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第3章

本来の力ですか

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 ロリ神に案内されたのは、まさかの本殿の中でした。

 しかも巫女さん達からの扱いが凄いのなんのと。
 VIP対応かと思うほど、丁寧な扱いをされてしまいました。


 流石は神様と言ったところなのでしょう。
 ……でも、あの姿でもちゃんと『神』として認識されるのですね。

 そういえば、ロリ神は何度か下界巡りをしていると言っていましたね。
 もう顔馴染みということなのでしょうか?


「ほれ、適当に座ってくれ」

 そう言われて私は座りましたが、アカネさんはまだ緊張しているようです。

 私の知り合いということで、最初はロリ神と打ち解けようとしてくれていましたが、この神社のお偉いさんだということは予想していなかったようです。
 流石に神様だとはまだ気付いていないでしょうけれど……聡いアカネさんのことです。こうやって話している内に気付いてしまうかもしれませんね。


「アカネ。この人はこういう方なのです。変に緊張している方が疲れてしまいますよ」

「い、いや……うむ。そうじゃな。失礼する」

 心の整理が追い付いたのか、アカネさんは私の隣にちょこんと座ります。


「──さて、お主のことはどっちで呼べば良いかのう?」

「こちらの名前でお願いします。……あ、リーフィアじゃなくてリフィの方で」

「あいわかった。それでリフィよ。この世界はどうじゃ?」


 早速それを聞いてきますか……。


「どこかの誰かさんのおかげで大変な思いをしています」

「相変わらず容赦が無い。……だが、与えてやった能力でどうにかやっているようだな」

「ええ、おかげさまで」

「しかし、ふむ。まだ体に上手く馴染んでいないようだな。……いや、そろそろか?」

「上手く馴染んでいないって、何を言っているのですか?」

「無論、お前の能力だ。どのように強力な能力だとしても、使い続けなければ体に馴染まぬ。本当は僅か数日で馴染むように出来ているのだが……」

 何かを言いたげな視線。
 私は、サッと目を逸らしました。

「お前、ずっと眠っていてあまり体を使っていないな?」

「そんなことありませんよ」

「嘘つけ。わしはずっと視ておったのだぞ。最上位の契約精霊に運んでもらい、最近では道具を使っているではないか」

「……何もかもお見通しですか。やっぱり私のファンですか?」

「な訳あるか。単純に暇なだけだ。最近は活きの良い魂が見つからなくてな。仕事が少ないのだ」

「だからこうして、ここに遊びに来たと?」

「……まぁ、そんなところだな」


 若い人間を無差別に選んで転成させていると思っていましたが、あっちにも選ぶ権利はあるようですね。

 にしても『活きの良い魂』って、なんか新鮮な魚みたいで嫌ですね。

 でも、人間という存在は、神にとってその程度のものなのでしょう。

 一応、あのような姿でも人智を超越した存在ですからね。
 一応、あのような姿でも……。


「おいこら。何か失礼なことを」

「考えていません」

「……そうか。まぁいい」


 いいのですか。
 そういうところは優しいのですね。


「して、先程その鬼族のことを婚約者だと言っていたな。今度は何をするつもりだ?」

「私が何かを企んでいるような言い方はやめてください。別に何かをしようとは思っていません。ただこの人と夫婦になって、ずっと一緒に居られればそれで十分なのですから」

「なるほど。正妻公認の夫婦ということか」


 正妻って……ああ、ウンディーネのことですか。


「……にしても、お前は普通かと思っていたが、そっちの気があるとはな」

「この世界の男がロクでも無し過ぎるんですよ」

 自分勝手で人の話を聞こうとしない。その癖に我が強いし野望も高い。
 そんなのを相手にしていて、どうして男を好きになれるでしょう?

「どうなってんですかこの世界は。魔王軍の方が楽しいって、私でもびっくりですよ」

「わしだって、お前が魔王に拾われるとは予想していなかった。尽く予想を裏切りおってからに……しかも同族を滅ぼしかけるとか、流石のわしもヒヤヒヤしたぞ」

「邪魔だったから退場していただいた。それだけのことです」

 そう言い切り、私はお茶を飲みます。
 呆れたような視線が刺さりますが、そんなの今更です。


「一つ、いいじゃろうか?」

 唐突にアカネさんが声を上げました。
 その目はロリ神に向けられています。

「許す。言ってみよ」

「なんだか偉そうですね。叩きますよ」

「……すまん。お前ちょっと黙ってくれるか? ようやく、それらしいことをやれそうな気がするのだ」


 『それらしいこと』って、自分でそれ言っちゃうんですね。
 ……でもまぁ、アカネさんの邪魔をするわけにもいきませんし、ここは静かに見守ることにしましょうか。


「先程、能力がリフィの体に馴染んでいないと言っていたが、それは一体どういうことじゃろうか?」

「どういうことも何も、そのままだ。わしが与えたものはあの程度ではない。……ほれ、エルフの森で対峙した魔女の成れの果て。リフィはあれに苦戦しただろう?」

 魔女の成れの果て、異形の存在。
 あれは私とウンディーネが本気を出しても、倒せない相手でした。

「本来ならば、あの程度は苦労するに値しない小物よ。馴染んでいないとは、まだこの者が能力を完全に扱いこなせていないというわけだな」

「あの魔女達が小物、ですか……」

「そうだ。まだリフィは武器を持ったばかりの子供に過ぎぬ。ただ強力な力を振り回しているだけ……悪いことは言わない。早く本来の力を引き出すことだな」


 そうでなければと、ロリ神は言葉を続けます。


「やがてお前は全てを失うことになる」

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