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第3章
初めてです
しおりを挟む「…………申し訳ありませんでした」
事後、私はアカネに平謝りをしました。
途中からは乗り気だった彼女も、事が済めば恥ずかしさを思い出してきたらしく、また良いようにされたと拗ねてしまいました。そんな嫁も可愛いです。
……って言ったら、また怒られちゃいますかね?
「……恥ずかしかった」
「ほんと、申し訳ありません」
「謝るだけでは、衛兵はいらぬのじゃ」
どこかで聞いたような台詞ですね。
ですが、全くもってその通りでございます。
「でも気持ちよかったでしょう?」
「それは……っ、じゃが! それとこれとは別なのじゃ!」
体は正直でも、理性が……というやつでしょうか。
いやね。私も申し訳ないとは思っていますよ。
でも、最後の方はアカネさんだってノリノリだったじゃないですか。むしろ私のことを何度も求めてきたじゃないですか。これで私だけが責められるのは理不尽というか、ちょっとズルいというか……。
「なんじゃ」
「いいえ、なんでもありませんよ」
睨まれてしまいました。
流石はアカネさん。こちらが何を思っているのかお見通しですか。
「まぁ、妾が強く抵抗しなかったことも……その、悪いとは思っている」
最後の方はとても小さな呟きでした。
一応、自分も悪いとは思っているようですね。
これでは、私がアカネを指差して批難することができないじゃないですか。……ったく、そういうところがズルいんですよ。
「良いか。次からはもっと優しくするのじゃ。初めてであれは、妾には刺激が強すぎる!」
もう嫌だ、とは言わないのですね。
素直じゃないお嫁さんめ。
「ええ、かしこまりました。アカネの望む通りに」
大仰に一礼してみせます。
これで、とりあえずは機嫌を取り戻してくれたでしょうか?
「なんじゃ、リフィに良いように誤魔化されている気がするぞ」
「気のせいでは?」
私がアカネさんを良いように誤魔化すなんて、そんなことは…………少ししか思っていませんよ。ちゃんと考えているようで案外ちょろいとか、失礼なことを言うわけがないじゃないですか~。あはは。
とまぁ、茶番は置いておいて。
「アカネ、安心してください」
「なんじゃ」
「防音は完璧です。どんなに騒いでも気づかれることはありあだっ」
親指を立てたら、普通に頭を叩かれました。暴力反対です。
「まったく、ウンディーネの苦労が理解できるわ」
「え? どうしてです?」
「どうして、って……リフィはウンディーネと、いつもこのようなことをしていたのではないのか?」
「いいえ? あの子とは一度もやったことはありませんよ」
「……なんだと?」
ああ、なるほど。
アカネさんは私が経験豊富だと思っているのですね。
どうやら、すれ違いが起こっているようです。
「ウンディーネは恥ずかしがり屋で……何度か夜を共にしようかと思った時はあったのですが、本番になって緊張でいつも気絶してしまうんですよね。だから、あのような行いをするのはアカネが初めてです」
気絶しているウンディーネに無理矢理やるのも気が引けますし、仕方なく添い寝するだけに留まっていました。
最初がアカネさんだと知ったら、ウンディーネは拗ねるでしょうか?
ちょっとした修羅場になりそうですが、その時は二人一緒に楽しむとしましょう…………って、あれ? なんかこれだけ聞くと、私って普通にやり慣れている人では?
勘違いされそうなので言っておきますけど、私はさっきのが初めてです。
これでも相手を傷つけないようにと、そういう知識を頑張って勉強したんですよ。ウンディーネもアカネも、私にとってどちらも大切な人ですからね。
「そう、か……妾が、初めてか……ふふっ、そうかそうか」
あれ? なんか嬉しそう?
初めてを体験できるって、やっぱり嬉しいのですかね。私は別に、最初はどちらにあげても変わらないと思っていたのですが……これはウンディーネに申し訳ないことをしたかもしれません。
「仕方ない。今日のことは初めてに免じて許してやろう」
「はぁ、ありがとうございます……」
「じゃが、次はウンディーネにしてあげるのじゃぞ! でなければ、もう妾はやらないからな!」
「あ、はい」
謎の譲り合い精神を見せられた私ですが、一応返事はしておきます。
アカネさんの中では、順位のようなものがあるのでしょうか。
気にしなくていいのに……変に真面目な人ですからね。大方、ウンディーネから私を取ってしまったことに罪悪感でも抱いているのでしょう。私もウンディーネも、アカネさんのことが大好きだから手助けをして、彼女を受け入れているというのに。
いつか、このようなすれ違いも無くなるのでしょうか。
私の力量、なのでしょうね。
……うん。頑張りましょう。
お互いにギクシャクするのは望みません。
いつまでも三人で仲良くするのが、私の望みです。
ウンディーネが帰ってきたら、一緒にお話しするのもいいかもしれませんね。
久しぶりの女子会……いや、夫婦会(?)です。
だから、ウンディーネ。
──早く帰ってきてくださいね。
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