3 / 36
第一章 感情をなくした少年冒険者が笑顔を取り戻すまでのお話
第3話
しおりを挟む
「引き受けても…… いい……です。但し、いくつか条件があります」
僕はゆっくり口を開いた。
「クルト君っ!」
シモーネさんの心底驚愕した声が飛んだ。
少女の表情は一気に明るくなった。
「どっ、どんな条件ですかっ? 何でも言って下さいっ!」
僕は少女がテーブルに撒いたお金のうち、銀貨を1枚取り出した。
「シモーネさん。これで槍は買えますか」
シモーネさんは一見厳しい表情のままだったが、少し口角が上がっていた。
「買えるわね。武器を槍に持ち替えるのね」
僕は少女に向き直ると言った。
「はい。それとあなた、名前は?」
「デリア。デリア・ファーレンハイト」
「デリア。これから厳しいことをいくつも言う。それを君が出来ないなら、このクエストは引き受けられない」
「はっ、はい」
「まずは……」
◇◇◇
僕はデリアの服装を見て、言った。
「そのきれいな恰好。野盗からすれば、どうぞ狙って下さいって言っているようなものだよ」
「!」
「このお金で一番安い服を買って、それに着替えて下さい」
「でっでもっ。この服はおばあちゃんが買ってくれた服で、私もお気に入りで……」
「さっきも言ったけど、こちらの条件を受け入れてくれないと、このクエストは引き受けられない。それにその立派なトランク。それもどうぞ狙って下さいと言っているようなものだ」
「こっ、これには私の焼いたクッキーがたくさん入っていて、おばあちゃんに食べてもらいたくて……」
「もしこのクエストを本気で引き受けてほしいなら、このお金で一番安いザックを買って、荷物もそこに入る範囲にしてください。長い髪も一つにまとめて、かぶりものに隠れるようにしてください」
「……」
デリアは黙ってしまった。
◇◇◇
沈黙に耐えかねてか、シモーネさんが口を開いた。
「デリアちゃんといったかしら。あなたの望みを全部叶えるとなると、やはり、馬車を雇った方がいいわね。きっちりした護衛をつけて。金貨何枚かかるかしれないけどね」
「そっ、そんな……」
デリアはその次の言葉が出てこない。
シモーネさんは小さく息を吐いた後、続けた。
「デリアちゃん。あなたのおばあちゃんは何を一番望んでいるのかしらね」
「!」
「おばあちゃんが一番望んでいることって、きれいに着飾ったあなたを見ること?あなたの焼いたクッキーをたくさん食べること?それとも……」
「……」
「亡くなられる前にどんな形であれ、あなたに会うこと?」
「……」
デリアは黙って下を向いた。
◇◇◇
「分かりました。条件は全て受け入れます。おばあちゃんはきっと何より私に会いたいはずです」
デリアは決意を秘めた顔で前を向いた。
「デリアちゃんは良し。で、クルト君、これで本当に、このクエスト引き受けるの?」
シモーネさんは真剣な顔を崩していない。
僕には正直自信はなかった。
今まで倒してきたのは殆どがスライム。後は何匹か迷い込んで来たコボルトを倒したくらいだ。だけど今度は……
間違いなく、今度は相手が人間になる。悪人とは言え、僕に倒せるのか。
(いや)僕は頭を振った。
やるしかない。今回は何故かそういう気がしているのだ。理由は僕にも分からない。
僕はデリアの目を真っ直ぐ見つめると言った。
「デリア。僕は今まで『護衛クエスト』をやったことがない。自信もない。君にも最後の護身用に僕の使ってきた『ひのきの棒』を持ってもらいたい。それでもクエストを発注してくれますか?」
デリアは言った。
「はい」
即答だった。
「デリアちゃん。どうしてそんな?」
シモーネさんはデリアの即答に相当驚いたようだ。
◇◇◇
「私は大商人の娘です。たくさんの使用人に囲まれて生活しています。だけど、今のクルト君みたいに本気で厳しいことを言ってくれる人は一人もいません。みんな、私の前ではちやほやしたようなことを言うけど、裏では陰口を言っているのです」
(これだ。やはり、この娘はかつての僕なんだ)
僕は思った。
「クルト君が言っていることは確かに厳しい。でも、本当のことを言ってくれている。だから、私もやってみたいんです」
「それでクルト君。これでクエスト受けるの?危険なことには変わりないよ」
シモーネさんはとうとうあきれ顔になってきた。
そして、僕は最後の決断をした。
「やりますっ! 僕は『無謀死にぞこないのグスタフ』の弟子ですよ」
「あ!」
その時の僕の顔を見たシモーネさんは思わず声を上げた。
◇◇◇
「クッ、クルト君が笑ったよ。今の見た?デリアちゃん?」
シモーネさんの問いに、デリアは当惑しながら答えた。
「えっ、ええ。確かに笑いました。初めて見た時から不愛想な人だなあと思ってましたけど」
「不愛想なんてもんじゃないよ」
シモーネさんがたたみかける。
「もう3年近くの付き合いになるけど、クルト君が笑ったところ初めて見たよ」
そんな失礼な。不愛想なのは認めるけど、人を鉄仮面か何かみたいに。
「ふふふふ。ははははは」
シモーネさんは大笑いし始めた。
「これは幸先いいかもね。きっと、今回はクルト君にとっても、デリアちゃんにとっても飛躍のチャンスになるかもしれない」
僕はゆっくり口を開いた。
「クルト君っ!」
シモーネさんの心底驚愕した声が飛んだ。
少女の表情は一気に明るくなった。
「どっ、どんな条件ですかっ? 何でも言って下さいっ!」
僕は少女がテーブルに撒いたお金のうち、銀貨を1枚取り出した。
「シモーネさん。これで槍は買えますか」
シモーネさんは一見厳しい表情のままだったが、少し口角が上がっていた。
「買えるわね。武器を槍に持ち替えるのね」
僕は少女に向き直ると言った。
「はい。それとあなた、名前は?」
「デリア。デリア・ファーレンハイト」
「デリア。これから厳しいことをいくつも言う。それを君が出来ないなら、このクエストは引き受けられない」
「はっ、はい」
「まずは……」
◇◇◇
僕はデリアの服装を見て、言った。
「そのきれいな恰好。野盗からすれば、どうぞ狙って下さいって言っているようなものだよ」
「!」
「このお金で一番安い服を買って、それに着替えて下さい」
「でっでもっ。この服はおばあちゃんが買ってくれた服で、私もお気に入りで……」
「さっきも言ったけど、こちらの条件を受け入れてくれないと、このクエストは引き受けられない。それにその立派なトランク。それもどうぞ狙って下さいと言っているようなものだ」
「こっ、これには私の焼いたクッキーがたくさん入っていて、おばあちゃんに食べてもらいたくて……」
「もしこのクエストを本気で引き受けてほしいなら、このお金で一番安いザックを買って、荷物もそこに入る範囲にしてください。長い髪も一つにまとめて、かぶりものに隠れるようにしてください」
「……」
デリアは黙ってしまった。
◇◇◇
沈黙に耐えかねてか、シモーネさんが口を開いた。
「デリアちゃんといったかしら。あなたの望みを全部叶えるとなると、やはり、馬車を雇った方がいいわね。きっちりした護衛をつけて。金貨何枚かかるかしれないけどね」
「そっ、そんな……」
デリアはその次の言葉が出てこない。
シモーネさんは小さく息を吐いた後、続けた。
「デリアちゃん。あなたのおばあちゃんは何を一番望んでいるのかしらね」
「!」
「おばあちゃんが一番望んでいることって、きれいに着飾ったあなたを見ること?あなたの焼いたクッキーをたくさん食べること?それとも……」
「……」
「亡くなられる前にどんな形であれ、あなたに会うこと?」
「……」
デリアは黙って下を向いた。
◇◇◇
「分かりました。条件は全て受け入れます。おばあちゃんはきっと何より私に会いたいはずです」
デリアは決意を秘めた顔で前を向いた。
「デリアちゃんは良し。で、クルト君、これで本当に、このクエスト引き受けるの?」
シモーネさんは真剣な顔を崩していない。
僕には正直自信はなかった。
今まで倒してきたのは殆どがスライム。後は何匹か迷い込んで来たコボルトを倒したくらいだ。だけど今度は……
間違いなく、今度は相手が人間になる。悪人とは言え、僕に倒せるのか。
(いや)僕は頭を振った。
やるしかない。今回は何故かそういう気がしているのだ。理由は僕にも分からない。
僕はデリアの目を真っ直ぐ見つめると言った。
「デリア。僕は今まで『護衛クエスト』をやったことがない。自信もない。君にも最後の護身用に僕の使ってきた『ひのきの棒』を持ってもらいたい。それでもクエストを発注してくれますか?」
デリアは言った。
「はい」
即答だった。
「デリアちゃん。どうしてそんな?」
シモーネさんはデリアの即答に相当驚いたようだ。
◇◇◇
「私は大商人の娘です。たくさんの使用人に囲まれて生活しています。だけど、今のクルト君みたいに本気で厳しいことを言ってくれる人は一人もいません。みんな、私の前ではちやほやしたようなことを言うけど、裏では陰口を言っているのです」
(これだ。やはり、この娘はかつての僕なんだ)
僕は思った。
「クルト君が言っていることは確かに厳しい。でも、本当のことを言ってくれている。だから、私もやってみたいんです」
「それでクルト君。これでクエスト受けるの?危険なことには変わりないよ」
シモーネさんはとうとうあきれ顔になってきた。
そして、僕は最後の決断をした。
「やりますっ! 僕は『無謀死にぞこないのグスタフ』の弟子ですよ」
「あ!」
その時の僕の顔を見たシモーネさんは思わず声を上げた。
◇◇◇
「クッ、クルト君が笑ったよ。今の見た?デリアちゃん?」
シモーネさんの問いに、デリアは当惑しながら答えた。
「えっ、ええ。確かに笑いました。初めて見た時から不愛想な人だなあと思ってましたけど」
「不愛想なんてもんじゃないよ」
シモーネさんがたたみかける。
「もう3年近くの付き合いになるけど、クルト君が笑ったところ初めて見たよ」
そんな失礼な。不愛想なのは認めるけど、人を鉄仮面か何かみたいに。
「ふふふふ。ははははは」
シモーネさんは大笑いし始めた。
「これは幸先いいかもね。きっと、今回はクルト君にとっても、デリアちゃんにとっても飛躍のチャンスになるかもしれない」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる