校長からの課題が娘の処女を守れ…だと!?

明石龍之介

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第55話 嫌われ者

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皆のいるところに戻ると、談笑しながらピザを食べていた。

そしてアランさんは俺に話しかけてきた。

「さて快斗くん、なにかわかったのかな?」

命先輩の報告が真実だとすれば、犯人はこの人、アランさんだ。

しかし目の前でそれを明かしていいものだろうか。
サリーさんたちが共犯じゃないとも言い切れないし…

「い、いえまだ特に何も…。とりあえず継続して調べてくれるそうです。」

「そうですか。ではしばらくは連絡を待つとしましょう。」

そう言ってピザを食べるアランさんは顔色一つ変えない。
命先輩の報告がまだ真実かわからない以上下手に動くのはやめておこう。
でも疑ってかかっておいた方が良さそうだ。

そして特に何もないまま夜になった。

一度学校を見に行ったがまだ正門には見張りがいた。

命先輩からは連絡がなく、薬師寺さんたちに関しては返信すらない。

「あのー、一回帰りませんか?明日また仕切り直しということで…」

「そうですね、では協力者から連絡があったらすぐに知らせてください。」

三人は帰っていった。
帰り際にアランさんと高村さんは睨み合っていたように見えたが、サリーさんが二人の間に入って三人で帰って行った…
なんか高村さんもキャラが変わりつつあるな…

「カレン、アランさんのことどう思う?」

「おじさん?んー、真面目」

「そうだよな…」

いや、どこか違和感があったのはこれか?
極度のシスコンというところ以外はあの人はまともだ。
ヤリチンでもないしアホでもない。

そんな人が校長に付き従っているのは確かに変だ。

「実はアランさんが犯人だって、命先輩から電話があったんだ。本人がいたから言えなかったけど…」

「じゃおじさん犯人」

「いや決めつけて大丈夫?」

「だって佐津江は優秀だってパパ言ってた」

「ああ…」

自分の嫁の不倫相手なのに寛容というかズレてるというか…
あ、そういえば校長は?

「カレン、校長どこいった?」

「私の部屋で寝てる」

「いつまで寝てるんだあの野郎…」

しかし俺たちも疲れたので今日は風呂に入って寝ることにした。

アランさんが犯人として、目的はやっぱり校長の座を乗っとることだろうけど、何のために学校を占拠してるんだ?

色々と考えながら眠りについた。

翌日

「快斗くん!大変じゃ!」

隣の部屋で寝ていた校長が部屋に飛び込んできた。

俺とカレンは…朝のチューをしていた…

「うわっ!校長、入る時はノックくらいしてよ!」

「なにを呑気にチュッチュしとるんじゃ!これを見るんじゃ」

校長が持ってきたのは果たし状だった。

『準備は整った。正午に校庭にて待つ』

「校長、これは誰から?」

「まだそれはわからん…しかし決戦の時は近い。早速アランたちに連絡じゃ」

そういった校長に昨日の命先輩の話をした。

「なんじゃと?ならアランが犯人じゃな」

「いやだからみんなの命先輩への全幅の信頼は一体なんなの!?そんなにすごいのあの人!?」

ただのエロ写真家じゃないのか…

「そうと決まればセバスチャンとアンを召集じゃ。」

そう言って二人に連絡をしたが…来なかった。

高村さんは連絡がつかず、アンは…バイトの交代が見つかり次第ということだった…

「ええい、役に立たん奴らじゃ。少し早いが向かうぞい」

結局三人で学校に向かった。

正門前には今日は見張りがいない。
俺たちはそのままグランドまで入っていった。

そしてそこにいたのは…やはりアラン教頭だった。

「待ってましたよ義兄さん、いや校長。」

「うむ、君が裏切るとはな。しかしなぜじゃ?」

うん、確かにおれも気になる…

「なぜ?本当に心当たりがないのですか?」

「うむ…」

「本当に?」

「う、うむ…」

「いや義兄さんふざけんなよ!給料16万円で全国出張いかせておいて手当てもないし休みもくれないし不祥事のもみ消しばかりさせられて代わりに裁判所にも出廷させられて、拘留まで身代わりになって、おまけに交通費は全部自腹とか言われてこれで裏切らないやつがどこいいるんだよ!」

アラン教頭の心の叫びだった…

「うむ、しかし給料はきちんと払っておろうが。のう、快斗くん?」

「いや校長こればっかりはお前が悪いわ!なんだそのブラックを超えた漆黒の企業は!?そんな環境でよく今まで働いててくれたなこの人!?土下座して感謝して金払えボケナス!」

結局わかったことがある、全部校長が悪い…

「とにかく、この学校の支配権は僕がいただく。そして校長には決選投票を申し込む!」

いやなんでだから選挙なんだよ…

「ふふ、この学校を包囲したのにも理由がある。昨日のうちに生徒と職員は全員買収済みだ。僕に票が入るように説得してある。そして対決は今すぐに行ってもらう。義兄さんが勝つ術はない!」

そう言ってアランさんが手を挙げると、生徒たちが一斉にグランドに飛び出してきた。

さらにサリーさんと高村さんもそこにはいた。

「セバスチャン!裏切ったのか!?」

「校長、申し訳ありません。しかしサリーとの恋仲を認めていただくには、彼に従うしかないと…」

「うぬぬ…」

もう全員が教頭の味方だった。

そして強制的に校長と教頭の選挙がはじまった。

「さぁ、校長に相応しいと思う方にみんな移動するんだ。最も、勝つのは私だかな!」

「うぬぬ…皆のものよ!私についてきてくれ、頼む、頼むぞい!」

校長の叫びも虚しく、生徒は全員教頭の方へ流れていった。

ダメだ、今回ばかりは負けだな…

その時何かが空を飛んできた。

あれは?鳥だ、飛行機だ、いや…アンだ…

「参上」

アンがきた。
しかし役に立つのか?

「おい、お前がきたからってなんになるんだよ?」

「快斗、これ」

そう言って携帯を見せてきた。
そこにはSNSの急上昇ランキング一位が『アン・ジール』となっている記事だった。

「アンが!?なんで!?」

「し○じり先生」

「あれそんなに反響あったの!?」

「俺、人気者」

「自分で言っちゃったよ…」

しかしフォロワー数も500万人を超えていた。
ものすごい数字だ、これならいけるかも知れない。

「おーい、みんな!アンがきたぞー!」

俺が拡声器で叫ぶと生徒たちがこっちをみた。

チャンスだ。

「アン、行ってこい!」

「アンだよ」

「…」

アンのドヤ顔に会場が静まり返った。

そして次の瞬間、生徒皆の声援が…いや罵声が飛んだ。

「キモイしね!」
「消えろ、歯が汚えんだよ笑うな!」
「お前みてると不幸になりそうだよ、うせろ!」

あれあれあれ?人気者のアンさんはどこにいったんだ?

「おい、お前本当に人気あるのか!?」

「ある」

「ちょっとお前のページ見せてみろ…」

コメント欄を見ると散々なコメントで溢れかえっていた。

死ねボケカスからはじまり、不幸の置物、見るだけで不快、存在がキモイ、電波ジャック、目が腐る、人類の汚点とまで様々書き込まれて大炎上していた…

「お前ただ炎上してるだけじゃねぇか!?」

「死にたい」

「そりゃここまで書かれたらそうなるよな!何のために出てきたんだよ!」

くそ…役に立たないやつだな…

ん?いやこれだけの不人気ならもしかして?

「おいどうした、もう切り札はおしまいか?」

「いえ、まだあります。ちなみに教頭が勝ったら何をしてあげると生徒たちに触れ込んだんですか?」

「僕が勝ったら皆に1000万ずつ配ると、あと毎月学校のスポンサー料も皆に還元すると伝えたのさ。」

結局買収か…それなら…

「いいでしょう、それなら校長が勝った暁には…いや校長が負けた場合は全員の家にアンを派遣して一日中つけまわしてやるけどそれでもいいのか!?」

そう俺が言った瞬間に生徒たちがザワザワしだした。

「更にアンから毎日電話がくるぞ!メールもくるぞ!写真だって毎日送りつけてやるぞ!」

すると一部の生徒が避難するように校長側に流れていった。
そこからは大混乱が起き、まるで災害の時に皆がパニックになるかの如くカオスな状態になり全員が校長側に流れてきた…

「お、おい?まてまて!一人1000万円だぞ!?」

「うるさい、アンに毎日そんなことされたら…人生終わりだよ!」
「いや、私絶対いや!死んでもいや!」
「今考えただけでも吐きそうだ…金なんかいらない、命の方が大事だ!」

生徒全員の票が、アンの嫌われ具合によって校長に流れた…

校長は勝ったのである。

「ふ、ふざけるな!なんだこれ!?校長全然関係ないじゃないか!」

怒り狂うアンさんに一言だけ言ってやりたい。

持つべきものはそう…アンであると。

逆転劇に沸く校長と、嫌がらせを回避できたことで心底安堵する全校生徒の間で、膝から崩れ落ちたアンがいた…

「アン、お前のおかげで勝ったぞ!」

「死にたい」

「ごめんって…でもすごい認知度じゃないか。」

「ほんと?」

「ああ、こんなに嫌われてるやつ初めてみたぞ」

あ、口が滑った…

「もう死ぬ」

「ごめんって!」

「帰る」

「ああ…お疲れ様…」

さすがに今日ばかりはアンに悪いことをしたなと思いながらもなんとか校長を勝たせることができた…

普通の勝負であればこのあと校長と教頭の和解のシーンや、高村さんがどう許されるのか、サリーさんはどうなったのかなどが細かく語られるのだろうが、もちろんそんなことはしない。

全員南の島に送られた、以上である。

そして命先輩や薬師寺さんたちは何をしていたのかというと…何もしていなかった…

命先輩は犯人を見つけたからもう満足と一人でスタジオに篭っていただけだし、薬師寺さんはずっと真生徒会室で蓮水さんとイチャイチャしていたそうだ。

ちなみにあそこは地下なので、圏外である…

大石さんに限ってはブラジリアン柔術を学びに昨日から留学していて学校にすらいなかった…

やっぱりカスだな全員!


「快斗くん!よくやってくれた!」

「いや、全部アンのおかげですけどね…」

振り返ると、あの隠し通路を通って行ったことやアランさんが黒幕だと知った後の恐怖なども一体なんだったのだと叫びたくて仕方がなかった…

やはりこの学園で真面目に何かに取り組むことは間違いであると、つくづく教えられた今日このごろである…

「カレン、帰ろうか…」

「もやし、嫌われ者」

「それ絶対本人に言ったらダメだよ…」

し○じり先生の反響は大きく、彼を全国区の嫌われ者に仕上げていた…

そして俺たちは寮に戻った。

「あー、意味不明な勝負も終わったし、今度こそ一息つけるな」

「快斗、これなに?」

カレンが持ってきた広告にはハロウィンの文字が書かれていた。

「ああ、もうそんな時期か。カレン、これはハロウィンだよ。」

「ハロウィン…鳥取とはエリート!」

「トリックオアトリート!なんだその鳥取県民を過度に持ち上げた宗教は!」

一応意味を説明したら、やはり興味深々だった…

「快斗、ハロウィンする!」

「ああ…でも今日は休もうよ…」

しかしアンへの罪悪感が消えず、お腹など減っていなかったがピザを頼んだ。

「毎度」

「さっきはすまんな…」

「いいよ」

こいつほんといいやつだな…

「で、でも有名人ってのは悪いことじゃないから…」

「辛くなる」

「あ、ごめん…」

なにか話題かえないと…

「あ、そういえばハロウィンはなんかイベントとかするのか?」

「ホリックオアエックス?」

「トリックオアトリート!お前CLAMPさんのファンなのか!?」

その選択は…結構迷うな…

「なにかやるんなら買うから言ってくれよな」

「頼む」

アンは携帯を見ながら帰っていった。

途中で膝から崩れ落ちるのが見えた…
見なきゃいいのに…

お腹いっぱいの中でカレンとピザを食べてから寝た。

しばらくは学園に平和が訪れた。

しかし平和だからと言って何もないというわけではない。
一難去ってまた一難ではあったが、それは少し幸せな時間でもあった。

次回 カレンとハロウィンデート!

コスプレ祭りに俺のメンタルはボロボロに…

更にカレンと結婚式!?
なんて急すぎるか…

まぁたまには平和な時間をくださいな…



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