転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります

白波ハクア

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第2章

サッカーと書いて異次元です

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「よし、攻めるぞウンデ──『ヒュン』──ネ?」

 ミリアさんがウンディーネにボールをパスするのをカットし、一気に相手ゴールまでドリブル。シュートを決めました。

 一瞬の出来事に、二人は呆然としています。

「どうしました? で、と言ったはずですが?」

 お二人はその程度ですか? とわかりやすく挑発します。

「ぐぬぬ……! ウンディーネ!」

『うんっ!』

 再びあちらからの始まりです。

「とりゃ!」

 ミリアさんは先程よりも強く、ボールを蹴り上げました。
 ウンディーネならば取ってくれると信じてのパスなのでしょうけれど、甘いです。

 それよりも早く動き、先程と同じようにボールを奪います。

 そして一気に駆け上がり──

「──っ、くっ!」

 不意に感じた気配。
 咄嗟にボールを後ろに蹴り飛ばし、自らも下がります。

 その判断は間違っていませんでした。
 次の瞬間、私がいた場所には巨大な水球が、ドゴォ! と落下しました。あのまま突き進んでいたら、潰されていました。

 このような水を一瞬で作り出し、正確に私を狙って降り下ろす者は、私の知る限り一人しかいません。

「ウンディーネ」

『こっちも本気なんだからね……!』

「……ははっ、そう、ですね。ああ、そうでした」

 ここは異世界。
 魔法が一般化された世界です。
 それは勿論、遊びにも適用されるわけで…………。

「面白い。せいぜい足掻いてください……!」

 この瞬間からサッカーは、異次元サッカーへと進化を遂げたのでした。

 つまり、なんでもありです。

『ミリアちゃん!』

「任せろ!」

 ゴールへと駆ける私の前に、ミリアさんが立ちはだかります。
 そして、彼女の瞳が怪しく輝き始めました。

「お得意の魔眼ですか? 残念ながら私にそれは……」

「ふっふっふっ、くらえ!」

「っ、なにっ……!」

 大地が一瞬蠢いたかと思いきや、私の足場がつんざくような音を立てて破裂しました。
 急な事態に私は空中で身を捻り、ボールを…………って、無い?

「……そこか」

 見ると、ウンディーネがボールを一生懸命蹴りながら、私のゴールまで走っていました。

「させません!」

「それはこちらの台詞だ!」

「くっ──チィッ!」

 ミリアさんが無詠唱で爆炎を発生させます。それはフィールドを覆い尽くすほど強大なものでした。
 それは私にダメージを与えるのが目的ではありません。ただの目眩しに利用したのでしょう。

 空中にいたせいで十分に対処出来なかった私は、その衝撃にバランスを崩して吹き飛びます。

『いっけぇええええ!』

「っ、しまっ……!」

 ウンディーネの放ったシュートは、真っ直ぐにゴールネットへと突き刺さりました。

『やったよ、ミリアちゃん!』

「よくやったぞ、ウンディーネ!」

 一点を巻き返した二人は喜び、ハイタッチを交わします。

「…………ふっ、ふふっ、うふふっ……」

 私はボールを回収し、薄く笑いました。
 この時、私の中の何かが決壊しました。

 魔法は使わないと決めていましたが、こうなったらやけです。

「どうなっても──しりませんからね」

 私は一人なので、先行は出来ません、
 なので、またミリアさん達のパスから始まります。

「ウンディーネ──ぐぁぁ!」

『うん、任せ──きゃぁ!』

 二人の間に、突如として風の塊が降りました。
 それは両方を吹き飛ばし、ボールは宙を舞い、私はそれを胸で受け止めます。

「…………ダウンバースト。そのお味はいかがです?」

 それは下降気流というものであり、地面に衝突した風は四方へと飛び散り、時には災害級の被害を生み出すほどの『自然の力』です。

 私には『自然の担い手』という技能があります。自然に生きるもの全てを我が物として操れる技能であり、それは『天候』も同じ部類に入ります。勿論、これもレベルカンストです。私くらいになれば天候の全てをを操る程度、造作もありません。

「う、ぐっ……!」

『動け、ない……!』

 二人は、今も続く風の圧力に地面を這いつくばっています。
 いくら世に恐怖を知らしめる魔王でも、遥か昔に誕生した上位精霊でも、偉大なる自然の前には無力。

 先程良いようにやられた仕返しです。
 私はあえてゆっくりとゴールまで歩き、見せつけるようにシュートを放ちました。

「これで、再び一点差です」

 私は自然を操る手を休めません。
 このまま……一方的に嬲って差し上げます。

「このままでは終わらせん!」

 ミリアさんは力づくで風の拘束から抵抗し、何処からともなく黒板のような板を取り出し……って、え? そんなの何処に隠し持っていたのです?

「喰らえ!」

 私は嫌な予感を察して、ミリアさんの暴挙を止めようと動きます。

「──っ、やめ!」

「もう遅いわ!」

 ミリアさんは爪を立て、思いっきりその板を引っ掻きました。
 キィイインという金切り音が辺り一面に響き、私は思わず耳を塞ぎます。

「ぎゃあああああ!?!!?」

 間近でそれを聞いたミリアさんは、大声で叫びながらその場を転がります。

「馬鹿なのですか? 馬鹿なのですね!?」

「ふっふっふっ……だが、これで風は止んだ!」

「なっ……!?」

 耳を塞ぐのに集中しすぎて、天候操作を怠りました。
 ミリアさんはもう十分に動けていますし──っ、ウンディーネは!

『シューーートぉ!』

 我に返った時、もうそれは遅すぎました。

『やったよミリアちゃん!』

「よくやった! いえーい、だ!」

『……いえーーーい……!』

 再び並んだ点数。

 まさかこんな馬鹿みたいな作戦で、私の『自然の担い手』が敗れるとは……。

「こうなったら、とことんやってやります……!」

 異次元サッカーは、まだ始まったばかりです。
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