29 / 31
おまけ
影の功労者:後半
しおりを挟む星蘭に入学してすぐ、万ちゃんは百合亜ちゃんとの接触を果たす。
俺はいまだに百合亜ちゃんの安全を守るストーカ・・・ごほん、ヒーロー業務があるため、顔を知られてはまずいと影ながら見守っていた。
万ちゃんはなかなか進展しない関係にイライラとしている事もあったけど、根気よく百合亜ちゃんに向き合っていた。
だけどすぐ問題は起きた。
女子から大人気の万ちゃんファンからの嫌がらせだ。何度か百合亜ちゃんにはバレないように蹴散らしたけど、後から後から湧いてくる。
勿論万ちゃんにも報告した。
「清、お前明日から百合亜の護衛になれ」
「護衛?」
「最近のあいつらは目に余る。お前が傍にいれば早々手を出してこないはずだ」
「えー万ちゃんが助けてあげればいいじゃん」
そうしたら百合亜ちゃんからの印象も確実にアップで一石二鳥では?と俺は考えた。
だけど万ちゃんの考えは違ったんだ。
「俺が助けたら火に油だろ?それに・・・」
「それに?」
「・・・・・・・・・た」
「ん?ごめん、万ちゃん。声が小さくて聞こえない」
突然下を向いて何かボソボソと言い出した万ちゃん。聞き直そうと耳を近付けると、バッと顔を上げ不機嫌に言い放った。
「大学で話しかけるなって言われたから、俺には無理なんだよ!!!」
耳がキーンってなったよ万ちゃん・・・。
話しかけるななんて、百合亜ちゃんは万ちゃんの顔や地位だけ見てるそこら辺の女子とは違うタイプの子だったらしい。
百合亜ちゃんの事を話している時だけ等身大な万ちゃんが現れる。
この頃から俺は万ちゃんの相手は百合亜ちゃんだったらいいな、と思っていた。
この時から本当の騎士業務になったため、百合亜ちゃんにやっと接触できた。
連絡先を交換しやっと罪悪感から開放される。
誰?という顔をしている百合亜ちゃんは万ちゃんには内緒だけど、可愛かった。
見た目や服装は可愛らしい女の子って感じなのに、好物は麺類でラーメン屋に一人で行くとか、かなりのサッカー好きで観戦も楽しんでいたりとなかなかのギャップ。
まるで男友達と話しているように気負わず話せる雰囲気をもつ彼女は絶対モテる。
最初は女子への牽制のために近付いたのに、最終的には虫除けの方に力を入れていた気がする。
騎士業務はヒーロー業務より楽かと思っていたけど、思ったより自分の時間を削られた。
なんせ午前の講義がない日も百合亜ちゃんがあるなら俺は大学に行かなきゃいけなかったからだ。
後は藤井さん。今まで何度も藤井家から皇家に婚約の申し出があったと聞いていたのに、本人が百合亜ちゃんにベッタリだ。これは何かある、と目を光らせていた。
会社立ち上げの主な事は万ちゃんに任せ、俺は人材集めと百合亜ちゃん関連で毎日が過ぎていく。
顔バレしてるためもうヒーロー役はできないから、その役目は弟の崇に引き継がせた。崇も俺と同じように罪悪感で押し潰されそうになっていた。頑張れ・・・。
そんなこんなで夏休み前、百合亜ちゃんがバイトを探している事を知った。
ここ最近は上手くいっているのかと思ってた万ちゃんたちだったが、また何かあったらしく万ちゃんはどんどん痩せていった。
「万ちゃん・・・大丈夫?」
「ダメだ・・・リリィちゃんが足りない・・・」
「リリィ?」
「おい、お前にその名を呼ぶ事は許してないぞ」
ギロリと睨まれ、ついヒッと声が出てしまう。
どうやらリリィちゃんとは百合亜ちゃんの事らしく、万ちゃんしか呼んではいけない愛称らしい。お願いだから先に言って。
バイトなんて心配すぎるというご主人様の我儘のせいで、百合亜ちゃんのバイトはなかなか決まらなかった。そりゃそうだ。俺たちが面接先に圧力をかけて面接を潰させていたからね。
関連会社のIT企業を使ってちょちょいでした。
百合亜ちゃんには悪いけど、万ちゃんのために皇グループの会社にバイトに来て欲しかった。
だけどさすが百合亜ちゃん、一筋縄ではいかない女。まさか飛び込みでバイトを決めてくるとは恐れ入った。
報告しにきた崇の顔は真っ青だった。
俺もその時の万ちゃんの顔は怖くて見れなかった。
もうそろそろいい加減くっついてくれよ、と思い出した頃事件が起きた。
慌てた崇曰く、バイト帰りの百合亜ちゃんが何者かに連れ去られたという事だった。
万ちゃんは場所を崇から聞くとすぐに飛び出していった。
俺は橘の家の者に警察と念の為救急車を呼ぶよう伝え、急いで万ちゃんの後を追う。
俺と万ちゃんと崇は百合亜ちゃんがいるらしき廃墟まで行き、部屋を無理やり開けようと体当たりをするがなかなか開かない。
「おい!!清早くしろ!!」
「わかってるよぉちょっと待ってね」
仕方なくピッキングに切り替えた。
え?なんでピッキングなんてできるかって?そりゃ橘は如何なる場合でも主である皇を守らなきゃだからね。
ピッキングなんて子供の頃から習ってて当たり前なんだよ♪
ものの数分で開いたドアの先にはあられもない格好をした百合亜ちゃんと、ナイフを持ったごっつい男たち三人がいた。
その姿を見た万ちゃんは完全にキレてた。
おかげで守るべき対象が先に飛び出すという一番困った展開になってしまい、さすがの俺も焦った。
俺と崇は昔から空手を習っていたから襲いかかる男たちを何とかいなしていたが、万ちゃんは護身術程度しか習っていない。
普通の人相手なら万ちゃんでも十分相手になるけど、今回の相手はナイフを持っている。
急いで万ちゃんの元へ行かなければと思っていた時最悪の出来事が起きてしまった。
呆然とする百合亜ちゃんと泣き喚く藤井さん。藤井さんの態度に失敗したと思ったのか、刺した男が狼狽えた隙を狙い拘束した所でパトカーと救急車のサイレンの音が聞こえた。
担ぎ込まれた万ちゃんは命に別状はなく、約一ヶ月の入院になった。意識を取り戻してからはずっと百合亜ちゃんの事ばかり話す万ちゃん。
「百合亜ちゃんは大きい怪我もなかったみたいだよ、良かったねぇ」
「良かった・・・だけどなんで見舞いに来ないんだ?」
「え、それはね・・・えっと・・・」
弟の万純が暴走したとはこの時まだ伝えていなかった。千万さんたちも万純自身に話させると言っていたから、俺から勝手に話す事はできない。
「・・・・・・清、何か隠してるな?」
「ふぇ!?な、な、何も隠してないよ!」
「吐け」
「万ちゃん・・・あのね、千万さんから・・・」
「いいから吐け」
俺は魔王には逆らえなかった。
ゲロった後の万ちゃんは魔王どころの表情ではなく、部屋が何度か下がった気がする。
すぐに万純を呼び出せと言われ、この後の万純の事を思うと同情しかなかった。
万ちゃんが入院中、なんとか百合亜ちゃんに来て貰えないかと二回ほどお家にお邪魔した。勿論万ちゃんには内緒で。知られたら怒られちゃうからね。
だけど変なところで頑固な百合亜ちゃんはなかなか頷いてくれなくて・・・
あぁ百合亜ちゃん、俺は万ちゃんのためだけに言っているわけじゃないんだよ。君のためでもあるんだよ、と心の中で涙を流しながら何も成果を上げられず帰路に着いた。
のがほんの二週間ほど前。
何?一体何が起きたの?
今俺の前では百合亜ちゃんにくっつき、頭に何度もキスを落としてる万ちゃんがいる。
え?いつの間に上手くいったわけ?
「二人は・・・付き合ってるの?」
「橘くん!この人どうにかして下さい!」
顔を真っ赤にしながら万ちゃんを引き剥がしにかかる百合亜ちゃんを、万ちゃんは蕩けそうな瞳で見つめている。
「リリィ、俺の前で他の男の名前呼ぶなんて・・・お仕置かな?」
「!?目の前に橘くんがいるのにそんなの理不尽!」
・・・・・・。
いい加減くっつけとは何度も思ったけど・・・俺、これから先ずっとこんなの目の前で見させられていくの?
俺も彼女欲しい・・・。
234
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる