを後悔させてやる。それからあんな鬼畜層を作ろうと思った経緯を話させて、この世に生まれたことを根っから後悔させてやる。
後悔させて後悔させて後悔させまくって、最後に「私なんかが生まれてきてしまって申し訳ございません」と土下座させてやる。
んで、迷宮を奪ってやる。
「目がいつもより怖いです」
「魔眼のせいでしょ」
「全てを魔眼のせいにするのもどうかと思いますが……」
「うるさいよレイン。もう撫で撫でしてあげな──」
「今までの言葉を撤回させていただきます! 全て魔眼が悪いです!」
「撤回早っ!」
レインは腕をぶんぶん回して気合を入れている。私のことになるとキャラ変わりすぎだろ。
普通の人に対してはツンツンキャラ。
私に対してはデレデレのデレンデレン。
……うん。めっちゃ可愛いからこのままでいいや。
なんかこの頃、レインを可愛いとしか言ってない気がするけど気にしたら負けだよね。私は真実しか言わない子だからね。
目を閉じて頷き、無理矢理自分を肯定する。
「では、セリア様。行きましょうか」
「うん。…………ぇ?」
未だに目を閉じたままうんうんやっていると、ボカーンッ! という耳がつんざく破壊音がすぐ近くから鳴った。ついでの爆風で私の髪が荒々しくなびく。
犯人は誰もが予想したであろうレインで、拳を前に突き出していることから、迷宮主の部屋前の豪華な扉をぶん殴って破壊したと思われる。
──思われるじゃねぇよ何してんだよ、うちの子は。
人様の扉を殴って壊すとかお茶目か?
しかも扉って言っても一応ここって迷宮だからね。迷宮を貫いて近道させないために、迷宮内部の物は破壊出来ないようになっているって聞いたんだけど、そんな法則すらガン無視しちゃうのね。
ご主人様ビックリだわ。
……うん、でも壊しちゃったものは仕方ない。
これも運が悪かったと迷宮主に諦めて貰うとして、その奴はどこにいるんだろう。
「こんにちはー」
部屋の中を見る。
レインのパンチは扉を一直線に飛ばして、一番奥にある何かを粉々にしていた。
近寄って確認したら、迷宮主は扉の下敷きにされてピクピクと痙攣していた。微かに体の一部が粒子化し始めているので長くは持たないだろう。
「南無三」
静かに合掌する。
手を前に突き出して何かを訴えていた迷宮主は、私の声を聞いて力無く崩れさった。
「結果オーライってことにしておこうか」
「……そうですね。何か申し訳ないことをしたみたいですが、我らには関係ないですよね」
最後まで迷宮主の姿を見ることはなかったけど、二七層の復讐は叶ったということで内心万歳しておく。
粉々になった物は迷宮主が座っていた椅子らしく、私達をボス的な感覚で迎えようとしていたところに扉が飛んできて回避出来ずに死亡。
なんて悲しい最後だ。
念の為もう一度、合掌。
もう悲しい奴のことは記憶から忘れ去って迷宮の核を探し始める。
だけど、流石に迷宮で一番大事な物だからいくら探しても見つからない。どこかに隠し扉とかあるのかも。
思ったより手こずったので手っ取り早く魔眼で探すことにしよう。
千里眼は何もかも見通してしまう。壁だって透視して、その奥を見ることが出来る。
…………あった。
ある場所から細い通路が出来ていて、その奥に丸い形をした物が置かれていた。もの凄い魔力を感じるから、あれが核で間違いないだろう。
「レイン。あそこの壁、軽くでいいから壊して」
「……? わかりました」
私が指定した場所に歩み寄り、デコピンで壁を壊す。デコピンですら分厚い壁を壊すほどの破壊力があるとか……最早何も言うまい。
「これは……隠し通路ですか?」
「うん。この先に核があるっぽいね」
通路を突き進むと青い光を放って存在感を激しく主張している物体があった。
「これが核か。凄い魔力量だね」
「迷宮主がコツコツと貯めていたのでしょうか。最高難易度を誇っているだけのことはあります」
その最高難易度を楽勝で進んじゃったのですが、迷宮主もあっさり死んだし、魔眼とレイン様々ですよ。
「じゃあこれを貰おうか。──支配」
魔眼は無機物にだけは目とか関係なく能力を行使出来る。
それは核も同じで、青く光っていた物は私の魔眼と同じ黄金色に光り始めて、支配が完了したのがわかる。
【マスター権限が『セリア・アレース』に移り変わりました】
こうして私は、迷宮主になった。
最高難易度と聞いていた迷宮の魔物は、出てくる物全てが雑魚過ぎて拍子抜けしてしまった。
目がある魔物は遭遇した瞬間に私の魔力として消えていき、目が無い奴はレインが細切れにして駆除していった。
……と言っても大体の魔物は目があるので、私の魔力も充分なほど貯まり、本来私が持っている魔力の百倍も貯めることが出来た。
魔眼を使うにはあり得ないほどの魔力を消費するので、魔力はあればあるほどありがたい。
そしてやって来ました二七層。
「いやぁああああ!? のぉおおおおお!! フ○ック、ファッ○、ファ○ク、○ァック!」
ここの魔物は最悪だった。
まず目が無いのが多い。目もある奴はいたけど、私が直視出来ない。
……何故って? キモいからだよ!
次に脚がいっぱい付いている。動くたびにカサカサという不気味な音が、洞窟型の二七層に響き渡る。
人間で言うところの肌は甲殻で覆われていて、そこだけは最高難易度の迷宮にいる魔物と言える硬さだった。そこら辺の剣では、剣のほうが折れてしまうだろう。
レインが爪で魔物を切るたび、緑色の液体が周囲に飛び散る。しかも、その液体が壁に付くとジュッという音がして溶けてしまう。
なんという近接殺しなのでしょう。
壁が溶けるとか余裕で鎧も溶けるわ!
……そろそろお気づきだろう。というかこんなにヒント言っているのにわからないとか意味わからん。
そう、二七層に出てくる魔物は──虫だった。
しかもデカい。人間の私よりも大きくてこんなのが迷宮の外に出たら人類簡単に滅ぶ。けど、迷宮の魔物が外に出ることはない。私たちには見えない結界が入り口に張ってあるようで、迷宮の魔物は迷宮内でしか行動できないらしい。それが唯一の救いだよ、ほんと。
……ってことで、冒頭で私が悲鳴をあげていた理由はこれです。マジで虫はアカンて。キシャアッとか威嚇された時には気持ち悪すぎて本気で吐くかと思った。
ごめんなさい。実際に吐きました。
「レインッ! 無理、死ぬ、ある意味私死んじゃうって!!」
私は必死にレインの腰にしがみついて泣き喚く。本当に情けない主人だけど許して。虫は昔から、それこそ前世にいた頃の虫でもダメだった。見た瞬間、全身に鳥肌が立つレベルで嫌いなのに、この大きさじゃ見ただけで殺されるって。
逆になんでレインは平気なの? 竜族……今は悪魔になったんだっけ。まあ、元竜族には全部関係なく雑魚として見えるの?
元竜族やっべぇな。(自己解決)
「落ち着いてください。こんなのただ見た目が気持ち悪いだけで、雑魚なのに変わりありません」
──あ、気持ち悪いとは思っているのね。
そういえば先程からレインの攻撃は爪の斬撃を飛ばしているだけだ。
爪の斬撃を飛ばすのも充分凄いけど、直接殴って殺そうとはしていない。
虫から飛び散る液体に触りたくないだけなのかもしれないけど、やっぱりレインも女の子だとわかって一安心。
「だからセリア様は安心して私に任せてください」
私を安心させるために笑顔で振り向いたレインの頭には、爪の攻撃で飛んできたのであろう千切れた虫の脚が…………
「ピャ──」
「セリア様? って、セリア様!? セリア様~~!!」
声にならない悲鳴をあげた私は、レインの慌てたような声を聞きながら意識は遠ざかっていった。
◆◇◆
私が目を覚ましたのは、三十層のボス部屋だった。
ボスはレインが叩き潰した跡が残っていた。それは台座のような場所にあったので、あり得ない速さの一撃で決着したと思える。「フハハッ、ここまでよく来──」くらいで殺されたのだろう。
その時は形無きボスが可愛そうに思えてしまった。
そして虫たちのせいで貯まりに貯まったストレスが爆発して一気に各層を突破し、迷宮主がいるであろう最終階層、七十層に到着した。
「ふふっ……くふふっ…………」
私は笑いが止まらなかった。
ここまで誰かに復讐するのが楽しみだと思ったことはない。
とりあえず二七層の虫地獄を作ったことを後悔させてやる。それからあんな鬼畜層を作ろうと思った経緯を話させて、この世に生まれたことを根っから後悔させてやる。
後悔させて後悔させて後悔させまくって、最後に「私なんかが生まれてきてしまって申し訳ございません」と土下座させてやる。
んで、迷宮を奪ってやる。
「目がいつもより怖いです」
「魔眼のせいでしょ」
「全てを魔眼のせいにするのもどうかと思いますが……」
「うるさいよレイン。もう撫で撫でしてあげな──」
「今までの言葉を撤回させていただきます! 全て魔眼が悪いです!」
「撤回早っ!」
レインは腕をぶんぶん回して気合を入れている。私のことになるとキャラ変わりすぎだろ。
普通の人に対してはツンツンキャラ。
私に対してはデレデレのデレンデレン。
……うん。めっちゃ可愛いからこのままでいいや。
なんかこの頃、レインを可愛いとしか言ってない気がするけど気にしたら負けだよね。私は真実しか言わない子だからね。
目を閉じて頷き、無理矢理自分を肯定する。
「では、セリア様。行きましょうか」
「うん。…………ぇ?」
未だに目を閉じたままうんうんやっていると、ボカーンッ! という耳がつんざく破壊音がすぐ近くから鳴った。ついでの爆風で私の髪が荒々しくなびく。
犯人は誰もが予想したであろうレインで、拳を前に突き出していることから、迷宮主の部屋前の豪華な扉をぶん殴って破壊したと思われる。
──思われるじゃねぇよ何してんだよ、うちの子は。
人様の扉を殴って壊すとかお茶目か?
しかも扉って言っても一応ここって迷宮だからね。迷宮を貫いて近道させないために、迷宮内部の物は破壊出来ないようになっているって聞いたんだけど、そんな法則すらガン無視しちゃうのね。
ご主人様ビックリだわ。
……うん、でも壊しちゃったものは仕方ない。
これも運が悪かったと迷宮主に諦めて貰うとして、その奴はどこにいるんだろう。
「こんにちはー」
部屋の中を見る。
レインのパンチは扉を一直線に飛ばして、一番奥にある何かを粉々にしていた。
近寄って確認したら、迷宮主は扉の下敷きにされてピクピクと痙攣していた。微かに体の一部が粒子化し始めているので長くは持たないだろう。
「南無三」
静かに合掌する。
手を前に突き出して何かを訴えていた迷宮主は、私の声を聞いて力無く崩れさった。
「結果オーライってことにしておこうか」
「……そうですね。何か申し訳ないことをしたみたいですが、我らには関係ないですよね」
最後まで迷宮主の姿を見ることはなかったけど、二七層の復讐は叶ったということで内心万歳しておく。
粉々になった物は迷宮主が座っていた椅子らしく、私達をボス的な感覚で迎えようとしていたところに扉が飛んできて回避出来ずに死亡。
なんて悲しい最後だ。
念の為もう一度、合掌。
もう悲しい奴のことは記憶から忘れ去って迷宮の核を探し始める。
だけど、流石に迷宮で一番大事な物だからいくら探しても見つからない。どこかに隠し扉とかあるのかも。
思ったより手こずったので手っ取り早く魔眼で探すことにしよう。
千里眼は何もかも見通してしまう。壁だって透視して、その奥を見ることが出来る。
…………あった。
ある場所から細い通路が出来ていて、その奥に丸い形をした物が置かれていた。もの凄い魔力を感じるから、あれが核で間違いないだろう。
「レイン。あそこの壁、軽くでいいから壊して」
「……? わかりました」
私が指定した場所に歩み寄り、デコピンで壁を壊す。デコピンですら分厚い壁を壊すほどの破壊力があるとか……最早何も言うまい。
「これは……隠し通路ですか?」
「うん。この先に核があるっぽいね」
通路を突き進むと青い光を放って存在感を激しく主張している物体があった。
「これが核か。凄い魔力量だね」
「迷宮主がコツコツと貯めていたのでしょうか。最高難易度を誇っているだけのことはあります」
その最高難易度を楽勝で進んじゃったのですが、迷宮主もあっさり死んだし、魔眼とレイン様々ですよ。
「じゃあこれを貰おうか。──支配」
魔眼は無機物にだけは目とか関係なく能力を行使出来る。
それは核も同じで、青く光っていた物は私の魔眼と同じ黄金色に光り始めて、支配が完了したのがわかる。
【マスター権限が『セリア・アレース』に移り変わりました】
こうして私は、迷宮主になった。
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