転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります

白波ハクア

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第2章

予想外の再開です

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「え、なっ、りリーフィア様!? どうしてここに……!」

 ようやく我に返ってくれた兵士は、きょどりながら私を指差しました。

 人に指差すなと、ミリアさんに言ったように指摘したいところですが、茶化している場合ではないのは重々承知しているので、今回は黙っておきましょう。

「はい。リーフィアです。ディアスさんから救援要請が届いたとのことで、わざわざ私が駆け付けてあげたのです」

 私は周囲を見渡します。
 ですが、ディアスさんらしき人影は見当たりません。

「彼はどこに?」

「え……はい、ディアス隊長なら、向こうに……」

 兵士の指差す先には、ちょっとした森がありました。
 そして、その先からは微かに血の臭いを感じます。

 おそらくディアスさんから流れたものでしょう。地面には血が滴っており、それは森に伸びています。普通に考えれば、命に関わるおびただしい量だと思うのですが……

「彼、生きてます?」

「なっ、勿論……っ、生きてると、信じています……」

 飄々と言い放った私に怒りを感じたのでしょう。声を荒げた兵士でしたが、その言葉は徐々に小さく萎んでいきました。

「……ふむ、危険な状態ですか。何があったのです?」

 私の問いかけに、兵士は体を震わせぎゅっと拳を握ります。
 他の兵士も同じで、悔しさに表情を歪めて下を向いていました。

 さっさと説明してくださいと急かしたいのは山々なのですが、ここで彼らを刺激するのはやめておきましょう。

「隊長は、襲撃にいち早く気づいて俺達を、庇って……!」

 ディアスさんは、誰よりも早く襲撃に気づいたらしいですね。
 咄嗟に動けたのは良いのですが、気づいた時には襲撃を防ぐ時間が無かった。だから彼自身が盾となり、兵士達を守ったのでしょう。

 おかげで兵士達は助かりましたが、流石のディアスさんでも重症となってしまい、撤退を余儀無くされた。兵士達はここを最終防衛ラインと考え、必死に抵抗を続けていたと……そういう感じですかね。

 ──案外、本当にギリギリだったようですね。
 私は内心、ホッと安堵の息を漏らします。

「道すがらで出会った親切な方が力添えをしてくれましたが、やはり心配です。早く隊長のところに、お願いします!」


 ──ん?


「道すがらに出会った親切な方、ですか?」

「ええ、颯爽と現れ、我らに手助けしてくれました。フードで隠していたので顔は見えませんでしたが、かなりの実力者でした」

「実力者……ふむ、怪しいですが……行ってみますか」

 彼の様子から、ディアスさんはかなり危険な状態らしいです。……ならば、なるべく急いだ方がいいでしょう。

 森は小さいですが、逃げ込み身を隠すには適しているでしょう。そちらに意識を向けると、ディアスさんらしき魔力反応を見つけることが出来ました。
 魔法で存在感を隠しているのか、それはとても薄く感じられましたが、私くらいになれば見破るのは容易いです。

「…………ふむ……」

 ディアスさんの反応があるのはわかります。
 でも、そのすぐ側にもう一人の反応がありました。兵士……にしては強い魔力反応。

 おそらく、これが兵士の言っていた『協力者』ですか。

「んー? 何処かで見たことがあるような……んん?」

 見覚えのある魔力です。
 しかし、やはりこれは兵士のものではありません。

 だったら、誰?

「まぁ、それも行ってみればわかることですか」

 森に入り、草木をかき分けて中を進みます。
 ──と、そんな時、薄い膜を突き抜けるような感覚と同時に、私は違和感を感じました。

「これは……転移させられましたね」

 かなり精密に魔法が張られてているのか、景色に変わりはありません。
 ですが、空気が変わったのを私は見逃しませんでした。本当に微弱な変化だったので、魔法で気配を隠していると知らず、警戒しないで森の中を進んでいたら、私はずっと気付けずに永遠と草木をかき分けていたでしょう。

 知らない間に転移させられていたことより、ディアスさんがこんなに精密で強力な結界を作り出せるとは思っていなかったので、そっちの方が驚きは大きかったです。

「えっとぉ…………ここら辺、ですかね……?」

 先程感じた魔力の薄い膜。そこを通り過ぎる直前で止まり、手を添えます。

「とりあえず、壊れてください」

 ──パリンッと音を立てて壊れる結界。

「あら、そこに居たのですね」

 結界が壊れたと同時に視界が移り変わり、ちょっと進んだ先に──は居ました。

「ぉ、おお……リーフィア、じゃねぇか。こんなところで会うなんて、奇遇、だな、ぁ……」

 力無く地面に横たわるディアスさんは、私の姿を見て笑顔を向けますが、その顔には全く生気を感じられません。

「ったく、死にかけが格好つけないでください──治れ」

 見る見るうちに傷が癒えていくディアスさんは、自分の体を見下ろして驚いたように目を見開き、次には呆れたように苦笑しました。

「……相変わらず、お前はチートだな」

「そのチートのおかげで助かったんですから、素直に感謝の言葉くらい述べてはどうです?」

「まぁ、そうだなぁ……ありがとよ、リーフィア」

「はい。貸し一つです。後でめちゃくちゃ吹っ掛けるので覚悟してください」

「……ハッ、相変わらず容赦ねぇ奴だ。だがまぁ、了解した」

 言葉を交わしていくうちに、ディアスさんの表情は明るみを取り戻していました。
 これで、もう心配しなくても大丈夫でしょう。

「──さて」

 私は一息つき、ディアスさんの横──もう一人の彼に視線を移します。

「まさか、こんなところで再開するとは思いませんでしたよ」

 染色した金色の髪と、爽やかな顔付き。
 片手に持つのは──豪華な装飾の施された一振りの剣。

「こういう場合、何と言えばいいんですかね?」

 ちょっとボロいローブを羽織った彼は、茶色の瞳で一点に私を見つめていました。

 彼が口を開く様子はありません。
 こういう予想外の出来事に直面した時、混乱の末に考えを放棄してしまうのは、相変わらずのようですね。

「とりあえずす──古谷さん」
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