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第47話 フィアンセ
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「足元くらいから気を付けて」
「快斗、待ってちょっと怖いよ」
夜の河川敷は、意外と人が多い。
とはいってもカップルばっかりで俺たち以外にも花火を楽しむ人が数組いた。
「よし、じゃあなにからやる?」
「線香花火!」
え、あれは最後にやるもんじゃ…まぁいっか。
「ほら、揺れると消えるぞ?」
「ムムム…あ、落ちちゃった…」
二人で花火を楽しんでいた時、少し離れたところで男が女に土下座している…
気になって目を凝らすと、蓮水さんに薬師寺さんが土下座していた…
「ちょっと、なんで買ってきた花火を温泉に忘れてくるの!?マジで使えないんだけど!死ね、もう帰る!」
「ま、待ってくれハスミン!ダッシュで買ってくるから!だから帰るとかいうなよ!?」
「…じゃあ一緒に買いに行く?」
「ああ!行こうハスミン!」
なんか手を繋いでどっかに行ってしまった。
多分薬師寺さんの女性カウンターは5226人で打ち止めか…いや5227人目の人が彼女ってのもどうなんだ…?
その反対側でも男女が揉めている…ん?校長!?
「頼む佐津江くん、メラニーを返しておくれ…お願いこの通りじゃ!」
校長が命先輩に土下座していた…
隣にいるメラニーさんはなぜか命先輩に腕組みしている…
「校長、別にいいんですけどもう例のアレは優先できませんよ?別にそれでもいいんなら返してあげなくもないですけどね?」
「な、それはいかん!なんでじゃ、そんな意地悪を言わんでくれ…頼む佐津江くん、私らの仲じゃろう?」
もうメラニーさんはどっちの何かすらわからんな…
なんか不敵に笑ってるけど…
「お、快斗くんとカレンではないか!会いたかったよーん、か弱き老人をみんながいじめるんじゃ—」
なんかすがってきた…
「いや、校長例のヤツってなんなんですか!?間男に屈する必要があるくらい大事なの!?」
「うむ…あれがないと私は生きていけん…」
「一体なにを持ってるんだよただの高校生だぞこの人も!?」
どうなってるんだ…
気がついたらメラニーさんと命先輩はいなかった…
「校長…もうあきらめて帰ったらどうですか?」
「い、いやじゃ!だって寂しいんじゃ…そうじゃ、花火わしも混ぜてくれんか?」
「え、絶対に嫌だわ!」
校長を追い返した…
まぁ散々人にひどいことしてるから同情はしないけどな…
「パパ、惨め」
「うん、娘に言われると響くよな…」
なんで花火をするだけでこんな光景を見せられるのかとうんざりしながらも、その後は楽しく花火をした。
家に帰るとカレンは疲れていたのかすぐに寝てしまった。
翌日は朝ご飯を食べてから、寮に戻る準備をした。
「カレンちゃん、またゆっくりとおいでよ。いつでも歓迎するわね」
「はい、楽しかったです。今度はお正月にでもゆっくりきます!」
相変わらずよくできた嫁だ…
帰りの電車の中で、数日ぶりに帰る寮に対して若干ワクワクしてしまっている自分に気づいてしまった…
「はぁ、なんかあの寮が帰る場所だって自然に思ってしまう自分が情けない…」
「快斗、寮に帰ったらイチャイチャするの!」
カレンも結構ストレスが溜まっていたのか、イチャイチャモードになっていた。
「もうすぐ寮だな、なんかすごく久しぶりな気が…はぁ!?」
寮の前には大勢の人が押し寄せていた。
「ちょ、ちょっとこれなんですか?」
「あ、カレン様だ!それに諸悪の根源のチェリーと一緒だ!」
どうやらファンクラブが押し寄せてきていたようだ…
「追え!捕まえてチェリーを打ち首にしろ!」
「いやいや怖いわ!なんで死なにゃならんの!?カレン、逃げるぞ!」
急いでカレンの手を引いて逃げた。
「はぁ…せっかくゆっくりできると思ったのに…、急にどうしたんだ?」
「快斗、これ」
なんか学校の掲示板というものをカレンが見せてきた。
ラブ高掲示板?
この掲示板にはあることないことの噂が乱立しているが、最近では使われることは少なく、廃れていたそうなのだが…
「なになに?ついに校長の娘がチェリーの手に落ちた?二人は結婚するらしい。なんだこれ!?誰がいったい…」
「快斗、私たち結婚するの?」
「え、いやいやまだそんな話は…」
「ふーん、しないんだ」
「いやいやそうじゃなくて!」
「じゃあ…したい?」
「え…うん…」
「わかった!してあげる!」
なぜか逃走中に婚約者ができた…
童貞なのに将来の伴侶が見つかった俺は多分幸せ者なのだろうと、意味不明な幸せをかみしめていた…
「いや、それよりもどうすんの!?寮が占拠されてるじゃん!」
「大丈夫、アン呼んでおいた。」
「人遣いあらいよな…」
30分後、アンから「駆除完了」と連絡がきたので行ってみると、50人はいたファンが全員…蹴り倒されていた…
近所の人の通報で、集団への傷害事件としてアンが現行犯逮捕された…
「いや、この人は悪くないんですよ!」
「お知り合いの方ですか?でも彼は我々が止めても一心不乱に人を蹴り倒していましたから。まるで何かに取り憑かれたように…」
そこまでの忠誠心はどこから来るんだ…?
「カレン、アンになんて依頼したの?」
「1時間以内に倒したら100万円あげるっていっただけだよ?」
「それだよ!アンに大金詰んだら多分人殺しでもしそうだからやめてあげて!」
多分アンもまた、お金という魔物に取り憑かれた被害者なのだ…
アンの犠牲?によって解放された寮に戻ると、カレンがまたわがままを言いだした。
「お腹すいた、ピザ食べる!」
「いや、ピザ屋さんを屠《ほふ》ったのはあんたでしょうが…」
しかし一応電話をかけてみると電話が繋がったのでピザ2枚を注文してみた。
しかし1時間経ってもピザはこない…
「快斗、ピザまだー?」
「うーん、アンがいないから人手が足りてないんじゃないか?」
結局2時間待っても来ないので、カレンがイライラしてしまった。
「遅い!快斗、ラーメンにする!」
「うーん、ラーメンも同じような結果だと思うけど…」
アンは今、取り調べでも受けてるのかな…
テレビをつけると『世界チャンピオン アン・ジール逮捕!?』というニュースがもう出回っていた。
そして特集はされずスルーされていた…
夜になって忘れたころに誰かが来た。
もしかして…
玄関をみるとアンがいた。
「お前、無事だったのか?」
「お待たせしました」
「い、いやいいんだけど…もういいの?」
「保釈金払った」
「え、そんな金あったの?」
「チャンピオンベルト質にいれた」
「いやあれって返さないとダメなんじゃないの!?」
誰かお金出してやれよ…
「でも借金どうすんの?」
「自己破産」
「う、そうなるよな…」
こんなに頑張ってるんだからちょっとくらい何とかならんもんかな…
「次、ラスベガスで大勝負」
「お、ファイトマネーは?」
「1000万ドル」
「え、すごいな!頑張れよ!」
「…」
「どうしたんだ?相手が強いのか?」
「渡航費がない…」
「誰か頼むから出してやってくれ!!」
俺はその後カレンにお金を渡すように散々説得した。
そしていつもの寮生活が戻ってきた。
出前のピザを食べてカレンとのんびりして、一緒に寝て起きて。
また数日の間はだらだらとした時間を過ごしていたのだが、ある日手紙が一通寮のポストに入っていた。
「ん?俺宛てだ…誰からだろ?」
手紙にはこう書いてあった。
『しばらくお世話になります。あなたの愛しい人より』
…?
「ねぇ快斗、なんて書いてるの?」
「いや、ちょっとよくわかんないんだけど…」
手紙を見せると、カレンの表情が変わった。
「カレン?」
「…浮気…」
「は?」
「快斗が浮気した!私がいるのに浮気した!!」
「いや待て!どう解釈したらそうなるんだよ!?」
しかしカレンの怒りは収まらず何回かひっかかれた…
「とにかく落ち着けよ!多分いたずらだぞこれ?」
「ふーっ!!」
「いやだから猫かよ!」
なんとかカレンをなだめた後、もう一度手紙を見るとどうにも見覚えがある字だと気づいた。
でもラブ高の人ではなさそうだけど…
そうだ、純也に心当たりがないか聞いてみよう。
早速写真を撮って純也に送ると、すぐに返事がきた。
『ああ、その字なら桃香のだろ?』
俺はその文面をみて寒気がした…
「快斗、桃香って誰?」
「い、いや…え、でもなんで?」
木南桃香《きなみももか》、俺の中学の同級生なのだが俺のことを死ぬほどいじめてきていた女子グループのリーダーだ。
名前とは裏腹にちょっとゴツイ女で、全然可愛くもないくせになぜか女子のリーダーだった。
正直こいつのせいで地元を離れる気になったと言っても別に嘘ではないくらい俺が苦手とするやつなのだ…
もしかして地元で俺を見かけた?
それでまたなんかいたずらしてやろうとか、昔の血が騒いだ??
「快斗、顔色悪いよ?」
「う、ちょっとトラウマが…」
いやあれをいじめと呼ぶのは少々違うか…
縛られて一日倉庫に放置されたり、アルコールランプを投げつけられたり、寝てる間に髪の毛切られたり、勝手にリコーダーを舐めた事件を捏造されたり…
じ、地獄だった…
特に最後のは俺という人間が地元から居場所をなくすには十分な破壊力があった…
怖い…怖いよ…
「快斗、大丈夫。私がいるよ?」
「カレン…」
そうだ俺にはカレンがいる…
あんなくそ野郎に何かされたとしても…
でも本当に何しにくるんだ?それにしばらく世話になるって…?
俺が心配をしているその時だった。
ガシャンと玄関を強く開ける音がした。
「かーいとくーん、あっそびーましょ!」
こ、この声は…
嫌々玄関にいくと、そこにはスーパー美女が立っていた。
「…誰?」
「なによ!私よ私!桃香!快斗、会いに来たわよ!」
はぁー?
これが桃香?
いやだってあいつはなんかゴリラみたいな女だったし、髪の毛だっておかっぱだったのに…
今目の前にいるのはきれいな黒髪が長く伸びた、少しきつそうな顔だけど超美人だ…
「うそ、桃香ちゃん!?」
「ええ、きれいになったでしょ?ねぇ、その子誰?」
俺の横でひょこっと顔を出して桃香を睨みつけるカレンに指さした。
「私は快斗の彼女!お前誰だ!?」
「私?私は快斗を迎えに来たフィアンセよ」
はぁー???
もうその言葉を聞くと同時に発狂しかけるカレンと、何が何やらわからずに混乱する俺をよそに目の前で高笑いする美女との闘争が、ここに始まる…
次回 カレンに恋のライバル出現!?
桃香の狙いは一体!?
寮が修羅場と化す…
「快斗、待ってちょっと怖いよ」
夜の河川敷は、意外と人が多い。
とはいってもカップルばっかりで俺たち以外にも花火を楽しむ人が数組いた。
「よし、じゃあなにからやる?」
「線香花火!」
え、あれは最後にやるもんじゃ…まぁいっか。
「ほら、揺れると消えるぞ?」
「ムムム…あ、落ちちゃった…」
二人で花火を楽しんでいた時、少し離れたところで男が女に土下座している…
気になって目を凝らすと、蓮水さんに薬師寺さんが土下座していた…
「ちょっと、なんで買ってきた花火を温泉に忘れてくるの!?マジで使えないんだけど!死ね、もう帰る!」
「ま、待ってくれハスミン!ダッシュで買ってくるから!だから帰るとかいうなよ!?」
「…じゃあ一緒に買いに行く?」
「ああ!行こうハスミン!」
なんか手を繋いでどっかに行ってしまった。
多分薬師寺さんの女性カウンターは5226人で打ち止めか…いや5227人目の人が彼女ってのもどうなんだ…?
その反対側でも男女が揉めている…ん?校長!?
「頼む佐津江くん、メラニーを返しておくれ…お願いこの通りじゃ!」
校長が命先輩に土下座していた…
隣にいるメラニーさんはなぜか命先輩に腕組みしている…
「校長、別にいいんですけどもう例のアレは優先できませんよ?別にそれでもいいんなら返してあげなくもないですけどね?」
「な、それはいかん!なんでじゃ、そんな意地悪を言わんでくれ…頼む佐津江くん、私らの仲じゃろう?」
もうメラニーさんはどっちの何かすらわからんな…
なんか不敵に笑ってるけど…
「お、快斗くんとカレンではないか!会いたかったよーん、か弱き老人をみんながいじめるんじゃ—」
なんかすがってきた…
「いや、校長例のヤツってなんなんですか!?間男に屈する必要があるくらい大事なの!?」
「うむ…あれがないと私は生きていけん…」
「一体なにを持ってるんだよただの高校生だぞこの人も!?」
どうなってるんだ…
気がついたらメラニーさんと命先輩はいなかった…
「校長…もうあきらめて帰ったらどうですか?」
「い、いやじゃ!だって寂しいんじゃ…そうじゃ、花火わしも混ぜてくれんか?」
「え、絶対に嫌だわ!」
校長を追い返した…
まぁ散々人にひどいことしてるから同情はしないけどな…
「パパ、惨め」
「うん、娘に言われると響くよな…」
なんで花火をするだけでこんな光景を見せられるのかとうんざりしながらも、その後は楽しく花火をした。
家に帰るとカレンは疲れていたのかすぐに寝てしまった。
翌日は朝ご飯を食べてから、寮に戻る準備をした。
「カレンちゃん、またゆっくりとおいでよ。いつでも歓迎するわね」
「はい、楽しかったです。今度はお正月にでもゆっくりきます!」
相変わらずよくできた嫁だ…
帰りの電車の中で、数日ぶりに帰る寮に対して若干ワクワクしてしまっている自分に気づいてしまった…
「はぁ、なんかあの寮が帰る場所だって自然に思ってしまう自分が情けない…」
「快斗、寮に帰ったらイチャイチャするの!」
カレンも結構ストレスが溜まっていたのか、イチャイチャモードになっていた。
「もうすぐ寮だな、なんかすごく久しぶりな気が…はぁ!?」
寮の前には大勢の人が押し寄せていた。
「ちょ、ちょっとこれなんですか?」
「あ、カレン様だ!それに諸悪の根源のチェリーと一緒だ!」
どうやらファンクラブが押し寄せてきていたようだ…
「追え!捕まえてチェリーを打ち首にしろ!」
「いやいや怖いわ!なんで死なにゃならんの!?カレン、逃げるぞ!」
急いでカレンの手を引いて逃げた。
「はぁ…せっかくゆっくりできると思ったのに…、急にどうしたんだ?」
「快斗、これ」
なんか学校の掲示板というものをカレンが見せてきた。
ラブ高掲示板?
この掲示板にはあることないことの噂が乱立しているが、最近では使われることは少なく、廃れていたそうなのだが…
「なになに?ついに校長の娘がチェリーの手に落ちた?二人は結婚するらしい。なんだこれ!?誰がいったい…」
「快斗、私たち結婚するの?」
「え、いやいやまだそんな話は…」
「ふーん、しないんだ」
「いやいやそうじゃなくて!」
「じゃあ…したい?」
「え…うん…」
「わかった!してあげる!」
なぜか逃走中に婚約者ができた…
童貞なのに将来の伴侶が見つかった俺は多分幸せ者なのだろうと、意味不明な幸せをかみしめていた…
「いや、それよりもどうすんの!?寮が占拠されてるじゃん!」
「大丈夫、アン呼んでおいた。」
「人遣いあらいよな…」
30分後、アンから「駆除完了」と連絡がきたので行ってみると、50人はいたファンが全員…蹴り倒されていた…
近所の人の通報で、集団への傷害事件としてアンが現行犯逮捕された…
「いや、この人は悪くないんですよ!」
「お知り合いの方ですか?でも彼は我々が止めても一心不乱に人を蹴り倒していましたから。まるで何かに取り憑かれたように…」
そこまでの忠誠心はどこから来るんだ…?
「カレン、アンになんて依頼したの?」
「1時間以内に倒したら100万円あげるっていっただけだよ?」
「それだよ!アンに大金詰んだら多分人殺しでもしそうだからやめてあげて!」
多分アンもまた、お金という魔物に取り憑かれた被害者なのだ…
アンの犠牲?によって解放された寮に戻ると、カレンがまたわがままを言いだした。
「お腹すいた、ピザ食べる!」
「いや、ピザ屋さんを屠《ほふ》ったのはあんたでしょうが…」
しかし一応電話をかけてみると電話が繋がったのでピザ2枚を注文してみた。
しかし1時間経ってもピザはこない…
「快斗、ピザまだー?」
「うーん、アンがいないから人手が足りてないんじゃないか?」
結局2時間待っても来ないので、カレンがイライラしてしまった。
「遅い!快斗、ラーメンにする!」
「うーん、ラーメンも同じような結果だと思うけど…」
アンは今、取り調べでも受けてるのかな…
テレビをつけると『世界チャンピオン アン・ジール逮捕!?』というニュースがもう出回っていた。
そして特集はされずスルーされていた…
夜になって忘れたころに誰かが来た。
もしかして…
玄関をみるとアンがいた。
「お前、無事だったのか?」
「お待たせしました」
「い、いやいいんだけど…もういいの?」
「保釈金払った」
「え、そんな金あったの?」
「チャンピオンベルト質にいれた」
「いやあれって返さないとダメなんじゃないの!?」
誰かお金出してやれよ…
「でも借金どうすんの?」
「自己破産」
「う、そうなるよな…」
こんなに頑張ってるんだからちょっとくらい何とかならんもんかな…
「次、ラスベガスで大勝負」
「お、ファイトマネーは?」
「1000万ドル」
「え、すごいな!頑張れよ!」
「…」
「どうしたんだ?相手が強いのか?」
「渡航費がない…」
「誰か頼むから出してやってくれ!!」
俺はその後カレンにお金を渡すように散々説得した。
そしていつもの寮生活が戻ってきた。
出前のピザを食べてカレンとのんびりして、一緒に寝て起きて。
また数日の間はだらだらとした時間を過ごしていたのだが、ある日手紙が一通寮のポストに入っていた。
「ん?俺宛てだ…誰からだろ?」
手紙にはこう書いてあった。
『しばらくお世話になります。あなたの愛しい人より』
…?
「ねぇ快斗、なんて書いてるの?」
「いや、ちょっとよくわかんないんだけど…」
手紙を見せると、カレンの表情が変わった。
「カレン?」
「…浮気…」
「は?」
「快斗が浮気した!私がいるのに浮気した!!」
「いや待て!どう解釈したらそうなるんだよ!?」
しかしカレンの怒りは収まらず何回かひっかかれた…
「とにかく落ち着けよ!多分いたずらだぞこれ?」
「ふーっ!!」
「いやだから猫かよ!」
なんとかカレンをなだめた後、もう一度手紙を見るとどうにも見覚えがある字だと気づいた。
でもラブ高の人ではなさそうだけど…
そうだ、純也に心当たりがないか聞いてみよう。
早速写真を撮って純也に送ると、すぐに返事がきた。
『ああ、その字なら桃香のだろ?』
俺はその文面をみて寒気がした…
「快斗、桃香って誰?」
「い、いや…え、でもなんで?」
木南桃香《きなみももか》、俺の中学の同級生なのだが俺のことを死ぬほどいじめてきていた女子グループのリーダーだ。
名前とは裏腹にちょっとゴツイ女で、全然可愛くもないくせになぜか女子のリーダーだった。
正直こいつのせいで地元を離れる気になったと言っても別に嘘ではないくらい俺が苦手とするやつなのだ…
もしかして地元で俺を見かけた?
それでまたなんかいたずらしてやろうとか、昔の血が騒いだ??
「快斗、顔色悪いよ?」
「う、ちょっとトラウマが…」
いやあれをいじめと呼ぶのは少々違うか…
縛られて一日倉庫に放置されたり、アルコールランプを投げつけられたり、寝てる間に髪の毛切られたり、勝手にリコーダーを舐めた事件を捏造されたり…
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特に最後のは俺という人間が地元から居場所をなくすには十分な破壊力があった…
怖い…怖いよ…
「快斗、大丈夫。私がいるよ?」
「カレン…」
そうだ俺にはカレンがいる…
あんなくそ野郎に何かされたとしても…
でも本当に何しにくるんだ?それにしばらく世話になるって…?
俺が心配をしているその時だった。
ガシャンと玄関を強く開ける音がした。
「かーいとくーん、あっそびーましょ!」
こ、この声は…
嫌々玄関にいくと、そこにはスーパー美女が立っていた。
「…誰?」
「なによ!私よ私!桃香!快斗、会いに来たわよ!」
はぁー?
これが桃香?
いやだってあいつはなんかゴリラみたいな女だったし、髪の毛だっておかっぱだったのに…
今目の前にいるのはきれいな黒髪が長く伸びた、少しきつそうな顔だけど超美人だ…
「うそ、桃香ちゃん!?」
「ええ、きれいになったでしょ?ねぇ、その子誰?」
俺の横でひょこっと顔を出して桃香を睨みつけるカレンに指さした。
「私は快斗の彼女!お前誰だ!?」
「私?私は快斗を迎えに来たフィアンセよ」
はぁー???
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