彼の執着〜前世から愛していると言われても困ります〜

八つ刻

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本編

神崎 百合亜の悩み

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私の人生設計はそこそこ良い会社に就職して、優しい普通の人と恋をし結婚、可愛い子供に囲まれ、ゆったりとした老後を送るーーそんな平凡で普通の幸せを手に入れる事が夢。

この春、名門星蘭大学に見事入学し、キラキラした将来に胸を膨らませていた私は最近困っている事がある。

「百合亜ちゃんって麺類好きなんだね。この間はうどん食べてなかった?」

その原因はこの人、皇 万里すめらぎばんり
学食でラーメンを啜っていた私の隣の席でニコニコと笑顔を振りまいてる。
モデル顔負けの小顔に高い身長、長い手足。それぞれ整った顔のパーツはこれ以上ないと言うほど綺麗に並んでる。別名星蘭の王子様。その王子になぜか気に入られた私はしょっちゅうこうやって話しかけられているのだ。

「あの・・・皇くん。前にも言ったけど、大学で話しかけられるのはちょっと・・・」

眉間に皺を寄せ、小声で抗議するが皇くんはどこ吹く風だ。

「俺と百合亜ちゃんの接点は大学しかないんだから、大学以外でどうやって話すの?」

いやそうなんですけどね。
でも周りの視線が痛いんです・・・。

皇くんは大企業の皇グループの御曹司。つまり将来はでっかい企業の社長さまで、ついでに顔もいいとなると女子からの人気は有り得ないほどあるわけで・・・。
そんな現代の王子さまがそこら辺にいるような私に構っているとなると、嫉みが半端ないんですよ。
呼び出しの数はもう既に両手で収まりきらない位あるのにこれ以上目立ちたくない。

「ほんとやめて、お願い。大学で話しかけられると私も色々迷惑なの」
「ふ~ん。何か言われた?」
「言われたっていうか、脅されたって言うか・・・」

相応しくないに始まり、目障りだ、迷惑かけるなと様々な罵倒を浴びさせられ続けている大学生活。遂に先日は忘れていた参考書を取りに戻ったら「皇様に近づくな」と書かれてズタズタに引き裂かれていた。

今まで平和な生活を送ってきてた私にとって、初めての人からの悪意は恐ろしく背中がゾッとした。
皇くんに近づくと(ていうか私からは近づいてないからね!)こんな恐ろしい事が起こるなら、ほっといて欲しいと思うのは自然な気持ちじゃないだろうか。

「脅されたって・・・物騒だね」
「うん。私目立つの嫌だし、お願いだからそっとして置いて」

学食で許可もなく私の隣に座ってる時点で今更かもしれないけど、皇くんから近づいてこなければ私は平和に過ごせるのだ。今お願いしない手はない。

「そっかぁ・・・じゃあ大学以外でならいいよね?」
「え?」
「そろそろ連絡先知りたいなぁって思ってたんだ。はい、俺のスマホ。とりあえずQRコードで交換しよっか」

皇くんは緑のSNSを開いたスマホを私に差し出してくる。

「いやいや、私の話聞いてた?」
「うん。大学で話しかけられるのが嫌なんでしょ?でも俺は百合亜ちゃんと話したいし、大学以外でなら話せるって事だよね?それなら連絡先知ってないと会えないでしょ?」
「私はそういう意味で言ったんじゃーー」
「自分の意思だけ通そうとするのはどうなのかな。俺は大学で話しかけないのを受け入れたんだから百合亜ちゃんも譲歩すべきだよね?」

正論を述べられてぐっと言葉に詰まる。
確かに話しかけるなと言うのはなかなか人としてどうなのだろう。
「交換しないならこれからも今まで通り大学で話しかけるから」と言われた一言で私は陥落した。



✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



午後の講義も終わり、これでやっと平和な大学生活を送れると思っていた私は甘かった。

「今日も皇様に付き纏ってたんですって?」
「ほんと懲りない人」

帰宅しようとしていた私を門の外で待ち構えていたのは、以前私に忠告という名の罵倒を吐いた人たちだった。

「はぁ・・・付き纏ってなんかいませんが」

おそらく学食の時の事を言っているんだろうけど、あれを見てなぜ私が付き纏っているとなるのか本当に不思議でならない。

「嘘はやめて!ちゃんと私たち見たんだから!」

いつもこんなのの繰り返し。否定しても意味がない。

星蘭は“日本の将来を担う子供たちを育てる”大学なだけあって、金持ちの子や才能ある子たちが多く通っている。
私に文句を言ってくる子たちは多分前者だろう。お嬢様なのか何なのかは知らないけど、自分が正しいと思ったら周りを従わせようとする威圧がある。

「そう言われてもーーー」
「だいたいね!皇様と貴女なんて住む世界が違うのよ!」

困る、と言おうとした私の言葉を遮ってリーダー格っぽい女の子が叫んだ。
いやわかってます、と言いたいけど興奮してる彼女たちに言っても火に油を注ぐだけだろう。あぁめんどくさい。

答えない私に苛立ったのか、キャンキャン吠える彼女たち。さてどうやってこの場を凌ごうかなんて考えてたら、後ろから鈴のなるような声がした。

「貴女たち、見苦しくってよ」

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