彼の執着〜前世から愛していると言われても困ります〜

八つ刻

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本編

皇家


朝日がカーテンをさす。
汗でびっしょりと濡れているのは、夏で寝苦しかったからか、久々に見た前世の夢のせいかーー。


今日は日曜日。
着替えをし、リビングに降りると珍しく家族全員がいた。

皇グループの社長で俺の父、皇 千万すめらぎかずたかと母すみれは二人仲良くお茶を飲んでいる。
この二人はいくつになってもベタベタとくっついている。羨ましい。

ソファに足を上げ、アイスを頬張っているのは高校二年の弟、万純ますみだ。

「お、やっと起きたのかよ。珍しーな兄貴が寝坊なんて」
「おはよう万純。父さんも母さんもおはよう」

コーヒーを入れつつ挨拶を済ませる。
今世の家族はまぁ普通だ。
大企業の家の割には婚約者を作れとも言われないし、煩く言ってくる事もない。
この顔と御曹司という立場は多少邪魔だが、前世の王太子よりかは遥かにマシだろう。

俺はコーヒーをテーブルに置き、父さんに話しかけた。

「あのさ、俺好きな子ができたから」

神崎 百合亜。
間違いなくリリアンヌの生まれ変わりだ。

百合亜を見つけたのは十七歳になる前日、そろそろ会社のパーティーにも出ておけと父に言われ渋々出た会場で見かけた。

中年の男性と楽しそうに話す百合亜を見て、一目でリリアンヌだとわかった。
姿形が変わっても変わりない、あの瞳。
神は俺の最後の願いを叶えてくれたのだと思った。

今度こそ、今度こそ俺は間違えない。
絶対に今度こそ幸せにする。

そのためには家族に言っておかねばいけないだろう。先に言っておいた方が後々めんどくさくないしな。

コーヒーに口をつけ、目線を上げると目の前の両親は固まっていた。

「嘘だろ・・・?あの兄貴が?」

振り向くとソファから覗いている弟の表情は驚愕に満ちていた。

「お前が好きな人だと・・・?」
「万里・・・本当なの?」

両親も弟と似たような表情を浮かべている。俺に好きな人ができたらそんなにおかしいのか?
いや好きになったのは前世だが。

「本当だよ。同じ大学の神崎百合亜さんっていうんだ。まだ口説いてる最中だけどね」
「神崎・・・?」
「あぁ神崎さんのお父さんは父さんの子会社で働いているんだって」

リリアンヌの存在がわかってから俺が何もしないわけがない。
皇家で使える力は存分に使わせてもらっている。勿論家族構成は把握済みだ。

「へぇ~何にも興味を示さなかった、あの兄貴がねぇ。どんな人なわけ?」
「そうだな・・・優しくて可憐で子供好き・・・。あとは偶にドジなところもあって可愛いな」

俺は前世と今世のリリアンヌを思い浮かべ、自然と口角がつい上がってしまう。

「・・・・・・万里がそんな表情するなんて・・・」
「あ、あぁ。どうやら本気みたいだな・・・」
「?そんな変な顔してた?」

珍しいものでも見るかのような両親に幸せな気持ちは吹っ飛んでしまった。

「いいえ、変じゃないわ。とっても素敵よ。ふふふ、早くお母さんにも会わせてね」

手を合わせ喜ぶ母はいつも優しい。

「早く紹介できるように頑張るよ」

そう一日も早く、ね。

「そうか~じゃぁあの話は無しだな~」
「あの話?」

父の突然の言葉に母共々視線を向ける。

「万里の婚約者にどうかっていうお嬢さんがいたんだ」
「は?」

そんな話は聞いていない。聞いていないし、いらないし。
俺の顔が一瞬にして変わったのだろう、父は慌てて否定した。

「いや、話が持ち上がっただけだ!我が家は政略結婚させるつもりはないからな!」
「そうよ!お父さんが恋愛結婚なのに息子に政略を求めるなんておかしいわ!万里、気にしなくていいからね」

気にするも何も、政略結婚させるつもりならこの家を飛び出す覚悟はとうに出来ている。
父の頭をスパン!と叩いた母に免じて、今回はこれ以上突っ込まないでおいてやるか。

「俺は政略結婚なんてするつもりはないから。近いうち神崎さん連れてくるからそのつもりでいて」

わかったと頷く両親に満足し、俺は自室へと戻った。



部屋に置きっぱなしにしていたスマホを見ると、通知が一件入っていた。

「へぇ。今日は予定あるって嘘じゃなかったんだ」

俺もイタリアン食べたいなぁなんて思いながらベッドに寝転ぶ。

「さて、どうやって落とそうかな」

呟いた言葉を聞く人物は誰もいなかった。

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