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第25話 ギャルに踏まれる童貞
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先週末は悪夢だった。
なぜかと言えば図書館の一件もあるが、間違いなくメラニーさんが襲来したことで俺の休みは死んだ…
しかし今日は何もない。
誰もくる予定もない。
休みだ!
俺は基本家でゴロゴロするのが大好きなのだ。
…しかし俺の部屋でゴロゴロするやつがいるせいで落ち着かない。
「おいカレン、休みの時は自分のベッドで寝ろよ!」
「このベッドが落ち着くの。」
「朝ごはんどうすんの?」
「ラーメン」
「いや朝からラーメンはちょっとなぁ…」
カレンは普段はかなり規則正しい。
朝も早いし夜更かしもしない。
しかし休日のこいつはどうした!?
もう10時になるというのに一向にベッドから出てこない。
どこに隠し持っていたのか、ベッドでスナック菓子を食べてボロボロ溢している。
もう3袋目だぞ…
グータラすぎるだろ!
ちょっとひどいなこれ…
「快斗もゴロンしよ?」
「いや、そうしたいけど横でボリボリ菓子食べられたら落ち着かないの!もういいよ俺があっちいくから…」
そして俺はカレンの部屋に入った。
壁の穴は木板を打ち付けて塞いでいるが、カレンがお菓子を食べる音は丸聞こえだ…
アンの暗示に俺を加えておいてよかった。
前みたいに蹴り飛ばされてたら身体がもたん。
あいつらは地球の裏側からでも飛んでくるからな…
そういえばあいつと昨日キスしなかったな…
家に帰ってからはくっついてこなかったし、風呂から出たらすぐに寝てたし…
くそ、なんで解禁された途端にしてこないんだよ!
あぁ、お腹すいた。
「カレン、なんか買ってくるから!いるもんある?」
「ポテチ」
「まだ菓子食うのかよ!」
「ポテチ」
「あーもう、はいはい」
「あ!」
「今度はなんだ!?」
「コンソメね」
「わかったよ!!」
はぁ…全然イチャイチャライフじゃねぇし…
コンビニでお菓子とカップ麺を買ってから家に向かっていると、女の子に声をかけられた。
「あの…桜庭さん…ですよね?」
「は、はい?そうだけど君は?」
黒髪ショートのしっかりした顔立ちの美人な女の子は休日だというのに制服を着ていた。
しかもうちの制服だ。
「君もラブ高の生徒?でもはじめましてだよね?」
「は、はい。私2年の加賀《かが》って言います。この前の選挙での桜庭さんの大活躍を見て…一度お話ししてみたいなって」
なん…だと!?
こ、これはもしや…
いや、そんなわけがない。
俺は学校始まって唯一の童貞だぞ!?
「あの、よかったらこの後ランチでもどうですか?」
「え、俺と?二人で!?」
「は、はい…ダメですか?」
ま、間違いない…
これは…逆ナンだ!!
逆ナンパ
通常ナンパは男が女に声をかけるものと定義づけられているため、意味はそのまま逆である。
女が男に声をかけて誘う行為だが、これ自体希少であり、モテるやつの極一部にしか訪れない奇跡体験である。
「も、もちろん…と言いたいんですけど…」
カレンのポテチ、持って帰ってやったほうがいいかな…
あいつ腹を空かせて待って…
待ってるわけないわ!
朝から4袋もポテチ食うやつがあるか!
それに散らかし放題しやがって…
ほっといても勝手になんか食べるだろ、猫みたいなやつだし。
「いけませんか?」
「いえ、行きましょう。」
初めて女の人から誘われた…
嘘だろ、俺ってもしかしてモテてる!?
そして俺は嬉しそうに加賀さんの背中を追いかけようとしたところで意識が途絶えた。
「うう…、ん?ここは!?」
「久しぶりだね、チェリー。」
「あ、あなたは、蓮水さん!?」
水前寺蓮水《すいぜんじはすみ》、ラブ高3年生で、学校のジャンル別女子ランキングでギャル部門トップに君臨する、ギャルクイーンである。
無駄に派手すぎず、しかしながらしっかりとギャルに必要な明るさもあり化粧の濃さも絶妙で、ギャル好きの中では早くも殿堂入りしているとかなんとか。
俺は去年の文化祭の余興で、ギャルに踏まれる童貞はどれほど惨めなのかという残虐な出し物に駆り出され、全校生徒の前で蓮水さんに踏まれたという縁から顔見知りである(いや、これはご褒美でした…)
「なんで蓮水さんが?ってあれ?縛られてる…」
俺は大の字にされ、手足をベッドの角にロープで縛られていた。
ここは…どこかのホテルか?
「あれ?加賀さんは!?」
「あの子は囮りよ、あんたが逆ナンなんてされるわけないでしょ。」
う、それは言わないで…
「早速だけど、あんたの童貞は私がもらいうけるわ。」
…なん…だと
「蓮水さんが!?」
俺は実はギャルが好きだ。
そして蓮水さんはタイプか否かで言えばゲロタイプだ。
いやほんとギャル好きな人ならわかると思うけど、めっちゃ可愛いんだって!
あのアイシャドーとか巻いた髪とか着崩した制服とか腰に巻いたカーデガンとか上から下までギャルの見本なんだよ!
そんな蓮水さんが俺の童貞を…
「私に奪われるんなら光栄だろ?あんたのことだから挿れた瞬間終わるかもね」
もう俺の上にまたがってきている。
ああ、香水のいい香りが…
俺、今日でチェリーじゃなくなるんだ…
長かった…俺はやっと大人の階段を登るんだ…
じゃないだろ!
「ちょっと、解いてください!ダメだから、ダメなんですって!」
「なによ、私じゃ不満?あんた清楚系が好きだっけ?」
「いやむしろギャル大好きです!蓮水さんとかクッソタイプですけど!でもダメなもんはダメなんです!」
そうだ、俺は童貞だからカレンの側にいられるんだ。
童貞じゃなくなった俺はあいつの側にはいられない…
それに俺の初めては絶対に…
「じゃいいじゃん、あんたのここは正直に反応してるわ?もうさっさと済ますわよ!」
「やめてー!俺の下半身のバカー!誰か助けてー!」
俺のパンツがずらされた瞬間だった。
ドアを蹴り破ってアンが部屋に乱入してきた。
いやなんで!?ありがたいけどなんで!?
「な、なによあんた!?」
白衣の男は微笑んだ。
「き、きも!いいところなんだから帰れよ!」
白衣の男は悲しんだ。
「な、なによ何か言いなさいよ!もう邪魔しないでくれる?いいところなの!」
白衣の男はギャルに襲い掛かった。
「キャー!」
蓮水さんはよほどアンが生理的に受け付けなかったのか、押し倒されそうになったところで悲鳴をあげて
逃げていった。
「アンさん!なんか知らんけど助かったよ。ありがとう!」
アンは悲しそうだ。
「そ、そうだ早くロープ解いてくれ!」
アンは悲しそうだ
「いやもう早くしろや!!」
ロープを得意の蹴りでぶち切ってくれて、俺は助かった…
アンは悲しそうに先に出ていった。
後で高村さんに聞いたところ、俺にもしものことがあった時のためにアンに俺が「助けて」と叫んだら駆けつける暗示をかけさせていたそうだ…
いや、ほんと便利な世界チャンピオンだな!
悲しそうだった理由はただ一つ、アンも大のギャル好きだそうで、キモいと言われたのが相当辛かったとか…
あいつと好みが被るとは…
部屋を出ようとすると電話が鳴った。
校長からだ。
「ハロハローモテモテボーイ。一つありがたい忠告だよん。なんかチームアマゾネスと呼ばれる美人軍団が誰かの指示で君の童貞を狙ってるらしいから気をつけてねん。君が童貞じゃないとカレンとはいささないからねー。死ぬ気でチンコ隠せよ小童!」
なんだと!?
俺の童貞を…え、なんで!?
いるか?俺の童貞…いや、これにもなにか理由があるのか?そうなのか?
もうくだらない企みが多すぎて頭ぐちゃぐちゃだよ俺…
監禁されたのは寮から比較的近くのホテルで、俺は何とか寮に童貞のまま帰ることができた…
「ただいまー、ってうわ、カレンどしたの!?」
カレンが玄関先で仁王立ちしていた。
すごい剣幕だ…
「快斗、女の子の匂いする。誰かと遊んできた。」
お前は犬か!
と言いたいが図星というのか、あれは遊んできたになるのか?
「いや、あのな、遊んでなんて…」
「匂いいっぱいついてる、イチャイチャしてきた」
カレンは見たことないほどに顔がふくれている
「違う違う!俺はなんもしてないんだって!だからそんなに怒るなよ!」
「ほんと?ほんとにほんと?ほんとのほんと?」
「うん、ほんとのほんとだって。」
「うー…じゃ許す。あ、ポテチは?」
「切り替えはやっ!あ、ポテチどっか忘れてきた…」
「じゃ許さない」
「食べ物の恨み強すぎるだろ!」
しかしなんとか機嫌はとれた。
でもやはりキスをしてこない…なんかあったのか?
いや、もしかしてほかに好きな男が!?いや、それはないとしても俺に愛想尽きたとか?まぁ何億も肩代わりしてもらってるもんなぁ…
とりあえずもう夕方になっていたので、カップ麺を作って食べることにした。
「いただきます、なぁなんで急にキスしてこなくなったんだ?」
「…秘密」
「なんか最近秘密多くないか?言わないとわかんないこともあるぞ?」
「快斗からしてこない…」
「え?今なんて…」
「たまには快斗からしてほしいのに…」
カレンは顔を赤くして膨らませていた。
怒っているような照れているような、拗ねた子供のような態度がこれまた可愛い。
「え、俺から?」
「うん、キスは男からだって、これに書いてた。」
カレンが取り出した本は校長の著書の一つ『二人はチュー学生』だった。
これは中学生の男女がキスをどっちが先にするかという心理戦青春ラブコメだが、中盤のヒロインが病気とわかるシーンから話が一変し、そこからはタイトルでは想像もできない内容と評判になり涙で字が読めないとの書き込みが相次ぎ、急遽映画化された後に週間興行収入の日本新記録を叩き出したモンスター作品だ。
最後に初めてキスをするシーンで、主人公の男が負けを認めるシーンなど知らない人はいないと言われているが…
あ、昨日の弁当の時…
作品の最後のシーンでは病院を抜けて二人で学校に行き、一つの椅子に二人で座ってキスをするのだ。
あれをやりたかったのか?
「あのなぁ、いちいち校長の作品に影響うけてくるなよな…」
「これすごく感動したの。快斗も降参して。」
なんだそんなことだったのかよと安心したあとカレンを見ると、目をつぶって唇をツンと出したカレンの顔が
俺の目の前にあった。
「う、うわっ!え、えと…」
「ん、して。」
「いや、でも…」
「して!んー」
近づきすぎていい匂いがするのとカレンの胸がちょこんと当たって俺の羞恥心よりチューしたいが勝った。
「ん、ん」
やばっ!
一日してなかった分これヤバすぎるわ…
しかも携帯が鳴らない安心感…これが一番嬉しいかも!
脳味噌が沸騰しそうになりながら、カレンの唇から離れた。
「カ、カレン…」
「えへへ、快斗からしてくれた。やった。」
かはっ!
俺はもう何回キュン死しそうになったかわからんが、今日という今日はもう死んでもいいと本気で思った。
「カ、カレンもっかい…」
「ダメ、ムード大事って書いてた。」
くそっ、なんで先にこの本読んでなかったんだこいつ!
今になってキスをコントロールしてくるなんて卑怯すぎるだろ…
「じゃまたムードよかったら勝手にするからな!」
「うん…」
照れるなよー!
そこは変なこと言えよー!
ただの可愛い女の子じゃねえかよー、俺の理性が崩壊するから女の子らしくしないでー
俺が照れるカレンに勝手に悶えていると、急に窓をぶち破って何かが飛んできた。
「うわっ、…って矢文?」
壁に矢が突き刺さっていた。
いや、これ結構よくあるやつだけど当たったら普通に死ぬよね…
手紙を開けると果たし状と書かれていた。
『月曜日、カレン様を賭けた決戦を要求する。テニブス』
これが校長の言ってたやつか…
決戦?いやせめて内容かけよ!
それにテニブスってなに?手に不細工乗ってるんですか!?
今まで以上にアホな気配がプンプン漂ってくるな…
「快斗、矢が飛んできた、怖い…」
「あ、ああ、大丈夫か?破片を片付けたら風呂入って寝よう。明日も休みだし…」
「もう!こういう時に抱きしめてチューなの!快斗わかってない!」
なんかチューして欲しかったみたいだった…
どんなにキスを重ねても、どんなにカレンを抱きしめても、俺は所詮童貞なのだ、ムードを読むなどハードルが高すぎるんだって!!
しかも矢が飛んできたから抱きしめてチューするって、それほんとにあってんの!?
結局この日はこのあとキスをしてくれなかった…
そして明日は日曜日だ。
明日こそはもっとチューしてまったりするんだと意気込んだが、まぁゆっくりできるわけもなかった…
次回 フライングで次々にテニブス軍団がやってくるが、そこにはなんと!?
いやまじで日時は守れよ…
なぜかと言えば図書館の一件もあるが、間違いなくメラニーさんが襲来したことで俺の休みは死んだ…
しかし今日は何もない。
誰もくる予定もない。
休みだ!
俺は基本家でゴロゴロするのが大好きなのだ。
…しかし俺の部屋でゴロゴロするやつがいるせいで落ち着かない。
「おいカレン、休みの時は自分のベッドで寝ろよ!」
「このベッドが落ち着くの。」
「朝ごはんどうすんの?」
「ラーメン」
「いや朝からラーメンはちょっとなぁ…」
カレンは普段はかなり規則正しい。
朝も早いし夜更かしもしない。
しかし休日のこいつはどうした!?
もう10時になるというのに一向にベッドから出てこない。
どこに隠し持っていたのか、ベッドでスナック菓子を食べてボロボロ溢している。
もう3袋目だぞ…
グータラすぎるだろ!
ちょっとひどいなこれ…
「快斗もゴロンしよ?」
「いや、そうしたいけど横でボリボリ菓子食べられたら落ち着かないの!もういいよ俺があっちいくから…」
そして俺はカレンの部屋に入った。
壁の穴は木板を打ち付けて塞いでいるが、カレンがお菓子を食べる音は丸聞こえだ…
アンの暗示に俺を加えておいてよかった。
前みたいに蹴り飛ばされてたら身体がもたん。
あいつらは地球の裏側からでも飛んでくるからな…
そういえばあいつと昨日キスしなかったな…
家に帰ってからはくっついてこなかったし、風呂から出たらすぐに寝てたし…
くそ、なんで解禁された途端にしてこないんだよ!
あぁ、お腹すいた。
「カレン、なんか買ってくるから!いるもんある?」
「ポテチ」
「まだ菓子食うのかよ!」
「ポテチ」
「あーもう、はいはい」
「あ!」
「今度はなんだ!?」
「コンソメね」
「わかったよ!!」
はぁ…全然イチャイチャライフじゃねぇし…
コンビニでお菓子とカップ麺を買ってから家に向かっていると、女の子に声をかけられた。
「あの…桜庭さん…ですよね?」
「は、はい?そうだけど君は?」
黒髪ショートのしっかりした顔立ちの美人な女の子は休日だというのに制服を着ていた。
しかもうちの制服だ。
「君もラブ高の生徒?でもはじめましてだよね?」
「は、はい。私2年の加賀《かが》って言います。この前の選挙での桜庭さんの大活躍を見て…一度お話ししてみたいなって」
なん…だと!?
こ、これはもしや…
いや、そんなわけがない。
俺は学校始まって唯一の童貞だぞ!?
「あの、よかったらこの後ランチでもどうですか?」
「え、俺と?二人で!?」
「は、はい…ダメですか?」
ま、間違いない…
これは…逆ナンだ!!
逆ナンパ
通常ナンパは男が女に声をかけるものと定義づけられているため、意味はそのまま逆である。
女が男に声をかけて誘う行為だが、これ自体希少であり、モテるやつの極一部にしか訪れない奇跡体験である。
「も、もちろん…と言いたいんですけど…」
カレンのポテチ、持って帰ってやったほうがいいかな…
あいつ腹を空かせて待って…
待ってるわけないわ!
朝から4袋もポテチ食うやつがあるか!
それに散らかし放題しやがって…
ほっといても勝手になんか食べるだろ、猫みたいなやつだし。
「いけませんか?」
「いえ、行きましょう。」
初めて女の人から誘われた…
嘘だろ、俺ってもしかしてモテてる!?
そして俺は嬉しそうに加賀さんの背中を追いかけようとしたところで意識が途絶えた。
「うう…、ん?ここは!?」
「久しぶりだね、チェリー。」
「あ、あなたは、蓮水さん!?」
水前寺蓮水《すいぜんじはすみ》、ラブ高3年生で、学校のジャンル別女子ランキングでギャル部門トップに君臨する、ギャルクイーンである。
無駄に派手すぎず、しかしながらしっかりとギャルに必要な明るさもあり化粧の濃さも絶妙で、ギャル好きの中では早くも殿堂入りしているとかなんとか。
俺は去年の文化祭の余興で、ギャルに踏まれる童貞はどれほど惨めなのかという残虐な出し物に駆り出され、全校生徒の前で蓮水さんに踏まれたという縁から顔見知りである(いや、これはご褒美でした…)
「なんで蓮水さんが?ってあれ?縛られてる…」
俺は大の字にされ、手足をベッドの角にロープで縛られていた。
ここは…どこかのホテルか?
「あれ?加賀さんは!?」
「あの子は囮りよ、あんたが逆ナンなんてされるわけないでしょ。」
う、それは言わないで…
「早速だけど、あんたの童貞は私がもらいうけるわ。」
…なん…だと
「蓮水さんが!?」
俺は実はギャルが好きだ。
そして蓮水さんはタイプか否かで言えばゲロタイプだ。
いやほんとギャル好きな人ならわかると思うけど、めっちゃ可愛いんだって!
あのアイシャドーとか巻いた髪とか着崩した制服とか腰に巻いたカーデガンとか上から下までギャルの見本なんだよ!
そんな蓮水さんが俺の童貞を…
「私に奪われるんなら光栄だろ?あんたのことだから挿れた瞬間終わるかもね」
もう俺の上にまたがってきている。
ああ、香水のいい香りが…
俺、今日でチェリーじゃなくなるんだ…
長かった…俺はやっと大人の階段を登るんだ…
じゃないだろ!
「ちょっと、解いてください!ダメだから、ダメなんですって!」
「なによ、私じゃ不満?あんた清楚系が好きだっけ?」
「いやむしろギャル大好きです!蓮水さんとかクッソタイプですけど!でもダメなもんはダメなんです!」
そうだ、俺は童貞だからカレンの側にいられるんだ。
童貞じゃなくなった俺はあいつの側にはいられない…
それに俺の初めては絶対に…
「じゃいいじゃん、あんたのここは正直に反応してるわ?もうさっさと済ますわよ!」
「やめてー!俺の下半身のバカー!誰か助けてー!」
俺のパンツがずらされた瞬間だった。
ドアを蹴り破ってアンが部屋に乱入してきた。
いやなんで!?ありがたいけどなんで!?
「な、なによあんた!?」
白衣の男は微笑んだ。
「き、きも!いいところなんだから帰れよ!」
白衣の男は悲しんだ。
「な、なによ何か言いなさいよ!もう邪魔しないでくれる?いいところなの!」
白衣の男はギャルに襲い掛かった。
「キャー!」
蓮水さんはよほどアンが生理的に受け付けなかったのか、押し倒されそうになったところで悲鳴をあげて
逃げていった。
「アンさん!なんか知らんけど助かったよ。ありがとう!」
アンは悲しそうだ。
「そ、そうだ早くロープ解いてくれ!」
アンは悲しそうだ
「いやもう早くしろや!!」
ロープを得意の蹴りでぶち切ってくれて、俺は助かった…
アンは悲しそうに先に出ていった。
後で高村さんに聞いたところ、俺にもしものことがあった時のためにアンに俺が「助けて」と叫んだら駆けつける暗示をかけさせていたそうだ…
いや、ほんと便利な世界チャンピオンだな!
悲しそうだった理由はただ一つ、アンも大のギャル好きだそうで、キモいと言われたのが相当辛かったとか…
あいつと好みが被るとは…
部屋を出ようとすると電話が鳴った。
校長からだ。
「ハロハローモテモテボーイ。一つありがたい忠告だよん。なんかチームアマゾネスと呼ばれる美人軍団が誰かの指示で君の童貞を狙ってるらしいから気をつけてねん。君が童貞じゃないとカレンとはいささないからねー。死ぬ気でチンコ隠せよ小童!」
なんだと!?
俺の童貞を…え、なんで!?
いるか?俺の童貞…いや、これにもなにか理由があるのか?そうなのか?
もうくだらない企みが多すぎて頭ぐちゃぐちゃだよ俺…
監禁されたのは寮から比較的近くのホテルで、俺は何とか寮に童貞のまま帰ることができた…
「ただいまー、ってうわ、カレンどしたの!?」
カレンが玄関先で仁王立ちしていた。
すごい剣幕だ…
「快斗、女の子の匂いする。誰かと遊んできた。」
お前は犬か!
と言いたいが図星というのか、あれは遊んできたになるのか?
「いや、あのな、遊んでなんて…」
「匂いいっぱいついてる、イチャイチャしてきた」
カレンは見たことないほどに顔がふくれている
「違う違う!俺はなんもしてないんだって!だからそんなに怒るなよ!」
「ほんと?ほんとにほんと?ほんとのほんと?」
「うん、ほんとのほんとだって。」
「うー…じゃ許す。あ、ポテチは?」
「切り替えはやっ!あ、ポテチどっか忘れてきた…」
「じゃ許さない」
「食べ物の恨み強すぎるだろ!」
しかしなんとか機嫌はとれた。
でもやはりキスをしてこない…なんかあったのか?
いや、もしかしてほかに好きな男が!?いや、それはないとしても俺に愛想尽きたとか?まぁ何億も肩代わりしてもらってるもんなぁ…
とりあえずもう夕方になっていたので、カップ麺を作って食べることにした。
「いただきます、なぁなんで急にキスしてこなくなったんだ?」
「…秘密」
「なんか最近秘密多くないか?言わないとわかんないこともあるぞ?」
「快斗からしてこない…」
「え?今なんて…」
「たまには快斗からしてほしいのに…」
カレンは顔を赤くして膨らませていた。
怒っているような照れているような、拗ねた子供のような態度がこれまた可愛い。
「え、俺から?」
「うん、キスは男からだって、これに書いてた。」
カレンが取り出した本は校長の著書の一つ『二人はチュー学生』だった。
これは中学生の男女がキスをどっちが先にするかという心理戦青春ラブコメだが、中盤のヒロインが病気とわかるシーンから話が一変し、そこからはタイトルでは想像もできない内容と評判になり涙で字が読めないとの書き込みが相次ぎ、急遽映画化された後に週間興行収入の日本新記録を叩き出したモンスター作品だ。
最後に初めてキスをするシーンで、主人公の男が負けを認めるシーンなど知らない人はいないと言われているが…
あ、昨日の弁当の時…
作品の最後のシーンでは病院を抜けて二人で学校に行き、一つの椅子に二人で座ってキスをするのだ。
あれをやりたかったのか?
「あのなぁ、いちいち校長の作品に影響うけてくるなよな…」
「これすごく感動したの。快斗も降参して。」
なんだそんなことだったのかよと安心したあとカレンを見ると、目をつぶって唇をツンと出したカレンの顔が
俺の目の前にあった。
「う、うわっ!え、えと…」
「ん、して。」
「いや、でも…」
「して!んー」
近づきすぎていい匂いがするのとカレンの胸がちょこんと当たって俺の羞恥心よりチューしたいが勝った。
「ん、ん」
やばっ!
一日してなかった分これヤバすぎるわ…
しかも携帯が鳴らない安心感…これが一番嬉しいかも!
脳味噌が沸騰しそうになりながら、カレンの唇から離れた。
「カ、カレン…」
「えへへ、快斗からしてくれた。やった。」
かはっ!
俺はもう何回キュン死しそうになったかわからんが、今日という今日はもう死んでもいいと本気で思った。
「カ、カレンもっかい…」
「ダメ、ムード大事って書いてた。」
くそっ、なんで先にこの本読んでなかったんだこいつ!
今になってキスをコントロールしてくるなんて卑怯すぎるだろ…
「じゃまたムードよかったら勝手にするからな!」
「うん…」
照れるなよー!
そこは変なこと言えよー!
ただの可愛い女の子じゃねえかよー、俺の理性が崩壊するから女の子らしくしないでー
俺が照れるカレンに勝手に悶えていると、急に窓をぶち破って何かが飛んできた。
「うわっ、…って矢文?」
壁に矢が突き刺さっていた。
いや、これ結構よくあるやつだけど当たったら普通に死ぬよね…
手紙を開けると果たし状と書かれていた。
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決戦?いやせめて内容かけよ!
それにテニブスってなに?手に不細工乗ってるんですか!?
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「あ、ああ、大丈夫か?破片を片付けたら風呂入って寝よう。明日も休みだし…」
「もう!こういう時に抱きしめてチューなの!快斗わかってない!」
なんかチューして欲しかったみたいだった…
どんなにキスを重ねても、どんなにカレンを抱きしめても、俺は所詮童貞なのだ、ムードを読むなどハードルが高すぎるんだって!!
しかも矢が飛んできたから抱きしめてチューするって、それほんとにあってんの!?
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九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
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