彼の執着〜前世から愛していると言われても困ります〜

八つ刻

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本編

悲憤の涙


どうやら私は薬を盛られたらしかった。
寝ている間に飲まされたらしい。
我が国にあるような痺れ薬なんておもちゃ以下の代物で、飲んだ者の身体の自由を奪うものだそうだ。

隣国のターンゼットとクロエが繋がっており、その薬もターンゼットが仕入れたものではないかと聞かされた。

そしてーーーリリアンヌは亡くなったと。

動かせるようになった身体だが、私は動かす気にもならなかった。

リリィが死んだ?
嘘だ。信じられない。

リリィには子がいるんだぞ?
なぜ、なぜこんな事にーー。

毎日毎日同じ事を繰り返し考えては、納得できる答えが出るはずもなく。
暫くして私はリリィを探すようになった。

「リリィ・・・どこだ?会いたいんだ・・・早く出てきてくれ・・・」

そんな私を不憫に思ったのか、事情を知る者たちが私の子たちを連れてきた。
「父上、父上」と泣きながら抱きついてくるが、ダメなんだ。何も感情が沸かない。


あぁそうか、そうなのか。
リリィがいたからこの子たちも可愛かったのだ。リリィと私の子だから。リリィが、リリィがーーー



リリィを奪ったあいつを許さない


「おい、あいつはどうしてる」
「はっ。地下牢に入れ、拷問の最中です」
「陛下には」
本物クロエとバレないよう、手を回してあります」
「わかった。私も拷問に参加する」


それから毎日私はクロエの拷問に参加した。
楽に死なせる事はない。苦しんで、苦しんで、苦し藻掻いて死ね。


もはやターンゼットとの関与は疑わしいレベルではない。リリアンヌが襲われた時もターンゼットの構成員が衛兵に成りすまし、クロエの侵入を可能にさせたとわかった。
また、クロエ専属の侍女が王宮のわかりやすい場所で騒ぎを起こし、そちらに人員が割かれてしまったと。

たった、それだけで私のリリィはこの世にいない人となってしまった。
関わった奴全員を嬲り殺してやろうかと思った。

だが事を大きくすると陛下への報告がめんどくさくなる。涙を飲んでまずはクソ女クロエから処分する事にした。

まずは女の顔を潰させた。
窶れと精神異常からとても元のクロエと同一人物とは思えなかったが、念のためだ。
そして爪を一枚一枚剥いだ。苦痛に顔を歪めるクロエの顔を見ても何も感じない。

私は王太子妃なんだと何度も何度も叫んで煩いので、猿轡を装着させた。
この猿轡はただの猿轡ではなく頭に回すベルト部分以外は全て刃物でできている。
喋ろうとすれば途端に自分で自分を傷つけるというわけだ。

猿轡のおかげで静かにはなったが、まだ全然足りない。リリアンヌが受けた痛み、そしてその腹に宿っていた子の事を思うと何をやっても足りないと感じた。

熱した油に顔をつけさせ、その火傷の部分に薬を塗らせる。そしてまたつけさせる。
鞭打ちも勿論忘れない。

窶れていた女が更に皮と骨だけになった時、四肢をロープに巻き付け、馬に引かせ引きちぎった。女は叫喚の声を上げるが、手当をさせ床に転がらせておいた。

拷問も意外とやる事がないなと思い、女を樽に入れ顔だけ出させ猿轡を外す。
「助けて」と何度も言うがなぜ助けなければならない?殺すならリリアンヌではなく私だろう?

最後の慈悲とクロエに話しかけてやった。

「おい、いい事を教えてやろう」

涙と日々の拷問でぐしゃぐしゃな穢らしい顔をこちらに向ける。

「お前は私にとってただの偽物だ。リリアンヌを手に入れるための繋ぎでしかない」

クロエの瞳はみるみるうちに絶望へと色を変えていった。
あぁそうか。最初からこう言えば良かったのか。

「なん・・・で・・・愛してるって・・・」
「嘘に決まっているだろう。全てリリアンヌを手に入れるための手段にすぎない。お前は偽物ーーー駒なだけだ」

樽に入っているクロエの耳元に口を寄せ、しっかり聞こえるように言い切った。

「お前の子が成せぬ身体はな、私が作ったんだ。ーーー薬でな」

これ迄の事の辻褄があったのだろう。クロエの瞳には既に光はなかった。

「お前は自分の排泄物によって身体が腐って死ぬ。さすがあのガードンの娘だ。ただの駒が私の最愛に手を出した事ーーー死をもって償え」

それだけ言って私はクロエの元を去った。
食事はしっかりさせるよう言いつけてある。
さて、何日もつのか。



結果クロエは二週間という期間で呆気なく死んだ。
もっともっともっと苦しめば良かったものを。

あとはターンゼットへの報復だ。
クロエの侍女は舌を抜き、他国の犯罪奴隷に落とし済み。

私はもう王太子の立場などどうでも良かった。報復が仮に成功したとしても、もう生きるつもりはなかったのだから。

「殿下。私も連れて行って下さい」
「・・・・・・マリー。お前にはまだやれる事がある」
「嫌です!殿下だけで行かせるなんてできません!!」

リリィ、見ているかい?
マリーの忠誠は私へではない。君への忠誠心からこう言っているんだよ。

「・・・では、共にリリィのために戦おう」

私は使い慣れた剣を持ち、執務室を後にした。
幸い私の子は三人。しかも全員男児だ。跡継ぎに困る事はないだろう。










赤く染まった手を見つめる。
下腹部からは止めどなく血が溢れてきていた。

ーーやっと、リリィの元へいける。

リリアンヌの最後の言葉は育ての親夫婦と義兄の名前だった。
私でも、子の名前でもなく。

私はどうしたら良かったのか。
もう一度、もう一度だけリリィに会えたなら・・・今度はーーー

「リ・・・リィ、愛し・・・て・・・る」

その時眦に流れたのは悲しみだったのか喜びだったのか。

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