転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります

白波ハクア

文字の大きさ
158 / 233
第3章

お披露目です

しおりを挟む



「私の男装姿、ですか」

「ああ、妾もその姿には慣れておきたいし、故郷に戻る時にはすでに男装してもらっている必要がある。それに、着慣れておくのも大切じゃろう?」



 うぐぅ、どれも正論で言い訳できない……。


「わ、わかりました。……でも、流石に着替えているところを見られるのは恥ずかしいので、目を閉じていてもらえますか?」

 知り合いが見ている中、男装するとか何の罰ゲームだ……って感じです。
 ウンディーネには一度見られているから、もう大丈夫なのですが、それでもお二人にまじまじと見られながら着替えるのは嫌です。


「わかった。準備ができたら声を掛けてくれ。ほれ、ミリアも」

「……むぅ、本当は見たかったが、仕方ない」


 二人は素直に目を瞑り、私は溜め息を一回。いそいそと着替え始めます。


 人の街で買ってきたのは、タキシードと晒しです。

 アカネさんのご両親に挨拶するのですし、ちょっと値は張りましたが、礼儀服専門店で最高級の物を購入してきました。
 私の胸はそれなりにあるので、布で押し当てていないとすぐに女性だとバレてしまうので、ついでに晒しも購入。抜かりはありません。


『それじゃ、リーフィア……いくよ!』

「ぐ、ふっ……」

 布はウンディーネに手伝ってもらいます。
 これは一人ではできませんし、誰かに遠慮なくやってもらった方が確実です。

 ……でも、この胸を締め付けられる感覚に慣れるのは、少し厳しいかもしれません。

 コルセットを着用する貴婦人の苦労が窺えます。
 それがあるだけで絶対に貴族になりたくねぇと切に思います。


『リーフィア、大丈夫?』

「大丈夫、ではありませんが……そのままお願いします」

『うんっ! わかった!』

「げふぅ……!」

 ウンディーネは純粋な子です。
 私が「全力で」と言えば、その通りにやってくれます。

 真面目に協力してくれるのは嬉しいのですが、ちょっと純粋すぎて容赦が無さす、っ────あ、今一瞬だけ意識が飛びそうになりました。



「…………なんか、大変そうだな」

「今リーフィアは、ミリアには縁の無い体験をしているのじゃよ」

「…………どうしてだろう。とても馬鹿にされた気がするぞ」

「気のせいじゃ」

「…………そうか」



 私がこうして苦しんでいる間、二人は呑気にお話に興じていました。

 でも、確かにミリアさんには永遠に縁の無いことですね。
 ……だって、抑える胸が無いのですから。


「なんか、リーフィアにも馬鹿にされた気がするぞ」

「……気のせ、がはっ……」

『リーフィア頑張って! もう少しだよ!』

「い、いや、もう十ぶ──ん゛っ!」


 ちょっと容赦無さ過ぎませんかねぇ……!





          ◆◇◆





 その後、死にそうになりながらも、どうにか着替えを終わらせた私は、最後の手直しの段階に入っていました。

 ウンディーネに鏡を持ってもらいながら簡単に化粧を施し、紐で髪を大きく一つに縛って完成です。


『リーフィア、かっこいい……!』

「念のために聞きますが、おかしなところはありませんか?」

『うん! 今まで見た誰よりもかっこいいよ!』

「ありがとうございます。……でも、ディアスさんの前ではそれを言ってあげないでくださいね」


 私の顔は超絶美少女というわけではなく、どちらかと言えば中性寄りです。
 なので、ちょっと化粧をすれば、男性っぽく見せることも可能でした。

 いつもは化粧をする必要がなく、今回になって久しぶりに化粧をしたのでちょっと不安でしたが、ウンディーネが大丈夫と言うのであれば安心して自信を持てます。……恥ずかしいですけどね。


「お二人とも、お待たせしました。目を開けてください」

「ようやくか。もう少しで寝そうになっ、────」

「思ったよりも長く掛かっていたが大丈、────」


 最後まで言葉を紡ぐことなく、二人は固まってしまいました。
 それはもう目と口を大きく開けて、石になってしまったかと心配するくらいにピクリとも動きません。

「…………何か、おかしいでしょうか?」

 ウンディーネは褒めてくれましたが、やっぱり男装は似合わなかったかな。
 そう思い、困ったように苦笑すると、二人は『ハッ!?』と我に返ったように動き出しました。


 こほんっ、とわざとらしく咳払いしたのは、アカネさんです。


「…………い、いや、その……とても似合っている、ぞ」

 褒めてくれている割には、全くこちらを見てくれません。
 お世辞として褒めてくれるのは嬉しいのですが、ちょっと残念な気持ちになります。


「やっぱり、私が男装するのは無理が」

「──自信を持て! この妾が見惚れてしまうほどに、今のリーフィアは似合っている!」

 バッ、とアカネさんは私の手を取り、強く肯定してくれました。
 茶化さない真剣な眼差しから、彼女の熱意が伝わり、私は更に恥ずかしくなります。

「あ、あの、アカネさん……? えっと、お世辞はもう結構です、ので……」

「なんでじゃ? 妾は嘘を言わぬ。本気で魅力的だと思ったから、こうしてリーフィアを褒めているのじゃ。妾の婚約者に相応しい……いや、それ以上に美しい。……これは、妾も負けていられぬな」



 ──リーフィアに相応しい妻になるぞ! と意気込むアカネさん。

 私はもう限界が訪れて、顔を上げることができなくなっていました。
 早くこの地獄が終わってくれと、切に願うばかりです。



『リーフィア……照れてる。可愛い』

しおりを挟む
感想 247

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...