転生エルフさんは今日も惰眠を貪ります

白波ハクア

文字の大きさ
172 / 233
第3章

決着、です

しおりを挟む



「な、なん……その、魔力は……!」

 はて? ただ魔力を適当に解放しただけなのに、どうして私はここまで狼狽されているのでしょう?

 まだ全力の半分も出していないのですが、ちょっと弱過ぎです。

 ──ああ、なるほど。
 ミリアさんとアカネさんが「やり過ぎるな」と、口を酸っぱくして何度も注意してきた理由が、今になってよぉくわかりました。


 私が今まで戦った中で一番弱かったのは、魔王軍の兵士達です……と言ったら彼らからブーイングの嵐が巻き起こりそうですが、事実なので仕方ありません。

 でもそんな魔王軍兵士でも、一応エリート中のエリートとして所属しています。
 しかも魔族は他種族より発達した強靭な肉体を持っていて、子供でも人間の大人以上の実力を発揮することができるらしいです。本当かは知りませんけどね。


 つまり、そんな魔族のエリートを歯牙にも掛けない私にとって、ちょっとだけ力に自慢がある獣人程度、雑魚以下──クソ雑魚ナメクジに等しいということです。


 確かに半分程度の魔力でも過剰なのかもしれませんね。
 さっきの不意打ちと言い、その後の連打と言い、私には一切のダメージが入っていません。


 ──蚊に刺されたと思ったわ。


 という、カッコいいのかよくわからない台詞がありますが、その言葉さえも蚊に失礼ですね。


「あれれ~? まさか怖気付いちゃいました?」

 挑発すると、バリツさんは顔を真っ赤にさせました。

「そ、それが貴様の全力か! 少し驚いたが、その程度ならば何も問題はない! 降参させようという作戦だったようだが、残念だったな!」

「残念なのはあなたの頭でしょうに……」

「何か言ったか!」

「…………いいえ、なんでも」

 武器を出現させた程度で全力だと思われたのは、流石の私も予想していませんでしたが……まぁ、そうやってこちらを侮ってくれるのであれば好都合です。


「では、行きますよ」

 ちょっと足に力を入れて、私は地を蹴りま──


「って、あぶな」

 適当に振り下ろした刀の刃は、バリツさんの首の皮スレスレのところで止まりました。


「……ちょっと、戦闘中に何を固まっているのですか」

 私は文句を言いました。


 もう少しで首を斬りとばすところでした。

 それをしてしまったら、流石に即死です。
 私の回復魔法でも治すことは不可能になってしまいます。

 危うく、私は人殺しです。
 …………エルフの大量虐殺を手助けした身としては、すっごく今更な気がしてきましたが、流石に婚約者とそのご両親が見ている前で人を殺すのはダメでしょう。



「──ハッ! な、何だ今のは!」

「いやうるさっ」

 耳元で叫ばれた私は、反射的にその場から跳び退きました。

「今のは何だと聞いている!」

「何って、ぴょんってして近付いただけですよ。そしたら動かないんですもん。びっくりしました」

「驚いたのはこっちの方──ンンッ! くそっ、油断したところを狙うとは卑怯な!」

「ブーメランぶっ刺さってますけど大丈夫です?」

 油断したところを狙うって、一番最初にそれやられた気がするのですが、もしかしてもう忘れてしまったのでしょうか?

 うーん、トリ頭かな?
 いや、でも彼一歩も動いていませんよね。

 ……え、トリ頭以下?



「きっと苦労してきたのでしょうね」

「急に何を言い出す貴様!」

「大丈夫です。きっといつか、頭が良くなりますから」

「本当に何を言い出すのだ!?」

「トリ頭以下でも、必要とされる時が来ますよ。知りませんし保証もしませんけど」

「ふざけるのも大概にしろ!」


 バリツさんは吠え、私に拳を突き出しました。
 でも──

「ふむ。やっぱり弱いですね」

 彼の拳は確かに、私の顔面を捉えていました。
 しかし、残念ながら痛みはありません。

 攻撃を受けた衝撃も感じませんし、本当に何も感じませんでした。
 ただゆっくりと、形だけは大きな拳が迫ってくるのが見えて、目の前で止まっただけです。


「なぜ、なぜだ! 魔法で防いでいる様子はない。どんな手を使っている!?」

「魔法なんか使っていませんよ」

「何だと!?」

「私とあなたの間には、それだけの差があるということです」

 埃を払うように、私は拳を叩き落としました。


「私に痛みを与えたいのであれば、」

 柄を握り、振りかざします。
 きっと彼には、この程度の動きも速く見えているのでしょう。




「アカネの角を持ってくることです!」




「本当に意味がわからなぐばぁ!!!」

 刃の腹で、横腹をぶん殴られたバリツさんは、何かを言いながら会場の外へ吹き飛んでいきました。


 これぞ、ホームランです。
 ──ふっ。


しおりを挟む
感想 247

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...