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14 誰かが邪魔してる
しおりを挟むそれからも、タイミングを図って鉄鎧を横倒しにしてみたり、デザートのケーキに針を仕込んでみたり、飲み物に死なない程度の毒を混入してみたり。色々と罠を張ったのに、龍姫はことごとく回避してみせた。それも、偶然の事情が重なって。ほら、イヤリングを拾ったせいでシャンデリアの振り子を避けたときみたいに。ちょうど人に呼ばれたり、それはまだいいの。でも、なぜかぶら下がってたパパの肖像画を取ろうと龍姫がジャンプして、床にピンと張ってた紐を避けられたとき、さすがに気づきた。だれかが、あたしたちの邪魔をしてる。
「誰だとおもう?」
「うーん、ぼくはリアムがあやしいとおもう」
「同感よ。ママの気持ちより政治的な判断を優先させる彼がやりそうなことだわ」
リアムはパパの右腕的そんざい。背中に灰色の羽を持つ、堕天使とかいうよくわからない種族の男だ。
「ぜったい、リアムだよ。リアムなら魔法も使えるし、ぼくらにバレないように邪魔するのだってかんたんにできちゃうよ」
「ええ………彼にはオハナシが必要ね」
あたしたちは勢い勇んでリアムの部屋に突撃をかけた。───だけど、当のリアムは関与を否定した。『私はそんなに暇ではありません』ってね。すっごく無愛想に。
「嘘ついてるかんじじゃなかったね」
「でも、だったら誰が……?」
「わかんないけど、ぼくらより強い敵だっていうのはたしかだよ」
「厄介ね……」
たとえ邪魔が入っても、あたしたちの歩みは止まらない。今日もせっせと嫌がらせを考え、罠をしかける。とはいえ、もうネタ切れをおこしかけている。フェルナンデスおじさまに相談してみようかしら。おじさまなら、きっとその悪知恵を貸してくれる。
「何してるの?二人とも」
涼やかな声が聞こえ、あたしとトニーは顔を上げた。まっすぐな銀の髪を風に揺らし、にっこり笑うママがそこにいた。
「化石探しよ」
「そうそう!」
あたしの機転を利かせた言い訳に、トニーが同意する。
あたしたちは体を寄せ合って、後ろにある石を隠した。オトナひとりは入れそうな大きな穴の縁に立てかけられた石を。そこには龍姫の名前が掘ってある。
~エブリン・ドラグーン、19〇〇年。安らかに眠れ~
ママは黒い土がむき出しになった大きな穴をのぞき込んだ。もちろん、そこに龍姫の死体はない。そうだったらいいなって、あたしたちは願いを込めて掘っただけだもの。
「何か見つかった?」
「きれいな石があったよ!」
ママの質問に、トニーが手のひらにのせた緑色の石を見せた。
「あら、本当。綺麗ね。なんの石かしら」
「魔力はかんじないよ」
「そう、じゃあママが触っても大丈夫ね」
ママは魔力がないただの人間で、魔族でもない。だから、強い魔力を持つものに触れると、手をやけどしてしまう。前に、ママのただれた手を見て大泣きしたことがあったっけ。パパが治癒魔法ですぐに治してたけど、しばらくママの手を見るのが怖かった。
つやつやの指先が、あたしの頬をなでた。たぶん、泥をはらってくれたんだと思う。
「ねぇ、ママ。パパは?」
「さぁ、たぶんお仕事よ」
ママは遠い目をしてる。それに、落ち込んでいるようにも見えた。ぎゅっと、ママをだきしめる。
「パパ、龍姫の相手ばっかりして、ママを放ったらかしにしてる。あんなパパ、大嫌い」
「パパ、ママをいじめてるの? だったら、ぼくもパパなんて嫌い」
ぎゅっと、トニーもママをだきしめた。
ママはおかしそうに笑った。
「嫌いなんて言ったら、パパが悲しむわ。ええ、本当に、枕が絞れるほど泣くんだから」
「ママ、パパが側室を取るのはいやでしょ?」
「それは……、嫌だけど……」
ママの表情がくもる。
「でも、パパは魔王様だから」
「かんけいないよ!パパはママだけが好きだって言ってたのに。龍姫にデレデレしちゃって、不潔だわ!」
ぷっと、ママが吹き出した。
「なんで笑うの!」
「ごめんなさい、なんだか懐かしくて」
「ママ、大丈夫だからね。何も心配いらないからね。あたしたちがまもるからね」
「まもるー!」
「ありがとう、トリー、トニー」
ママはぎゅーっとあたしたちをだきしめてくれた。
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