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第3章
おっきなゾウさんです
しおりを挟む「ブモオオオオオオオオ!!」
私の挑発が聞こえたのでしょうか。
ゾウは私を押し潰そうと、巨木のような腕を勢いよく振り下ろしました。
巨体のくせに動きが速い。
そのくせ範囲も広いので、避けるのも一苦労です。
このまま避けることはできるでしょう。……ですが、いつまでも逃げ続けていると、いつか追い詰められてしまいます。
「──風よ」
範囲を絞る必要はありません。
空気砲をイメージした空気の塊を前方に射出。
「予想はしていましたが、びくともしませんか」
これでも私が出せる最大火力なんですけど……。
私の攻撃を防いでいるのは硬い皮膚だけじゃありません。おそらく、魔法にも高い耐性があるのでしょう。
魔法では勝ち目がありませんね。
──なら、あえて近接戦闘を仕掛けてみましょう。
「マジックウェポン【剣】」
ゾウの腕が振り下ろされます。
ギリギリで躱し、大地に響く衝撃と共に飛び上がり──。
「フッ──!」
鉛をぶっ叩いたような感触。
全力で振りかぶった一閃は、いとも容易く弾かれました。
手元の剣を見つめ、うっわぁ……と呆れ気味に呟きます。
なんと刃が欠けていました。
私の魔力で作った武器は凄まじい耐久力を誇っているはずなのですが、そうですか。これでもダメですか。
「これ、どうす──っ──!」
風を薙ぐ鈍い音。
落下中だった私の体は、真横から襲いかかった巨腕に吹き飛ばされました。
洞窟の壁に思い切り叩きつけられ、肺の中の空気が全て吐き出されます。
「ゲホッ、ゲホッ……ったく、なんなんですか、も──やばっ──」
気が付いた時には、目前にゾウの拳が迫っていました。
慌てて防御結界を正面に展開しますが、それは一瞬で破壊されてしまいます。
「なん、ぐっ……!」
それは一度だけでは終わりませんでした。
何度も何度も、拳は降り注ぎます。
壁にめり込んだ私の体は、おとなしくそれを受け入れることしかできません。
手も足も出ませんね。
このままでは私の敗北は確実。
──なんて、思っていますか?
「ブモっ?!」
ゾウは驚きの声をあげました。
先程までそこにいたはずの獲物が消えているのですから、その反応は当然のことです。
私を探し、キョロキョロと首を振るゾウ。
このまま遊ぶのもいいですが、あいにく私は急いでいるのです。
早速ですが、答え合わせをしましょう。
「ここですよ、ここ」
ゾウの耳元で囁いてあげました。
一拍遅れて拳が振ってきます。
ですが、それは自分自身を追い詰める行為です。
「ブモォオオオオオオ!?」
初めて、山のような巨体が揺れ動きました。
私の攻撃は、どう足掻いてもこのデカブツには通じません。
絶対に敵を斬り殺す『剣術10』ですら擦り傷一つも与えられなかったのですから、色々と策を弄するのは無駄だと判断しました。
なら、どうやって相手を倒せばいいのか?
簡単な話です。
──相手の攻撃を利用すればいい。
ほら、あのゾウには馬鹿みたいにぶっとい腕が付いているじゃないですか。あれこそが、ゾウ自身を殺す私の切り札です。
卑怯だなんだと言っている場合ではありません。
ウンディーネを助けるためには、敵を楽に倒すためには、ありとあらゆるものを利用するのが一番。
「ふふっ、ほらほら……早く私を殺さないと……」
──大変なことになりますよ。
主に、あなたの方が。
「ブモオオオオオオオオ!!!!!!」
「あははっ、無──ドゴォ!──駄ですよ。どん──ドゴォ!──なに攻撃しても、私──ドゴォ!──には効きません。あなたの──ドゴォオオオオ!──いやうるさっ」
痛みも衝撃も感じませんが、さっきから『ドゴォン!』ってうるさいんですけど……。ちょっと耳塞いでいいですか? いいですよね? はーい、塞ぎまーす。
……、……うん。
普通に聞こえますね。
これ、意味ないやつです。
だって真横でドッカンドッカンやっているんですもの。
「本当にうるさいなぁ……」
確実にダメージは与えられているはずなのですが、見た目通りタフですねぇ。
このまま私の耳が壊れるか、ゾウが自滅するかの耐久戦でも────ん? 耳?
くるりと、反対側を向きます。
そこには洞窟の入り口のような耳がありました。
────ニヤァ。
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