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プロローグ
しおりを挟む原風景、というものがある。
ずっと昔に記憶をさかのぼったとき、いちばん古くて、いちばん鮮やかな、記憶。
俺にとってのそれは6歳の、ある春の日の記憶。
洋館と、美しい花園と、きれいな男の子。そして、
──その男の子が手に持つ、血まみれの、小鳥の死骸。
「すごいよね」
と、その子は無感動な口調で言った。
「こんな小さな体なのにさ。こいつは自分の血で、ぼくの両手をぜんぶよごせるんだよ」
この記憶を、俺は23歳になったいまも繰り返し思い出す。
ふっと肩の力を抜いたとき、また、疲れ切って眠りにつこうとしたとき。
あの日、美しく羽ばたく蝶の誘惑に勝てなかったばっかりに、
こっそり侵入したその庭で、俺は──、
小さな怪物に、捕まった。
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